Soen「Imperial」: 元Opethドラマーが目指した“アフター・オーペス”。世界的評価を受ける会心の5th!
by 関口竜太 · 2021-12-28
こんにちは、ギタリストの関口です。
本日はSoenの2021年最新作をご紹介します。
Imperial / Soen
Soen(ソーエン)はスウェーデンのプログレッシブ・メタルバンド。
来歴
元OpethのドラマーMartin Ropez(マーティン・ロペス)が中心となったプログレッシブ・メタルバンド。
その前にロペスについて簡単にご説明いたします。
1997年にスウェーデンのデス系プログレ・メタルバンドOpethに加入。以降7枚のスタジオアルバムに参加し、『Blackwater Park』や『Deliverance』などバンドの歴史に欠かせない名盤を支えています。2006年に健康上の理由からOpethを脱退、バンドはMartin Axenrotが後任を務めています。
さて、そんな事情があってしばらくは休養を要していたロペスでしたが、その後徐々に体調を回復。2010年に自身が中心となった、新たなバンドを結成します。それが本日ご紹介するSoen。実は2004年にはすでに話だけはあったようですが、正式な結成は2010年となっています。
「メロディックで重く、複雑で、他のすべてのものとは大きく異なる」というテーマはロペスが掲げたもの。元Death,で現在はTestamentやSadusにてベースを担当しているSteve Di Giorgio、WillowtreeのボーカルJoel Ekelöf、そしてギタリストJoakim Platbarzdisの4人は2012年に1stアルバムとなる『Congnitive』でデビュー。ToolやCoheed And Combriaでエンジニアを務めたDavid Bottrillによってミックス・マスタリングされたことで早くも注目を集めることになります。
その後は2014年に『Tellurian』、2017年に『Lykaia』、2019年に『Lotus』とコンスタントに作品をリリース。スティーヴとヨアキムがバンドを去る中で新たににキーボーディストLars Åhlundを迎え5人編成に進化しています。
スウェーデン出身な故、北欧を中心に人気を高めていますが、2021年の本作『Imperial』は母国スウェーデンでチャート9位、その他の国でも自己新記録のセールスをマークしています。
アルバム参加メンバー
- Martin Lopez – Drums, Percussion
- Joel Ekelöf – Vocals
- Lars Åhlund – Keyboards
- Cody Ford – Guitars
- Oleksii ‘Zlatoyar’ Kobel – Bass
楽曲紹介
- Lumerian
- Deceiver
- Monarch
- Illusion
- Antagonist
- Modesty
- Dissident
- Fortune
全8曲で曲自体も短い、コンパクトな仕上がり。しかしながら流行りのメタルサウンドに加え、いわゆる“わかってる”感じの叙情的なナンバーが並びます。
#1「Lumerian」はインパクトたっぷりなリード・ナンバー。ハーモニクスを交えたヘヴィなギター・リフとそれに呼応するようなドラムの存在感が魅力的です。サビ前で大仰しいほどたっぷりためるブレイクに思わずニヤリとしながら、Opeth+Toolと言えるダークな雰囲気とオーガニックでキレのいい演奏がとにかく心地いいです!
ミディアムテンポの楽曲#2「Deceiver」。ボーカルのヨエルはこうして聴いてみると確かにMikael Åkerfeldtに近いかもしれません。ハードな演奏に対しソフトで暖かい声質が非常に心地良いですね。
#3「Monarch」や#6「Modesty」ではCody Fordのギター・ソロが光ります。メタルバンドでありながら、そのプレイングはブルースを基盤としたもので、地に足をつけた人のリズムに馴染むソロです。後者では冒頭のメロトロンサウンドも含めPink Floydぽさが出ていて素晴らしいです。
Pink Floydといえば#4「Illusion」も。哀愁たっぷりなピアノと切ないギターのトーンが秀逸で、David Gilmourの風を感じるブルージィなナンバーになっています。ボーカルも加味するとOpethやSteven Wilson系列のバラード曲を彷彿とさせますね。
最後にご紹介したいのは#5「Antagonist」。歯切れの良いメタルナンバーでDjent風のサウンドメイクもいけてしまう、バンドのポテンシャルを感じる一曲です。
ニュース番組の体でキャスターが口ずさみながら徐々に悪魔へと変貌していくというMVは、政治批判や対抗し名乗りをあげようというアナーキーな歌詞とマッチしており、Soenの音楽的な怒りが体現された曲と言えそうです。
最後に
ロペスにとっての「アフター・オーペス」と言えるSoenの音楽。
強靭な力強さと繊細で詩的な世界観を持つ彼らのメタルは、深淵さを感じながらもどこか人の痛みに寄り添うような、メロディとダイナミズムを持っていると思います。本作はバンドの良さが世界的セールスとなって伝わった記念すべき一枚ですが、今後の活動にも大いに期待したいところです!
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関口竜太
東京都出身。ギタリスト、音楽ライター。 14歳でギターを始め、高校卒業と同時にプロ・ギタリスト山口和也氏に師事。 ブログ「イメージは燃える朝焼け」、YouTube「せっちんミュージック」、プログレッシヴ・ロック・プロジェクト「Mind Over Matter」を展開中。2021年から『EURO-ROCK PRESS』にてライター業、書籍『PROG MUSIC Disc Guide』にも執筆にて参加。
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