2022年ベスト・プログレッシブ・メタル・アルバムTOP10

こんにちは、ギタリスト/音楽ライターの関口です。

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本日は2022年ベスト・プログレッシブ・メタル・アルバムを発表していきます。

毎年恒例となりましたが、先にプログレッシブ・ロック部門の方は発表させていただきました。今年2022年も、名盤と呼べる作品が多数誕生しましたので、メタル部門もやっていこうと思います。別にプログレッシブ・ロック部門もありますのでそちらも併せてご覧ください!

今年のランキングは、事前にTwitter、YouTubeを使い投票型のアンケートをまとめています。概要につきましては動画をご覧になっていただければと思います。

それでは早速参りましょう。2022年ベストプログレッシブ・メタルランキング、お楽しみください!

動画はこちら▼

まずは10位から発表なんですが、同着で3枚あります!

10位 Wilderun – Epigone

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同着10位まず1枚目はWilderun『Epigone』

ボストンで2008年に結成されたプログレ・メタル・バンドですね。このバンド、アメリカ出身でありながら、元は北欧のヴァイキング・メタルから影響を受けたメタルバンドで、基盤となるフォーク・サウンドにデス・ヴォイスや壮大なオーケストラを加えたことで、良質なデスありのシンフォニック・メタル・バンドとなりました。

そしてDevin TownsendやOpethを彷彿とさせるサウンドとメロディで2019年の『Veil of Imagination』が注目を浴びます。

本作はアコースティック・ギターとクリーン・ヴォイスによる静のパートと、荘厳かつパワフルな動との緩急が凄まじく空気感や芸術性において前作を上回っています。

10位 Voivod – Synchro Anarchy

同じく10位はカナダ出身、1984年デビューのベテランバンドVoivodの4年ぶり最新作『Synchro Anarchy』です。

以前はもっとPink FloydやKing Crimsonなどの古典的なエッセンスに存在感があったのですが、今作では持ち前の泥臭いスラッシュ・メタルはそのままに、変拍子や変則的なブレイクも散見される、ザクザクと刻むメタルがベースのプログレ作品となっています。

10位 Stratovarius – Survive

そして同着10位、3枚目はStratovarius『Survive』ですね。

こちらフィンランドのメロディック・メタル・バンドですが、これに関してはパワー・メタルですね。ただメンバーがここ10年変わっていないので、デビューから変わらない疾走系のナンバーにクサメロを取り揃えたサウンドがより盤石な仕上がりになっていると思います。

9位 Polyphia – Remember That You Will Die

続きまして、第9位はPolyphia『Remember That You Will Die』

Polyphiaはアメリカのインスト・プログレ・メタルバンド。この手のサウンドとギタープレイのスタイルは2010年代から顕著になってくるが、このポリフィアがまさに2010年結成なんですね。

バンドを象徴するタイトな演奏に加え、リードナンバーからはアルディメオラを彷彿とさせるワールドミュージック的な側面を随所に感じました。

各楽器の音域の棲み分けが素晴らしくてこれは見事としか言いようがないですね。あと、アルバムでは珍しく数名のボーカルとコラボしているんですが、その中で日米ハーフの歌姫ソフィア・ブラックとやった「ABC」という曲は、プログレ・Djentは踏襲しつつR&Bやヒップホップのエッセンスもあって、アジア圏のロックとか全然聞かないような人にもリーチできる一曲だと思います。

8位 Virtual Symmetry – Virtual Symmetry

8位はVirtual Symmetryのセルフタイトルがランクイン。

Virtual Symmetryは、以前ブログでもご紹介しましたが、2009年にギタリスト、ヴァレリオ・エシル・ヴィーヤ(Valerio Æsir Villa)のソロ・プロジェクトとして結成されたバンドで、スイスとイタリアという隣国同士でメンバーが組まれています。

Dream Theaterからの影響を強く受け、長尺傾向にあるエピックソングにテクニカルな演奏スタイル、そしてボーカルのマルコ・パストリーノ(Marco Pastorino)から繰り出されるエクストリームなハイトーンを強力な武器として持ち合わせています。

バンドタイトルということで、期待値も高まる中、前作を確実に超えてきたなという感じ。サウンドは結構ドンシャリ目だけどボーカルの迫力が増していて、オリジナリティもあります。

攻撃的なメタルの中でもRush味のある明るいフレーズだったりモチーフがそこかしこに散りばめられていたり、いわゆる高速ユニゾンもあるし、シンフォニックなバラードをやらせてもうまくて綺麗にまとめているなと感じました。

7位 Animals As Leaders – Parrhesia

第7位はAnimals As Leadersの最新作『Parrhesia(パレーシア)』です。

多弦ギタリスト、トーシン・アバシ(Tosin Abashi)を筆頭に、近年目覚ましい活躍を続けるアメリカのDjent、プログレメタルフュージョンバンドになります。Polyphia、CHON、Sara Longfield、イヴェット・ヤングといった同ジャンルにおける代表的な存在で、リードサウンドはもちろん、アバシの代名詞とも言える8弦を使用したスラップギターにより、タイトなメタルサウンドとグルーヴィなノリが大人気ですね。

最新作はそんなAALの良さが全面に出ていて、ファンの要望にしっかり応える出来栄えだと思います。曲はメロディやエモさみたいなものとは若干縁遠いですが、おそらくセッションから生み出された曲たちはどれも洗練されていて、技術だけじゃなく発想の豊かさでもポイントをあげたいくらい、非常に知的さを感じる一枚。

6位 Threshold – Dividing Lines

第6位は1988年から活動を続けるイギリスのプログレメタルバンド、Threshold『Dividing Lines』がランクインしました。

2017年にボーカルのダミアン・ウィルソン(Damian Wilson)が脱退し、90年代に数年フロントマンを務めたグリン・モーガン(Glynn Morgan)がバンドに復帰してから、本作で2枚目となります。

アルバム全体としてはハードなギターとシンセサイザー、伸びのいいボーカルのメロディが紡がれた「ヴィンテージのThreshold」といった具合で、前作「Legends of the Shires」よりは少々ダークに作られているものの、メロハードなキラーチューン「Haunted」や、’80sハードロックを思わせつつプログレ要素も十分な「The Domino Effects」など心地いい曲が並んでいます。

Meshuggah – Immutable

第5位はMeshuggah『Immutable』です。

スウェーデンのエクストリームメタルバンドにして、近年のDjentの始祖に当たるバンドですね。ポリリズムとか複雑な曲の難解さが、アンダーグラウンドなシーンだけじゃなくてメジャーなメタルシーンでも受け入れられたことを証明したという意味で非常に功績高いバンドになります。

ニュークリア・ブラストからアトミック・ファイアに移籍し、前作『The Violent Sleep Of Reason』から6年ぶりとなる本作は、テクニカルなギターは若干控えめになっているものの、バンドが一丸となって楽曲をパーカッシヴな方角へと導く、ヘヴィさと心地良さを両立した作品になっています。

Teramaze – Flight of the Wounded

4位はオーストラリアのプログレッシブ・メタルバンドTeramazeの最新作『Flight of the Wounded』

Teramazeは当ブログでも度々登場していますが、2019年『Are We Soldiers』から毎年アルバムをリリースするヴァイタリティの高さを見せていて、僕が初めて知ったときよりはるかに知名度を上げてきていますね。

前作からボーカルはリーダーでギタリストのディーン・ウェルズ(Dean Wells)が担当しているのですが、なんで今までボーカリストを用意してたのと言いたくなるくらい、彼の歌がうまいんですよ。

その上楽曲のクオリティもプロダクションも素晴らしくて、馴染みのいいメロディアスさはしっかりありつつプログレの繊細さも見失っていない、ものすごくハイレベルな出来に仕上がっているのが本作です。

Devin Townsend – Lightwork

3位はDevin Townsendの最新作『Lightwork』です。

カナダで活動する、現代のプログ音楽界を象徴するマルチプレイとサウンド・プロデュースの代表格なアーティストですね。

今日、「アーティストだとかクリエイティブであること」の意味を探求することに焦点を当ててたのが本作のテーマ。その背景には、コロナやパンデミックによる影響が強いと推察できますが、そうしたフラストレーションをデヴィンは本作で表現しています。転じてこのアルバムには、そうした気の滅入るような時期を柔軟に、共に乗り越えて行こうといったメッセージが込められているわけですね。

この作品を一言で説明するのは非常に難しいのですが、インダストリアルな雰囲気に時折不協和音が混ざったりして不安を煽りつつ、かと思えば非常に上品なボーカルとリッチなコーラス・ワークによって、彼の表現する世界にグッと引き込まれていきます。

演奏も爽やかなアコースティック調のものから、ダークなシンセサイザーが支配するメタルな雰囲気のものまで様々で、お馴染みゲストミュージシャンの中にはSteve Vaiの名前もあがっています。

なお、デラックスエディション版には「Lightwork」の対比として「Nightwork」というディスク2が存在しますのでそちらも併せてチェックしてみてください。

Micheal Romeo – War of the Worlds, Pt. 2

第2位はアメリカのプログレッシブ・メタルバンドSymphony Xのギタリストとして有名な、Micheal Romeoの最新作『War of the Worlds, Pt. 2』です。

音楽性自体はSymphony Xの持つプログレメタル様式を、そのままソロに引き継いだという感じで、その記念すべきアルバム『War of the Worlds, Pt. 1』から4年、待望の続編が本作ということになります。

硬派なパワーメタルと研ぎ澄まされたシンフォニックのアレンジを舞台に、ド派手なギターワークが痛快な1時間。スタイルはSymphony X的でありながら、その本家を超えるドラマ性と圧倒的楽曲クオリティが売りの正統派プログレッシブ・メタル作品となりました。

Seventh Wonder – The Testament

そしてプログレッシブ・メタル部門第1位は、スウェーデンのバンドSeventh Wonderの最新作『The Testament』に決定しました!プログレ・ロック・ランキングと同様なんですが、このアルバムがダントツの1位でした。票数だけでなく推しアルバムとして選んだ方も非常に多かったです。

前作から、4年ぶりの最新作となるのですが、2010年の『The Great Escape』では30分の大作を収録したり、2018年の前作『Tiara』はコンセプト作になっていたりと、この10年は大作志向を軸に作品を発表してきたSeventh Wonderなんですが、本作においてその大作ぶりは若干影を潜め、コンパクトな良曲が並ぶこととなります。

元々テクニカルな演奏とキャッチーな歌が持ち味だった彼らですが、本作もそこは健在で、タイトな刻みのギターも、突き抜ける歌メロも最高です。プログレメタルだから難しいことやらなきゃ、ドラマティックなことやらなきゃっていう固定観念をぶち壊して、前に進む姿勢が最高にかっこいいです!

しかしながらプログ嗜好のフリークにもちゃんと盛り上がれる楽曲が用意されていて、特に「Mindkiller」はDream Theater寄りのプログレメタル曲となっていますので、そうした変化球も時折あって中だるみもせず50分を一気に駆け抜けられる傑作だと思います!

最後に


ということでランキングとしては以上ですが

個人的には10年ぶりの最新作を発表したSpheric Universe Experienceにもう少し頑張って欲しかったなという思いですね。復活に際しかなり話題性があったし、音楽もDream Theater・Threshold・Symphony Xフリークへみたいな煽りだったので…今年全員がアルバム出してますからね。

あとは、今回こうして投票制にしてみて思ったのがやはり自分の守備範囲外のアルバムもいっぱいあったなということですね。特にDjent作品は普段そこまで追わないし、それらをきちんと言語化するために聴くというのも大変刺激になりました。

投票というのはすごく面白い企画だなあと思ったのと、プログレ・ロック部門もそうですけどそこで初めて聴くアルバムもあったのでなかなかしっかり時間をとって聞き込むっていうところまでやるのが難しくて、みなさんが納得するような、的を射るコメントがちゃんとできたかその辺が不安だったりするのですが…

とにかく2022年のプログレ年間ランキングは以上となります。たくさんのご投票本当にありがとうございました!またリスト作成にご協力くださった、『PROG MUSIC Disc Guide』の大先輩方にもここで改めて感謝いたします。本当にありがとうございました。

関口竜太

東京都出身。ギタリスト、音楽ライター。 ​14歳でギターを始め、高校卒業と同時にプロ・ギタリスト山口和也氏に師事。 ブログ「イメージは燃える朝焼け」、YouTube「せっちんミュージック」、プログレッシヴ・ロック・プロジェクト「Mind Over Matter」を展開中。2021年から『EURO-ROCK PRESS』にてライター業、書籍『PROG MUSIC Disc Guide』にも執筆にて参加。

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