The Winery Dogs – III:自然体こそ無敵のサウンド!来日も決まったスーパー・トリオの3rdアルバム!

こんにちは、ギタリストの関口です。

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本日はThe Winery Dogsのアルバム『III(スリー)』ご紹介します。

III(スリー) / The Winery Dogs


III

The Winery Dogs(ザ・ワイナリー・ドッグス)はアメリカのハードロック・バンド。

来歴


結成は2012年。

Dream Theaterを脱退して間もない、ドラマーのマイク・ポートノイ(Mike Portnoy)と、Talas・Mr.Big他、Steve Vaiバンドのメンバーとしても有名なベーシストのビリー・シーン(Billy Sheehan)の二人から始まったプロジェクトとなります。彼らが目的としていたのは、そこにギター・ボーカリストをフロントマンに立てたパワー溢れるトリオ・ロック・バンドの結成でした。

プロジェクト当初は、Thin LizzyやWhitesnakeで知られるジョン・サイクス(John Sykes)を立て、「Bad Apple」というバンドの結成もあるか!?と思われたものの結局叶わず終わってしまいます。そして、そうしたメンバー探しの話を聞きつけたアメリカ人DJ、エディ・トランク(Eddie Trunk)の推薦により、リッチー・コッツェン(Richie Kotzen)が正式に加入することになります。なお、リッチーは1997年〜2002年の後期Mr.BigでPaul Gilbertの後任を勤めており、ビリーとは再共演という形になります。

3人は早速ロサンゼルスのスタジオで集結し、ジャム・セッションからデビューアルバム『The Winery Dogs』に収録される曲の骨子を作ります。

アルバムは結成の翌年にリリースされるとその話題性も相まって大成功、日本のオリコンチャートでも18位を記録しています。

The Winery Dogsの音楽性について、超わかりやすく言えば王道なグルーヴのハードロック!これに尽きます。ポートノイは「レッド・ツェッペリン、クリーム、ジミ・ヘンドリックスといったオールド・ロックと、サウンドガーデン、アリス・イン・チェインズ、ザ・ブラックなどのモダンなアーティストからの影響を取り入れ、クラシックなロック・サウンドを目指している」と語っています。

このバンドが、キャリアが豊富なスターたちの集う、いわゆるスーパーグループかという問いについて、ビリーは以下のように答えています。

「そうは思わないな。ほとんどのスーパーグループは短命であり、多くは内側で問題を抱えるものなんだ。スーパーグループという呼び方は、それに応えなければならない高圧的な呼び名でもあるよね。その点、僕たちは一緒にいるときはいつもとても気楽だよ。僕たちはこれまでやってきたことを活かすために集まったわけではなく、そういった既成概念に捉われないものをやりたかったんだ。」

その言葉が示す通り、バンドは2015年には2ndアルバム『Hot Streak』を発表。ワールドツアーでは1stアルバム時から来日公演を行うなど、ライブ活動にも積極的で集まっては解散を繰り返す性質を持つ、スーパーグループとは一見違ったように感じます。

ところが2017年4月、The Winery Dogsが活動を休止することがリッチーによって発表されました。これにはリッチーが本来のソロ活動が恋しくなったという事情があるのですが、そこから本作に至るまでの流れを見ていきましょう。

『III』制作までの流れ


2017年に活動休止を発表したものの、実は2019年には再びライブを行うために活動を再開したThe Winery Dogs。ポートノイによると、そのツアーの中でバンドが「3rdアルバムが間違いなくあると確信できた」と言います。また、リッチーはそのツアーから新作へなだれ込む予定だったと語っています。そして何より、活動休止はしていたものの解散は否定しています。

リッチーは休止期間を以下のように振り返ります。

「確かに『Hot Streak』と『III』の間はかなり空いてしまったし、アルバムがリリースされた年の数字だけ見ていると、僕たちが他のバンドよりも休んでいたように見えるかもしれないけど、そうじゃない。2019年のツアーの時はアルバムこそ出さないものの、せめて集まってプレイしようというのが目的だった。それが終わってから、僕たちは次のアルバムを作りたいという気分になっていた。ところが…そこに突然パンデミックがやってきてすべてが変わってしまった。コロナがなければもっとスパンが縮まっていたはずだよ。」

3人がようやく集まれたのが2021年。2回集まったうち、最初の1回目はセッションによる作曲段階、そこから時間を開け、2度目にスタジオで集まった時には書いてきた曲を煮詰めていき、本作『III』の全体像が見えてきました。

リッチーはアルバムの方向性について

「俺たち個人個人のやり方が、このバンドでは自動的に方向性を決めていったような気がする。”こういう音にするべきだ”なんて話をした記憶がないんだ。一緒にプレイしていると、自然にああいうサウンドになっていく感じかな。」と語っています。

アルバム参加メンバー


  • Richie Kotzen – Vocals, Gutars
  • Billy Sheehan – Bass
  • Mike Portnoy – Drums

楽曲紹介


  1. Xanadu
  2. Mad World
  3. Breakthrough
  4. Rise
  5. Stars
  6. The Vengeance
  7. Pharaoh
  8. Gaslight
  9. Lorelei
  10. The Red Wine

今回で3枚目となるオリジナルアルバムですが、ビリーは本作について「新作は、過去2作のコンビネーションになっている」と語っています。そこには、1stのエネルギッシュな空気もあれば2ndのまだ物語が続いていく、洗練された雰囲気もあり、そういった感覚はビリーならずとも他のメンバーも同感だと述べています。

ただ、バンドのスタイルそのものについては劇的な変化はありません。

このバンドは1stアルバムを出した時点で、3人のベストな均衡が保たれていると個人的に思っています。なので、1stの雰囲気、2ndの雰囲気から大きく外れるようなことは、自らベストな均衡を崩しかねないわけですね。同じ音楽性だからこの3人でやる意味がある、そんな風に感じます。

さて、アルバム全体をイメージする決め手となったと語られる#1「Xanadu(ザナドゥ)」。リッチーの作曲で、軽快でファンキー、そして力強いエネルギーを感じられるナンバーですね。

タイトな16分のリフもかっこいいし、やはり90年代のハードロックを思わせる心地よい空気感がこのバンドはこういう曲をやるよって方向性を導いてくれます。

タイトルは桃源郷を意味するのですが、リッチーが思い描いたのはまさしく桃源郷のようなパーフェクトなシチュエーションでした。しかし自分がどんなに理想的な世界にいても、外部の人間がそれを茶化したり高まった気持ちを引き剥がしにくるという状況を歌にしています。

 

#2「Mad World」はどことなくモータウン的なフィーリングを感じるナンバーです。歪みを抑えてジャキジャキと気持ちのいいカッティングを魅せるギター、それとは対比にソウルフルでメロウなボーカルが最高です。

#3「Brealthrough」は、スリーピースらしいオーガニックなサウンドコンセプトを体現したギターロックに仕上がっています。

もちろん何をやらせても極上に巧い彼らなんですが、これだけ“強い”メンバーが集まっていて、互いの個性は衝突しないものなのでしょうか。その答えはリッチーが答えてくれました。

「僕たちはお互いをよく知っているから、自分がある特定の弾き方をすると、彼らはそれをサポートする土台の作り方を心得てもいる。僕の場合は「自分の役割はソロ奏者をサポートすることだ」という意識が強いんだ。ソロ・プレイヤーに競ったり挑んだりしてしまうとカオスになってしまうから、僕のアティテュードはそんな感じ。僕たちがいる非ジャズの世界…つまりロックの世界では、そのロジックを利用してリード・ヴォーカリストをサポートしようと考える。他にも、ビリーが今ベースで“しゃべっているから、僕は彼の“しゃべり”に覆い被さるようなことはやめよう、彼の音がちゃんと聴こえるようなやり方にしようとかね。徹頭徹尾そういう姿勢なんだ。」

この曲はそんな各々の役割をとてもシンプルに感じ取れる1曲だと思います。

一つ飛ばして#5「Stars」。僕はこの曲すごく好きで、イントロからモジュレーションによるアトモスフィアな雰囲気を感じられます。

ビリーがプレイしていたリフを元に作曲され、そこにポートノイのアイディアを詰めたと言うこの曲は、その二人だけでも成立してしまうような安心感がありつつ、ギターも深めのディレイでトリップしそうなソロを披露しています。リズム隊とリッチーとの間にあえて作った温度差が最高です。

「Stars」がどことなくメランコリーな気分だった一方、とてもシリアスでドラマチックに歌われているのが#6「The Vengeance」

ディレイを駆使しキーボード的に聞かせるギターのアプローチやメロディックで感情に訴えるサビなど聴きどころの多い曲ですね。

あと個人的に取り上げたいのは#8「Gaslight」。まるでMr.Bigを思わせるような怒涛のテクニカルユニゾンが特徴で、全編において息をつかせぬスピード感。ポートノイのドラムもアルバム一アグレッシブです。

ラストの#10「The Red Wine」はレコーディングを行ったロサンゼルスの空気感があるシティなロックナンバー。この曲などは彼らにとって典型的なインプロヴィゼーションからできた曲でもあります。

この曲で聴けるバンドの一体感は、実際に3人で一緒にプレイしながら録音したという話があるほど。タイトルも含め、彼らにとってのアンセムになっています。

最後に


バンドとして大きな変更点はないものの、これ以上ないほど安心できるアンサンブル、およびリズム。リッチーの太く伸びやかなボーカルとそれを支えるコーラス。ギターは相変わらず粒だちが最高の超絶&極上トーンです。

その上楽曲は60,70年代をベースに、Extremeなどのタイトなバランスも兼ね備えた無敵のハードロック作品です。

そして11月に来日公演を控えているということで、今から期待が高まっている人も多いのではないでしょうか。

「The Winery Dogs Japan Tour 2023」と題された本来日公演は、4都市4公演、追加公演1の全5公演の日程です。

  • 2023年11月17日(金) 恵比寿ザ・ガーデンホール(追加公演)
  • 2023年11月20日(月) Zepp Namba
  • 2023年11月21日(火) BLUE LIVE HIROSHIMA
  • 2023年11月22日(水) 名古屋ボトムライン
  • 2023年11月24日(金) LINE CUBE SHIBUYA

チケットはかなり順調に売れているようですが、行ける人は本当に行った方がいいと断言します。というのは、The Winery Dogsの音楽性を知っていれば、もうこういうバンドのライブは絶対に楽しいんですよ。難しいこと考えなくていいし、スーパープレイヤーの演奏をただ一身に浴びていればいいので、気持ちいいこと間違いないです。

関口竜太

東京都出身。ギタリスト、音楽ライター。 ​14歳でギターを始め、高校卒業と同時にプロ・ギタリスト山口和也氏に師事。 ブログ「イメージは燃える朝焼け」、YouTube「せっちんミュージック」、プログレッシヴ・ロック・プロジェクト「Mind Over Matter」を展開中。2021年から『EURO-ROCK PRESS』にてライター業、書籍『PROG MUSIC Disc Guide』にも執筆にて参加。

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