Dream Theater「A View From The Top Of The World」: 頂きを見た者だけが語れる最終哲学…米プログ・メタルの王者、盤石の15thアルバム!

こんにちは、ギタリストの関口です。

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本日はDream Theaterの2021年リリース、15thアルバムのご紹介をします。

A View From The Top Of The World / Dream Theater


ア・ヴュー・フロム・ザ・トップ・オブ・ザ・ワールド(ジャパン・リミテッド・エディション) (特典なし)

Dream Theater(ドリーム・シアター)はアメリカのプログレッシブ・メタルバンド。

来歴


2010年以降、James Labrie(Vo)、John Petrucci(Gt)、John Myung(Ba)、Jordan Rudess(Key)、Mike Mangini(Dr)というメンバーで活動を続けているDream Theater

前職のドラマーMike Portnoyが衝撃の脱退をして、マンジーニが加入してから今年で11年。このメンバーでの活動も一層盤石になってきた印象を受けます。

2019年の前作『Distance Over Time』では、コンパクトにまとめあげた楽曲からは若き頃の贅肉を感じさせない、ある意味で大人、それでいて無邪気なプログレッシブ・メタルを堪能できます。

そんな『Distance Over Time』をリリース後、Dream Theaterは発表したニューアルバムと5thアルバム『Metropolis Pt.2: Scenes From A Memory』の20thアニヴァーサリーを抱き込んだワールド・ツアーを実施することとなります。しかし、ツアーの最中、新型コロナウイルスによるパンデミック、及びロックダウンの危機に晒されツアーは延期、もしくは中止となり、日本でも予定されていた公演が無くなってしまったのは記憶に新しいですね。

そこから各々自宅で自粛する期間を経て、次に自分たちにできるのは新たな作品づくりだと気持ちを切り替えることとなります。そして彼ら専用のレコーディング・スタジオ、リハーサル・スペース、コントロール・ルーム、そして機材保管庫を兼ねるDTHQ (Dream Theater Head Quarters)にてハイクオリティな作品づくりに乗り出しました。

年は明け2021年4月。ペトルーシがYouTubeチャンネル「Thomann’s Guitars & Basses」に出演。そこで、新たに製作した8弦のシグネチャーモデルをお披露目するとともに、Dream Theaterの新譜が今年後半にリリースされることを示唆!このニュースは各メディアを通じて大体的に報じられました。

さて、アルバム制作に当たって活動拠点をアメリカとしている彼らですが、唯一、ジェイムズ・ラブリエのみはカナダに自宅があるため、ZOOMによるリモートでの仕事をこなし、今年3月にニューヨークにてボーカルを録音。

アルバムのアートワークにはカナダのグラフィックデザイナー、Hugh Symeが手堅いデザインを担当し、いよいよ手はずは整いました。新たに構築されたニューアルバム『A View From The Top Of The World』の中身を紐解いて行きましょう!

アルバム参加メンバー


  • James LaBrie – Vocal
  • John Petrucci – Guitar
  • John Myung – Bass
  • Jordan Rudess – Keyboard
  • Mike Mangini – Drums

楽曲紹介


  1. The Alien
  2. Answering The Call
  3. Invisible Monster
  4. Sleeping Giant
  5. Transcending Time
  6. Awaken The Master
  7. A View From The Top Of The World
    I. The Crowning Glory
    II. Rapture Of The Deep
    III. The Driving Force

前作はバンドとして珍しく1時間を切るコンパクトな内容でしたが、今作では再び長尺贔屓なDTスタイルが戻ってきています。

#1「The Alien」はアルバムのオープニングを飾る重要ナンバー。本作で最初に書かれたとされるこの曲は、彼らにとっての冒険でありこれまでになかったような非伝統的な構造にトライ。結果、アルバム全体のトーンをこの曲に合わせ、新たな惑星を作り上げています。

初っ端からマンジーニのタムロールが気持ちいいイントロの導入。5拍のリフ・パターンを巧みに変化させながらキーボードが加わったり『Awake』の頃のような攻撃的ミュートで畳み掛ける展開を披露しています。さらに叙情的なパートへと続き『Distance Over Tiime』からの発展を感じさせます。

4:40秒ごろから長めに取られたインスト・パートでは、ひたすら気の抜けないユニゾンを抜けペトルーシのソロ・パートへ。バック・トラックやマンジーニのフィルともマッチさせた楽器演者向けのアグレッシブな出来栄え。これからアルバムの全体像が見えるとより意味を持ってくるかもしれません。

続く#2「Answering The Call」は、刻む攻撃的なリフとデジタルシーケンス、さらに開放弦を使用したトリッキーなリックからメロウなソロへ展開するイントロと、ドラマティックな歌メロが印象的です。メロディアスなサビに対しアウト気味のきわどいギターソロも、近年のスタイルとして板に付いてきた感じがして絶妙に癖になります。

そして先行シングルとなった#3「Invisible Monster」。古くは「Pull Me Under」、「On the Backs of Angels」など、これもDT流ミディアム・テンポです。独特のテンション感があるメイン・リフやアクティブなギター・バッキング、丁寧に歌い上げるラブエリのボーカルといったこの曲は、比較的多くの人が求めるDream Theater像ではないでしょうか。

ペトルーシは、「たくさんの曲を書いた後で浮かんできた曲だよ。今回の多くは、非常にエネルギッシュでテンポ的にも明るい曲ばかりだったからね、マイク(・マンジーニ)が違ったテイストの曲を求めたのさ」と語ります。タイトルは直訳すれば「見えないモンスター」ですが、見えない不安についてそれが人々をどう悩ませているかという、現代人に多く当てはまる問題をテーマに扱っています。

中盤に差し掛かり映画的な10分のミニ・エピックとなった#4「Sleeping Giant」。リズミカルなフックと、アンセミックなメロディ・ラインとのバランスが秀逸で、シンセサイザーによるスリリングなアレンジやコード進行、変拍子に飲み込まれていきます。

#5「Transcending Time」はRushの影響を色濃く感じられるナンバー。全体的に「The Looking Glass」のようなポップな雰囲気を含みながら北欧系プログレのようなシンセリード、さらにはピアノ+アコギパートといった柔らかなニュアンスが印象に残ります。

一転、突如プログレ・メタル魂を思い出したかのような#6「Awaken The Master」は先の話に上がった、バンド初の8弦ギター・ナンバー。まずは3分近くに渡ってイントロが用意されていて、新たなサウンドとバンドのポテンシャルを堪能できます。リフやドラムのアプローチはいつも以上にメカニカルで、新しいギアに対してまずは様子見といった具合でしょうか。逆輸入的になりますが、キーボードのサウンドもどことなくCircus Maximus風で、洗練されたセンスの中にも『Awake』で初めて7弦を解禁したような初々しさが垣間見れます。

そして20分超えの大作となったラスト、#7「A View From The Top Of The World」。8年前の「Illumination Theory」とはまた違うシンフォニックを感じさせるタイトル・ナンバーですが、あのときのような無理くりなオーケストラ・ソングではなく、かなりバンド重視のサウンドになっています。

9分を超えたあたりからは、ノスタルジーな雰囲気漂うスロー・パートへと突入します。実はこの曲で最も重要なのはここでして、「Top Of The World」というワードとは真逆の、暗い深遠へと私たちを誘ってくれます。しかしこれは単に不調や、真っ逆さまに落ちていくようなイメージとは違って原点を振り返るといった意味が込められています。

「頂点」というものは、言い換えればそこから下降していく運命にあるということで、それは歴史上どの場面においても適応された逃れられない真理です。しかし、このパートの歌詞の最後には「Always keeps me coming back for more」として、いつでも「頂点」と「原点」を行き来できる次元超越的な哲学が述べられています。

このパート2があるのでラスト・パートの超絶インストやら最後に締めるラブリエのボーカルにもより一層の説得力が増します。なおラスト・パートは「だから頂点に立とうね」という締めくくりですが、先ほど言った「頂点はそこから下降していく運命」という考えを丸呑みするかのようなパワーに溢れていますね。

最後に


今回も手堅い一枚といった感じでしょうか。

最初から最後まで非常にバランスの取れたテクニカル系プログレッシブ・メタルといった総評ですが、歌メロに関してはなかなかスルメな匂いがいたします。リフやモチーフについてもメカニカルなシーンが増えていますので、技術の大波に呑まれるつもりでしたら大歓迎、叙情さを楽しみたいという人には根気が必要とも思います。

なんにせよ今度は日本に来れるよう願っています。素敵なアルバムをありがとう!

関口竜太

東京都出身。ギタリスト、音楽ライター。 ​14歳でギターを始め、高校卒業と同時にプロ・ギタリスト山口和也氏に師事。 プログレッシブロック/メタルの大ファン。自身が企画するプログレッシブ・ロック・プロジェクト「Mind Over Matter」を展開中。2021年から『EURO-ROCK PRESS』にてライター業、書籍『PROG MUSIC Disc Guide』にも執筆にて参加。

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