Spheric Universe Experience「Back Home」: 10年の歳月を経て帰還した”フランスのDT”。ファンの期待に応える最新&無二のプログ・スタイルがここに!

こんにちは、ギタリストの関口です。

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本日はフランスのSpheric Universe Experience、2022年最新作をご紹介します。

  • Dream Theater、Symphony Xがお好きな方
  • テクニカルなプログレッシブ・メタルを求めている方
  • 楽曲のメロディアスに重点を置く方

などに特におすすめできるアルバムです。それでは参りましょう!

Back Home / Spheric Universe Experience

Back Home

Spheric Universe Experience(スフェリック・ユニバース・エクスペリエンス)はフランスのプログレッシブ・メタル・バンド。

来歴


1999年、ギタリストVince BenaimとベーシストJohn Draiが中心となりGates Of Deliriumというプログレッシブ・メタル・バンドを結成します。この名前での活動は短期間でしたが、キーボーディストFred Colomboと当時のボーカリスト(名前不明)も加わったことでバンド名をAmnesyaに改名し活動を続けます。

2002年8月、バンドは音楽性の違いのために分裂。バンドのメイン・コアとなっていたヴィンス、ジョン、そしてフレッドは新たにバンド名をSpheric Universe Experienceへと変更し、8ヶ月をかけデモアルバム『The Burning Box』を作成。当時セッション・ボーカルをしていたFranck Garciaに歌入れを頼んだところメンバーがこれに感銘したことで正式メンバーに迎えられます。

バンドは2005年に1stアルバム『Mental Torments』にてメジャー・デビューを果たし、Dream TheaterやCircus Maximus、Seventh Wonderを筆頭とするテクニカル系プログレッシブ・メタルのスタイルで各メディアでも話題を呼びました。

2007年の2ndアルバム『Anima』では、ザクザクとしたメタル・ギターにデジタル成分の強いシンセサイザーとドラマティックな展開を基本としたSUEスタイルを確立。そこから2年後の2009年には延長線上とも言える3rdアルバム『Unreal』をリリースしています。

基本的にメンバー間の中は良好ですがドラムのみ変遷が激しく、現在まで7度変わっています。この『Unreal』期に加入したChristophe Briandはそこから4年間バンドに貢献し本作でも腕を奮った実力派のドラマーでした。

さて、そんな具合でDream Theaterなどテクニカル系プログレメタルスタイルをフランスで体現、幾度とないドラマーの交代にもめげず、2012年には4thアルバム『The New Eve』をリリースします。

しかしこの4th。1stアルバムからチェックしていくと、ここに来てこれまでの長尺かつプログレッシブなスタイルからかなり逸れしまいます。過去3作と比べると特別変態的な拍子や長尺のインターバルおよび楽曲がなく、もはや別バンドにすら思う前作なのですが、フランクの特徴的なボーカルとバンドの持っている作曲センスは健在で、プロダクションによる音質の向上も見られます。

というディスコグラフィーをなぞったところでここ10年。彼らはライブ活動をメインにフランスのメタル・シーンでチャンスを窺っていました。

そして今年1月、バンドのFacebookにハッピーニューイヤーのメッセージと一緒に投稿されたのは「今年はニューアルバムが出るよ!」という大サプライズなのでした。

このマニフェストを守り、5月にバンド待望の5thアルバム『Back Home』がいよいよ到着です!

アルバム参加メンバー


  • Vince Benaim – Guitars
  • John Drai – Bass
  • Fred Colombo – Keyboards
  • Frank Garcia – Vocals
  • Romain Goulon – Drums

楽曲紹介


  1. On Board SUE5-2469
  2. Final Fate
  3. Where We Belong
  4. Transcending Real Life
  5. Senses Restored
  6. Legacy
  7. Defenders of Light
  8. Synchronicity
  9. The Absolution Pt.1
  10. The Absolution Pt.2
  11. Rebirth
  12. Of the Last Plague
  13. Dreams Will Survive

バンド名をタイトルに含ませた#1「On Board SUE5-2469」は10年ぶりの帰還を知らせるオープニング・ナンバー。1分程度のインスト曲ですが特徴的なデジタルシンセとギターリフを詰め込んでいます。

そこから繋がる形で入る#2「Final Fate」はMVこそないものの本作のリード・ナンバーと言って差付けない一曲。ギターのサウンド、そこから生まれるタイトな刻み、フランクのボーカルなど全てがそのままの形で帰ってきてくれたSUEに感謝しかないです。そしてサビにおける目の覚めるような転調は彼らのアイデンティティ。最高のメロディアス・メタルです!

先行シングルで公開された#3「Where We Belong」。初めて聴いた時は冒頭のブレイクでDjentな方面に行くのか?と身構えましたが、フレーズはそこだけで、あとはSUEスタイルのテクニカルなプログレッシブ・メタルになっています。前半はスピード・ナンバー、後半はGenesis風のピアノとシンセ・リードでバラードチックに、6分弱の中に二面性を持たせた曲になっています。

ドライのベース・イントロから王道なメタルリフへと繋がる#4「Transcending Real Life」。全編を通してベース・ワークが光るナンバーでインターヴァルではスラップを披露しています。曲後半の間奏ではキーボードとギターのユニゾンでメカニカルに。

イントロのリフを発展させていくミディアム・ナンバー#5「Senses Restored」を抜け、#6「Legacy」はリリース前3月に公開となった先行シングル。

ガット。ギターと軽快なドラミングとの組み合わせが爽やかでありながらいつものスリリングなアンサンブルを提示してきています。メロウなサビが特徴的で、メロディに定評のあるSUEをまた聴くことができて嬉しい限り。

一転#7「Defenders of Light」は激しいビートにタイトな刻みで畳み掛けるスピード・ナンバー。中盤ではテクニカルなユニゾンと変拍子、ネオクラシカルなギターソロもあるてんこ盛りな内容です。アルバムのフライヤーにおいて「Dream Theater、Symphony X、Thresholdのファンに捧ぐ」と言っていたその公言通り、プログレッシブ・メタルのあるべき姿を体現してくれています。

#8「Synchronicity」はフレッドのキーボード・ソロとなった小曲。

そして2曲合わせて10分の大作となった#9「The Absolution Pt.1」#10「The Absolution Pt.2」。「Pt.1」は#8の流れも汲んだイントロに当たる曲で、大仰しいオーケストレーションで盛り上げてくれます。繋がる「Pt.2」では強烈なクアイアで我々をおもてなし。そしてSymphone X風のシンフォニック・メタルを展開しています。

本作のテーマにも沿った#11「Rebirth」は、#10の勢いを壊さないよう少しずつ形を変えるインスト・ナンバー。間髪入れずにひっぱり上げていく#12「Of the Last Plague」でもあいかわらずのプログレッシブ・メタルですが、ヴィンスのギター・フリークぶりも炸裂しています。ボーカルのメロディーは2ndにも通ずるところがあってGOOD!

ラスト・ナンバー#13「Dreams Will Survive」は9分半の大作。アルバムの後半はこんな感じに組曲とシームレス構成によって大作ながら駆け抜けていきます。

シンセサイザーによる静かめのイントロをまずはたっぷりじっくり。バンドインしても絆の深いメンバーによる一丸となったアンサンブルが聴けてとてもいいです。ドラマーは取っ替え引っ替えなこのバンドですが新加入のRomain Goulonもいい感じですね、是非長く続いてほしいです。

最後に


正直期待の上を完全に行ってくれた最新作です!

2ndが不動の名作だった個人的評価の中で、この5thが肩を並べる存在になってくれたことにまずは拍手。そして10年間、もう絶対新作なんて出ないと思っていただけにこうした形で戻ってきてくれて本当に嬉しく思います。

知名度的にはまだまだマイナーな域ですが、10年前と比べてSNSや拡散機能が充実した現代で伝染してくれることを願います。

関口竜太

東京都出身。ギタリスト、音楽ライター。 ​14歳でギターを始め、高校卒業と同時にプロ・ギタリスト山口和也氏に師事。 ブログ「イメージは燃える朝焼け」、YouTube「せっちんミュージック」、プログレッシヴ・ロック・プロジェクト「Mind Over Matter」を展開中。2021年から『EURO-ROCK PRESS』にてライター業、書籍『PROG MUSIC Disc Guide』にも執筆にて参加。

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