ポピュラー音楽は芸術の域へ…「コンセプト・アルバム」が生まれた奇跡の音楽史

こんにちは、ギタリストの関口です。

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今回はプログレッシブ・ロックを始めとする実験音楽にとってなくてはならないキーワード、「コンセプト・アルバム」ついて解説していこうと思います。

コンセプト・アルバムって何?


「コンセプト・アルバム」というのは詰まるところ、アルバムが単なる曲の寄せ集めでなくそれ一枚で作品としての意味を持つというもの。

もっと言うと、それまでの「アルバム」はシングル曲を収録するためのものでした。シングルを収録して数合わせにカヴァーを入れていたほどで、アルバム曲という存在すら意識の上で希薄だったと言えます。しかし「コンセプト・アルバム」は、アルバム全体で一つの作品という発想にシフトしポピュラー・ミュージックの芸術性をより高めた、極めて画期的な創作志向と言えるわけです。

これに至った過程が非常に面白いので、それを今から語っていきたいと思います。

 ただ一度きりの来日公演


まずは「コンセプト・アルバム」という言葉が生まれる前まで時間を遡りまして、時は1966年。この頃、全世界を席巻していたバンドと言えば、みなさんご存じThe Beatlesです。

実はこの頃にはThe Beatlesはすでにコンサート活動を引退しており、バンド活動を丸々創作と自らの音楽の追求に当てていました。
その原因を作ったのがその年、日本武道館で行われたただ一度きりの来日公演なのです。

当時、「神聖な日本武道館で海外のポピュラー・ミュージックのコンサートを開くとは何事だ!」として右翼団体からの抗議やデモが相次ぎ、実際The Beatlesへの脅迫も行われました。

そんな穏やかでない治安もあって、当日は武道館1万人の観客に対し警官3000人という厳重体制が敷かれ、ライブ中も観客があまり好き勝手盛り上がれないという規制も加わりました。
その結果、海外では観客の誰もがThe Beatlesを前にその演奏を聴かず、せっかくの演奏を歓声でかき消していたのに対し、日本武道館でのコンサートはその悲鳴に近い歓声が一部抑えられたことで、The Beatlesはステージ上で中音(ステージ側の演者がモニターしている音)を聴くことができたわけです。
しかし、同時に彼らは自分たちの演奏の下手さにショックを受けることになります。

この来日コンサートの意味はやはり大きく、

  1. ライブバンドでありながら達者な演奏ではないのに、ファンやメディアからは持て囃され、しかし一方では演奏が聴かれていない事実。
  2. 自分たちの存在を快く思っていない人たちがいる事実。
  3. そしてその中で過度に多忙なスケジュールが組まれている事実。

にメンバーは徐々に不満を露呈していきます。
そうして1966年8月のサンフランシスコにて、The Beatlesはライブ活動を休止し製作重視への活動へとシフトしていくのです。

実験精神が花開く、「サイケデリック・ロック」


そしてThe Beatlesは、John LennonとGeorge Harrisonが1965年に出会った、LSDによる幻覚作用からインスピレーションを受けたアルバム『Revolver』をリリース。こうした麻薬による神秘体験を音楽へと反映させたロックをその後「サイケデリック・ロック」と呼びます。

「サイケデリック・ロック」期のThe Beatlesは言わば吹っ切れ状態でした。コンサートはもう行わない、ならばステージ上で曲を再現する必要もないじゃないか。
彼らはボーカルにエフェクトをかけたり、テープを逆再生させたり、録音作品で「遊ぶ」ことを実践していきます。『Revolver』にはコンサートから解放された彼らの実験精神がそのまま収録されているのです。

世界で初めてのコンセプト・アルバム


そして翌年、彼らの実験は一つの到達点へと達します。
リリースされたそのアルバムの名は『Sgt. Pepper’s Lonely Hearts Club Band』。これが世界で初めてのコンセプト・アルバムです。
このアルバムの内容は、『架空のブラスバンド「サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド」のショウである』というもの。つまりThe BeatlesがThe Beatlesから外れて、別の役者を演じる非常に先進的なアイディアだったのです。

アルバムはイギリスで23週連続1位、アメリカビルボードチャートで16週連続1位を獲得。全世界でのトータルセールスは今日までで3200万枚とされています。

そうして、そこから音楽は世界的に実験的要素を追加していく傾向が強くなり、クラシックやジャズといった音楽との融合を経て、さらに芸術性を高めていくこととなります。これが’70年代のプログレッシブ・ロック、ロック・オペラなどに繋がっていきます。

最後に


今ではアルバム単位で音楽を楽しむということはごくごく自然なことかもしれません。一方で、昨今は音楽のサブスクリプション・サービスも充実し、再びシングルやシャッフル再生にスポットが当たっています。
ですがThe Beatlesが思索を巡らせたこの2年間は音楽史にとってなくてはならない事件だったし、そのきっかけを作ったのが日本武道館での来日コンサートだったのです。

みなさんも、この機会にお気に入りのアルバムを今一度通しで聴いてみるとアーティストの意図や新しい発見があるかもしれません。

はい、ということでコンセプト・アルバムについて若干熱高めで書かせていただきました。本日もご精読ありがとうございました!

関口竜太

東京都出身。ギタリスト、音楽ライター。 ​14歳でギターを始め、高校卒業と同時にプロ・ギタリスト山口和也氏に師事。 ブログ「イメージは燃える朝焼け」、YouTube「せっちんミュージック」、プログレッシヴ・ロック・プロジェクト「Mind Over Matter」を展開中。2021年から『EURO-ROCK PRESS』にてライター業、書籍『PROG MUSIC Disc Guide』にも執筆にて参加。

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