Kalle Wallner & Blind Ego「Voices」: これはギルモアか?否!ドイツのフロイド継承バンド、ギタリストによる濃密ソロ作品!

こんにちは、ギタリストの関口です。

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本日はKalle Wallner & Blind Egoのアルバム『Voices』をご紹介します。ドイツのバンドRPWLのギタリストによるソロ作品となります。

  • 現代のギタリストによるアルバムが聴きたいという方
  • プログレッシブなインスト曲にご興味がおありの方
  • ご自身の楽曲制作などにインスピレーションを受けたいという方

などに特におすすめできるアルバムです。それでは参りましょう!

Voices / Kalle Wallner & Blind Ego

Kalle Wallner(カレ・ウォールナー)はドイツのミュージシャン、ギタリスト。

来歴


ドイツのプログレッシブ・ロックバンド、RPWLのギタリストであるKalle Wallner

まず、彼は自身のソロ・プロジェクトにおいてBlind Egoという名義でいくつかのアルバムを出しているため、彼のソロを語るならBlind Egoを語らずにはいられません。ということで、本作のアーティスト表記をあえてそのようにしています。なお一部の音楽ストリーミングサービスではこの二つを同列に扱う関係で、当ブログと同様の表記になっています。

さて、そんなBlind Egoは2005年に発足。ソロ・プロジェクトでありながら同じくRPWLのメンバーであるYogi Lang(ヨギ・ラング)をプロデューサーに立て、作品作りを共にするという珍しい形態を取っています。

アルバムはこれまで

  • Mirror (2007)
  • Numb (2009)
  • Liquid (2016)
  • Preaching To The Choir (2020)

という4枚をリリース。2017年には、『Liquid』の楽曲を中心としたライブの音源化もしています。

RPWLではPink Floyd直系と言えるプログレッシブ・ロック並びにサイケデリック・ロックや、同バンドのギタリストDavid Gilmourの音楽性を投影したような、内省的・哲学的な音楽を展開しています。

しかし、ウォールナーのソロではよりウォールナー個人にスポットが当たり、一ギタリストとしての特性を表現していきます。具体的にはゴシック・ロックやプログレッシブ・メタル、オルタナティブ・ロックといったバンドではカヴァーしきれない自身の音楽性を、よりダイレクトに伝届ける意図が込められているわけです。

本作『Voices』では先述のラング他、Trey GunnやSteven Wilsonで活躍するドラマーMarco Minnemann(マルコ・ミンネマン)らが参加しています。

アルバム参加メンバー


  • Kalle Wallner (RPWL, Blind Ego) – Guitars, Bass, Keyboards, Programming

その他参加ミュージシャン

  • Marco Minnemann (Steven Wilson, The Aristocrats, Mike Keneally) – Drums
  • Arno Menses (Subsignal) – Vocals on #3
  • Tanyc – Vocals on #6
  • Yogi Lang (RPWL) – Keyboards, Programming

楽曲紹介


  1. One
  2. Two
  3. Three
  4. Four
  5. Five
  6. Six
  7. Seven. Out

全7曲。内ボーカル・ナンバーは2曲のみで、残りはインストゥルメンタルとなっています。タイトルは設けられておらず数字になっているのは非常にわかりやすいですねw

RPWLではPink Floyd直系と言えるプログレッシブ・ロックでしたが、先述の通り、ソロ作品ではあえてそのスタイルに固執せずウォールナー個人の幅広く、またアクセシビリティ溢れる世界が広がります。

#1「One」はスペーシーなシーケンスとストレート・ロックなギターリフの対極が特徴的なインスト。ギタリストのインスト作品でありながら、ギターだけでなくキーボードにもリード・パートを与えるなど、楽曲をトータルで考えている点はやはりバンドのリーダーならではですね。RPWLでは見せないハードロックなプレイスタイルも新鮮です。

#1の雰囲気をそのままに、新たにオルタナティブ・メタルのテイストを加えたインスト曲#2「Two」。ヘヴィな刻みとTool、Wheel辺りを匂わせる印象的なアルペジオのテーマの他に、5:30〜はクラシカルなアプローチも披露。それを本来のプログレッシブ・ロックと同居させる、独自のセンスを感じさせます。

先行シングル#3「Three」は、RPWLを思わせる内省的なアルペジオからエモーショナルに展開する本作のボーカルナンバー。こうしたシーンはギルモアを想起させますね。

ボーカルはドイツでオルタナ系プログレ・メタルを展開するSubsignalから、Arno Mensesがゲスト参加。落ち着いた歌声と安心感の強い歌唱力で聴かせてくれます。

#4「Four」は近年の流行サウンドである控えめなドライブ・サウンドを生かしたメタル・ナンバー。ヘヴィなリフのテーマにアーミング、ユニゾンなどを取り入れ、Steve Vaiのようなトリッキーなプレイで魅せていきます。

#5「Five」も#4同様メタル曲ですが、こちらはもっとスピード感溢れるインストです。

アルバムも終盤。#6「Six」#7「Seven. Out」は2曲合わせて20分超えという、大作の波をここで持ってきました。#6を一言で表すならハードロックなPink Floyd。ミンネマンのドラムが存在感たっぷりでして、全編で非常にパワフルなビートを刻んでくれているのですが、そこに乗っかるスライドギターから伝わる熱が凄まじいです。ボーカル…というより中盤のコーラスになりますが、そちらはドイツの女性ミュージシャンTanycが担当しています。

ラスト#7はフロイド継承バンドのリーダーらしい、内省的で感情に訴える11分のバラード。意外にハードロックなギターにフォーカスしがちですが、クリーントーンにおける繊細なプレイも素敵で、そことドライブ・サウンドを自在に切り替えるセンスを持ち合わせているのが素晴らしいです。

最後に


もっとドが付くほどフロイドなのかと思ったら、メタル要素も多かったという本作品。サウンドからはポップな取っ付きやすさが目立ちながら、いわゆる「ギターインスト作品」のベタベタなテーマに走っていない点は、根底にフロイドがあるからだなと思いました。

しかしながら、どちらかに振り切った方がファンが分散せずよさそうな気もします。ストレートなギターロックと音楽的アンビエントを両立させようとする試みは高く評価したいので、一つのアートを楽しむ気分で聴いてみてはいかがでしょうか。

関口竜太

東京都出身。ギタリスト、音楽ライター。 ​14歳でギターを始め、高校卒業と同時にプロ・ギタリスト山口和也氏に師事。 ブログ「イメージは燃える朝焼け」、YouTube「せっちんミュージック」、プログレッシヴ・ロック・プロジェクト「Mind Over Matter」を展開中。2021年から『EURO-ROCK PRESS』にてライター業、書籍『PROG MUSIC Disc Guide』にも執筆にて参加。

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