Arch Echo「Final Pitch」:次世代Fu-djentバンド!Dream Theaterからもゲストを招いた唯一無二のインストメタルバンド最新作!

こんにちは、ギタリストの関口です。

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本日はArch Echoの2023年最新作『Final Pitch』をご紹介します。

動画はこちら▼

2019年の『You Won’t Believe What Happens Next!』以来4年ぶりとなる待望のニューアルバムが登場しました。そして9月には本作を引っ提げた来日公演も実現するとあって、今注目が高まっています。

“FINAL PITCH JAPAN 2023″と題されたこの来日公演は、9月19日渋谷CLUB QUATTROにて実現します。ゲストにはメタル系フュージョンの新インストゥルメンタル・プロジェクトとして昨年話題になったJack & Oweneが参加ということで、テクニカルで洗練されたメロディとギターが好きな人には願ってもないギグになりそうです!

Final Pitch / Arch Echo


Final Pitch

Arch Echo(アーチ・エコー)はアメリカのプログレッシブ・メタルバンド。

来歴


ニューヨーク出身のキーボーディストJoey Izzo(ジョーイ・イゾ)を中心に、同じバークリー音楽大学を卒業したベーシストのJoe Calderone(ジョー・カルデロン)、同じくバークリー出身でありスウェーデンのギターメーカーStrandbergのギターコンペで、優勝経験を持つギタリストのAdam Rafowitz(アダム・ラフォウィッツ)、ジャンルを問わないセッションドラマーとして世界的に活躍しているRichie Martinez(リッチー・マルティネス)、そしてミックスエンジニアやプロデューサーとしての仕事もこなす、ギタリストのAdam Bentley(アダム・ベントレー)といった、音楽的に幅広く精通した実力派が集結し、2016年に結成されたのがArch Echoです。

彼らはTangent Music LLCという自らが運営する音楽事務所を立ち上げ、2017年にデビューを果たします。

音楽性の近いバンドやアーティストにはAnimals As Leaders、Polyphia、Sarah Longfield、Covet、CHONなどいますが、ジョーイのキーボードをフィーチャーした、美しくキラキラとしたカラフルな楽曲が他のアーティストとは一線を画しています。

時代のニーズやスタイルに添いながら追求された彼らの音楽はプログレッシブ・メタルとしてはもちろんですが、そこへさらにフュージョンの要素を盛り込み、メロディックで親しみのある柔らかいサウンドと、タイトなDjentサウンドの両方を持ち合わせているため、その音楽性は度々「Fu-djent(フュージェント)」と呼ばれています。

それについてベントリーは、前作『You Won’t Believe What Happens Next!』時のインタビューで

「間違いなく同意するよ。このアルバムではよりフュージョンを目指した方向性をとったんだ。それに、よりテクニカルにもなっているね。次のアルバムではどうなるだろうね!」と、世間の評価にも納得しているようです。

本作『Final Pitch』を制作する上で、前作より曲はスリリングさを増し、キャッチーな曲にはさらに磨きがかかり、一層のレベルアップがなされています。作曲は初め、ラフォウィッツとジョーイの手により作られた「Battlestar Nostalgica」から始まりましたが、収録曲の中には「Bet Your Life」のように2年ほど前から作られていた曲もあるということで、彼らが非常に長いスパンでアルバム制作に臨んでいることがわかります。

曲作りについてもうちょっと突っ込むと、メンバー各自住んでいる場所が離れている上、リッチーのよう家庭の事情も絡んでくるメンバーがいる中、なかなかスタジオで5人集まって曲作りやレコーディングというわけにはいかなかったそうです。

さらにArch Echoの音楽性に通ずる部分で、そもそもジャムによる曲作りが好きではないということもあり、年単位でゆっくり曲を仕上げ、レコーディングも各自自宅などで録音するという今時の作曲スタイルになっています。

ただ、全員が向かうべきテーマというのはいつも決まっています。

1st『Arch Echo』は彼らにとってまさしく実験でした。立ち上げたばかりのバンド、自分たちのやりたいことに周りがどう反応するかを確認する意味が込められていたわけですね。そこから2ndではテクニックとメロディーをさらに推し進めていきます。そして本作は培ったテーマやグルーヴをどう強力にできるかがテーマとなっています。肝心なのは「いかにArch Echoぽさを感じつつも聴いた人が消化しやすくキャッチーなものに仕上げられるか」これこそが本作の肝となるテーマですね。

本作にはゲストとしてDream TheaterのJordan Rudess(ジョーダン・ルーデス)や、バンド初のボーカル曲にマルチミュージシャン兼YouTuberとして活躍するAnthony Vincent(アンソニー・ヴィンセント)、アメリカのプログレメタルバンドThe Mars Voltaに所属していたことで知られる管楽器奏者のAdrián Terrazas-González(エイドリアン・テラサス・ゴンザレス)も参加しています。

アルバム参加メンバー


  • Joey Izzo – Keyboards
  • Adam Rafowitz – Guitars
  • Joe Calderone – Bass
  • Richie Martinez – Drums
  • Adam Bentley – Guitars

その他参加ミュージシャン

  • Jordan Rudess – Keyboards on #2
  • Anthony Vincent – Vocals on #4
  • Adrián Terrazas-González – Saxophone, Woodwinds on #4

楽曲紹介


  1. Angry Sprinkles
  2. Aluminosity
  3. Red Letter
  4. Final Pitch
  5. Cloudsplitter
  6. Battlestar Nostalgica
  7. Bet Your Life
  8. Gold Dust
  9. SUPER SUDDEN DEATH

まず1曲目の#1「Angry Sprinkles」ですが、開始からこれはArch Echoだとわからせてくれます。バッキングはヘヴィだし上物のシーケンス的なフレーズもものすごくテクニカルというか難しそうに聞こえるのにコード感がしっかりあるのでとてもキャッチーだし、メジャーで明るい雰囲気に一気に包まれる感じがします。

リッチーによるドラムが結構Rushぽいというかニールパートっぽい手数の多さがあって、その辺も好きな人には刺さる要素かなと思いますね

2:30ごろからはベースソロですね。フュージョンのプログレメタルアレンジっていう見方が正しいと思っていて、方や、メタルなのにフュージョンをオシャレに着こなしてるとも取れる。これはかっこいいですよね。

続いてゲストにルーデスが参加した#2「Aluminosity」。タイトルはアルミニウム的な状態にあるという意味合いだと思いますが、アルミニウムって軽い割に強度が高いとか、加工しやすいとか結構彼らの音楽を体現している物質のように感じます。実際、1曲目に比べるともう少しライトな雰囲気もありつつ、ルーデスのソロも含め柔軟に変化していく様子を楽しめると思います。

なお、ルーデスのゲスト参加についてベントリーは以下のように語っています。

ベントリー「このバンドのメンバーは全員Dream Theaterが好きだし、ある程度影響も受けている。そして最近、一緒にツアーする機会に恵まれてね。彼らはみんな凄くイイ人だったけど、中でも特にジョーダンと仲良くなったんで、確か僕が「ジョーダンに頼んでみようよ」と言ったんじゃなかったかな?僕たちとしてはゲストによるギターソロは望んでいなかった。曲を書いていた時はジョーダンが参加するなんて思ってもいなかったんだよ。それなのに奇跡的に彼が興味を示して、ソロを弾いてくれたなんて凄い…!!」

なお、ここで言われている「一緒にツアーをする機会」というのは、Dream Theaterの『A View From The Top Of The World』がリリースされて最初の国内ツアー時の話ですね。

#3「Red Letter」

さてお次はタイトル曲#4「Final Pitch」についてですが、先ほども言ったように、マルチミュージシャン兼YouTuberのアンソニー・ヴィンセントと管楽器奏者のエイドリアン・テラサス・ゴンザレスをゲストに迎えた、バンド初のボーカル曲ですね。

曲の雰囲気としては極めてライトでポップに仕上がっていますが、アンソニーの力強いボーカルに押されるように曲もロックに盛り上がっていてかっこいいです。

ちなみにこれは当初インスト曲として作曲されたようですが、グルーヴに対しメロディーに立体感がないというのがネックだったそうです。そこでボーカル曲として舵を切りなおしたところ見事にはまったという経緯があります。

続いて6曲目。アルバムに向けた曲としては最初に取り掛かったと言われている#6「Battlestar Nostalgica」。この曲はギターインストとしてはもちろんですが、彼らが得意とするポリリズムなどリズムにおける難解さが加わって一層テクニカルに聞こえると思います。中盤の展開やキーボードの音色からはDream Theaterぽさも感じるし、タイトルもかっこいいし…難解好きなプログレメタルフリークには好まれること間違い無しです!

個人的に一番おすすめなのは7曲目の#7「Bet Your Life」ですかね。2年前、2021年ごろに作られた曲ということなんですけど、速い話がモードの曲になっていて、一貫して湿っぽくダークで浮遊感があります。ピアノとギターの表現力がアルバム一抜けている曲で、キコ・ルーレイロのソロ作に近いものを感じました。

最後に


はいということで本日はArch Echoの『Final Pitch』についてお話させていただきました。

楽曲自体の難解さとか、高度な理論を携えてるんだなっていう難しさは若干ありつつも彼らの持ち味であるキャッチーで明るいナンバーはどれも心地よい気持ちにさせてくれますね。

メタルを聴きたい、ギターを聴きたい、フュージョンを聴きたいっていう色んなシーンに合わせてくれるアルバムだと思いますので、未聴の方は是非チェックしてみてください。

関口竜太

東京都出身。ギタリスト、音楽ライター。 ​14歳でギターを始め、高校卒業と同時にプロ・ギタリスト山口和也氏に師事。 ブログ「イメージは燃える朝焼け」、YouTube「せっちんミュージック」、プログレッシヴ・ロック・プロジェクト「Mind Over Matter」を展開中。2021年から『EURO-ROCK PRESS』にてライター業、書籍『PROG MUSIC Disc Guide』にも執筆にて参加。

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