John Myung入門!Dream Theaterイチ寡黙でストイックな男を解説します!
by 関口竜太 · 2022-10-23
こんにちは、ギタリスト/音楽ライターの関口です。
本日はDream Theaterのベーシスト、ジョン・マイヤング(John Myung)についてお話ししていきます!
最近、動画で話そうかなと思っていたいくつかの細かい企画があって、ただそれらが動画のボリューム的にどうかなと考えていたのですが…マイヤングについてお話しすることでそれらを全部包括できそうなことに気づいたので思い切ってまとめました!
- John Myungについて一歩踏み込んで詳しくなれる
- 魅力を再発見できる
- 普段ベースを弾かない人、楽器を演奏しない人でもわかりやすく広い間口でお届け
していきますので、どうぞごゆっくりお楽しみください!
この記事には動画版があります。内容は概ね同じですが、動画ならではの解説もありますので併せてご覧ください!
動画はこちら▼
John Myungの基本情報
経歴
ジョン・マイヤング(John Myung)…1967年1月24日生まれ。韓国系アメリカ人の家庭に生まれ育ちます。
アメリカで生まれ育っているため、ものの考え方や人間を作るベーシックな部分はアメリカ流ですが、韓国に親戚が大勢いる関係で韓国語も少しだけ話せると過去のインタビューで話していました。
日本では昔は「ジョン・ミュング」と発音されていましたが、現在は本来の発音に近い「マイヤング」が一般的。’97年の『Falling Into Infinity』のころまでは、少なくともライナーノーツにミュングと書かれています。
5歳でヴァイオリンを始め、15歳まで習い事の領域ではあるもののこれを続けます。しかし、当時のクラスメイトからバンドに誘われベースを始めたことで、ここにベーシスト・ジョン・マイヤングが誕生します。
ちなみにこのときすでにジョン・ペトルーシ(John Petrucci)、ケヴィン・ムーア(Kevin Moore)、クリス・コリンズ(Chris Collins)らとは友人でした。
卒業後、ペトルーシと一緒にバークリー音楽院へ進学したマイヤングは、そこでマイク・ポートノイ(Mike Portnoy)に出会います。3人はThe Majestyというバンドを結成すると、ジャズやクラシックがメインの音楽学校の一室でTalasやMetallica、Rushなどを演奏していました。
その後、キーボードにケヴィン、ボーカルにコリンズが合流するも、コリンズは技量不足に加え、ステージ上でマイヤングを含むメンバーに対する侮辱を働くなどしたことで見限られ解雇されます。
新たにチャーリー・ドミニシ(Charlie Dominici)が加入し、バンド名をDream Theaterに改名。1stアルバム『When Dream And Day Unite』でデビューを飾ることとなります。
Dream Theaterは1stでチャーリー、3rdでケヴィン、4thでデレク・シェリニアン(Derek Sherinian)、そして10thでポートノイが脱退したことで、オリジナル・メンバーは現在マイヤングとペトルーシのみとなっており、そのプログ・メタル・サウンドを支える重要な立ち位置としてマイヤングは存在しています。
人柄
ステージにおいては非常に冷静沈着なイメージのマイヤングですが、プレイはとてもワイルドかつアグレッシブなものです(後述)。
見た目は長い黒髪に黒いTシャツで、メタル・ベーシストにしては珍しくあまり前に出てこないことで有名です。メディア露出においても、インタビューは多くあるものの、喋っている映像がこれまでほとんど記録として残っていません。
ただ、近年はYouTubeのDream Theaterチャンネルに出演することも多く、喋っている映像が少しずつ増えてきているのも事実。特に印象的なのが14thアルバム『Distance Over Time』発売時に4分以上も喋っているインタビュー動画が公開されたこと。
公式がSNSで「John Myung talks(!)」という具合に煽ってくるくらいこれは珍しいことで、コメント欄にも「歴史的なことだ」というようなコメントが並ぶこととなります。
バンド結成時にペトルーシと共に「1日6時間練習をしよう」という約束をして、本当にそれを守るくらいストイックで練習の虫です。ライブ前には念入りにウォーミングアップを行い、噂ではライブ前にもかかわらず筋トレをしているという話も…
そしてライブ後にも、筋肉を痛めないようにクールダウンという名目でベースを触っています。
とにかくベースの演奏、練習、それに伴う肉体管理についてはアスリートレベルのストイックさで、ミックスエンジニアのケヴィン・シャーリー(Kevin Sharly)や元キーボーディストのデレク・シェリニアンからは「ここまでやるミュージシャンはジョン・マイヤングだけ」と言わしめるレベルです。
使用楽器、プレイスタイル
楽器
デビュー当時はアーニーボール・ミュージックマンのSting Rayを使用。こちらは4弦モデルでした。『Images And Words』のレコーディングでもSting Rayの4弦を使用していましたが、このアルバムのワールド・ツアーより6弦を導入しています。
導入したのはトバイアスの6弦モデル。
トバイアスという名前は創設者のマイケル・トバイアスから取られているわけですが、さらにそこから『Awake』のころには、元トバイアスの職人でこのマイケルの弟子でもあったニコラス・タングという人物が設立したタング社とエンドース契約を結び、Wing-IIというベースを使うようになります。
タング社はメーカーとしては短命で、’96年くらいには生産をやめてしまうのですが、そこからマイヤングはヤマハとのエンドース契約を締結。6弦ベースとフレットレスベースを経由して自身のシグネチャーモデルである「RBX JM」を開発します。
以降ライブにおいては、しばらくこのモデルを弾いてる姿が定着することとなります。
ただ、やはり初期に使っていたSting Rayの感触がマイヤングにはあっていたのか、レコーディングではそれを使うこともしばしばあったみたいで、ヤマハでベースを作る際にもSting Rayはかなり参考にしていたそうです。
2009年の9thアルバム『Systematic Chaos』の時にはミュージックマンのBongoを使い、同時にミュージックマンとエンドース契約を結びます。そしてこれ以降、Bongoの6弦が彼のメイン楽器となります。
プレイスタイル
プレイスタイルとしてはテクニカルな楽曲に対してオーソドックスなプレイという印象。ただ楽曲そのものの難易度は高いので、決して簡単ということではないことは知っておきたいです。
そしてそれらをほぼ全曲指弾きでプレイしています。
マイヤングに強く影響を与えたベーシストには、メタルサイドではIron Maidenのスティーヴ・ハリス(Steve Harris)、プログレサイドではYesのクリス・スクワイア(Chris Squire)、ロックとプログレ両方のアプローチにはRushのゲディ・リー(Geddy Lee)などが挙げられますが、さらにジャズ・ベーシストとしてジャコ・パストリアス(Jaco Pastorias)を最大限尊敬するベーシストに挙げています。
マイヤングのプレイで特徴的なものに、ピッキングの力強さがあります。これは歪んだギターやドラムに埋もれないアタック感を得るため、とにかくピッキングが強いというもの。
さらに一般的な2フィンガーに加え、ギターやキーボードの高速プレイに追従していくため身につけた3フィンガー奏法もメインで行い、強いピッキングアタックと両立して使いこなす実力者。
この2点を両立させるにはかなりの鍛錬を必要とするのは想像に難くなく、前の章で言ったストイックな練習や筋トレや徹底した肉体管理もこのためだという合点がいきますね。
他には、「Metropolis Pt.1」でのインスト・パートなどでタッピングを披露していたり、わずかではあるが「The Dark Eternal Night」や「These Walls」ではピック弾きも行っています。ハーモニクスプレイも有名で「Lifting Shadows Off A Dream」や「As I Am」のイントロでそれを確認できます。
そして使用楽器とも被るのでここで紹介しますが、12弦のチャップマン・スティックを使用しています。Dream Theaterにおいて最も有名な曲は「New Millennium」ですが、マイヤングは他に同アルバムの「Take Away My Pain」「Trial Of Tears」、『6DOIT』の「Misunderstood」でも使用しています。
Dream Theater以外での活動
彼のミュージシャンとしてのキャリアの多くはDream Theaterに起因する部分が多いです。しかしながら、それゆえに誕生したDream Theater以外での活動をここでは紹介します。
まずはPlatypus。
これは1997年に結成したバンドですが、当時のキーボーディスト、デレク・シェリニアンと共に結成したバンドになります。テーマとしてはDream Theaterの枠組みにはフィットしない、違ったベクトルの楽曲であったりマテリアルを解放する位置付けのバンドで、ギター・ボーカルにはKings Xのタイ・テイバー(Ty Tabor)、ドラムにはDixie DregsやWingerで活躍するロッド・モーゲンスタイン(Rod Morgenstein)を誘ったスーパー・グループとなります。
Platypus結成の少しあとに、Dream Theaterがデレクを追い出すような形でジョーダン・ルーデスの加入を濃厚にさせるのですが、その際の会議でマイヤングは当初反対したと言われています。
詳しくは動画で▼
デレクはその後ソロ活動を理由にPlatypusからも去り、残された3人はバンド名をThe Jelly Jamに改名。トリオ編成で、それまでのプログレッシブ・ロック路線からよりオルタナ系ヘヴィ・ロックへと音楽性を変化させています。
マイヤングが輝くDream Theaterソング
Metropolis Pt.1
マイヤングのベースと言えば真っ先に思い浮かぶのがこの曲。Dream Theaterの代名詞であり、初期の超絶系ソングの代表でもある曲ですが、見せ所はやはりインスト・パートにおけるベース・ソロ。
ギター・ドラム・キーボードがブレイクする中、息もつかせぬタッピングプレイを聴かせてくれます。
Under A Glass Moon
同じく『Images And Words』より、これはちょっとマニアックな視点だと個人的に思うのですが「Under A Glass Moon」を挙げておきます。
この曲ではギター・ソロの手前、全員がリフをユニゾンしていって盛り上がったところでベースだけになる部分があります。テクニック的に難しいとかではないのですが、ベースの心情としては「あれ、みんないなくなっちゃった、まっ、いいか」みたいな具合にすまして弾いてる感じがかっこいいのです。
Lifting Shadows Off A Dream
『Awake』より、先ほどもお話ししたハーモニクスのナンバー。
『Awake』は7弦ギターや曲の暗い雰囲気ばかりフィーチャーされがちなんですが、「6:00」や「Lie」などリズム・セクションに力が入ったアルバムだというのが個人的な見解です。
そして中でもベースの活躍が多い一枚だと思います。
New Millennium
Dream Theaterの楽曲でも有名な、チャップマンスティックの曲。この曲について印象強いのはやはり『Live At Budokan』かなと思います。
ベース弦とメロディ弦とで出力が2chになっているのも、間奏でシーケンシャルなベース・パターンとワウをかましたコードを両立させているところから確認できると思います。
Panic Attack
『Octavarium』収録のメタルナンバー。
冒頭のベースは珍しく存在感のあるリフを単体で聞かせています。この曲はDream Theater的にはどストレートなメタルでありながら、速い上に、途中シャッフルとストレートでリズムのパターンが変わるという最高難易度の曲でもあります。
ベースならずともこのバンドをマスターする上での登竜門的ナンバーですね。
S2N
最後はS2N、『Distance Over Time』の曲です。
元々Dream Theaterで歌詞も書いていたマイヤングなんですが、その書き方がかなりフリーフォームだったことで知られます。
要は詩として節とか発音があまり意識されていないタイプのようで、曲の骨子を作ったメンバーが原則歌詞も書くというルールがバンド内にでき、マイヤングの書いた歌詞をポートノイとペトルーシでうまく調整するのが大変だったそうなんですよね。そのためしばらくマイヤングが曲や歌詞を書くことがなくなります。
今のマンジーニ体制になってからまた少しずつ書くようになってきて、『Distance Over Time』ではこれと「Fall Into The Light」がマイヤング担当の曲になっています。マイヤング担当の曲が2曲収録されているのは『DOT』が唯一のアルバムです。
最後に
まとめると寡黙でストイックという共通の認識がありながら、その実裏で結構苦労してそうだったり、意外に情に厚い一面があるなど人間味にも溢れていました。
ただそうした苦労とかもそれを上回る精神力とか自らの哲学で乗り越えていく様が本当にかっこいいので、これからも彼の魅力を存分に味わっていただければと思います。
この記事には動画があります。YouTubeチャンネル「せっちんミュージック」では、Dream Theaterを中心に、プログレッシブ・ロック、プログレッシブ・メタル、そしてたまにJ-POPも扱って情報発信していますのでよろしければチャンネル登録していただけると嬉しいです。
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関口竜太
東京都出身。ギタリスト、音楽ライター。 14歳でギターを始め、高校卒業と同時にプロ・ギタリスト山口和也氏に師事。 ブログ「イメージは燃える朝焼け」、YouTube「せっちんミュージック」、プログレッシヴ・ロック・プロジェクト「Mind Over Matter」を展開中。2021年から『EURO-ROCK PRESS』にてライター業、書籍『PROG MUSIC Disc Guide』にも執筆にて参加。
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