The Neal Morse Band「Innocence & Danger」: コンセプトじゃなくてもいけるやん!知名度うなぎのぼりの超実力派プログ・ロックバンド、渾身の4th!

こんにちは、ギタリストの関口です。

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本日はThe Neal Morse Bandの最新作をご紹介します。

Innocence & Danger / The Neal Morse Band


Innocence & Danger -CD+DVD-

The Neal Morse Band(ザ・ニール・モース・バンド)はアメリカのプログレッシブ・ロックバンド。

来歴


元Spock’s Beardのフロントマン、Neal Morseが12年に渡るソロ活動の末に最も信頼できるメンバーと新たな音楽性の追求に乗り出したのがこのThe Neal Morse Band

そもそもソロ活動に至った経緯などは他の記事をご覧いただきたいのですが、早い話が神からの啓示を受けたからで、クリスチャン・ミュージシャンとしての活動も歌詞の内容もそこへリンクしてくるので、バンドを知る上では抑えておきたいポイントです。

基本的なサウンドは先のSB、ソロ活動と大きくは変わらないものの、盟友であるベーシストRandy GeorgeとドラマーMike Portnoyに加え、ギタリストEric Gillette、キーボーディストBill Hubauerといったマルチな才能を取り込みます。

YesやGenesisといった’70年代を代表する王道のプログレッシブ・ロックと、各メンバーがフレキシブルにコーラスを担当するThe Beatles的側面、そしてDream Theaterを始めとするハードでテクニカルな演奏技術を武器に、ニールが得意とするシンフォニックで大作志向な楽曲を繰り広げています。

バンドは2015年に『The Grand Experiment』でデビュー。2016年と2019年にはそれぞれ『The Similitude of A Dream』『The Great Adventure』という全3作品をリリース。

後者2作に関しては、クリスチャン・ミュージシャンであるニールの意向から、プロテスタントで広く読まれる宗教書「天路歴程」をコンセプトにしたストーリー・アルバムとなっています。

本作『Innocence & Danger』は2年ぶりとなる4thアルバム。1st以来、非コンセプト・アルバムとしてリリースされたNMB的アラカルトです。

アルバム参加メンバー


  • Neal Morse  – Keyboards, Vocals, Guitars
  • Mike Portnoy – Drums, Vocals
  • Eric Gillette – Guitars, Vocals
  • Randy George – Bass
  • Bill Hubauer – Keyboards, Vocals

楽曲紹介


Disc 1 (Innocence):

  1. Do It All Again
  2. Bird On A Wire
  3. Your Place In The Sun
  4. Another Story To Tell
  5. The Way It Had To Be
  6. Emergence
  7. Not Afraid Pt.1
  8. Bridge Over Troubled Water

Disc 2 (Danger):

  1. Not Afraid Pt.2
  2. Beyond The Years
    I. Far From Home
    II. The Far That’s Always Near
    III. Kings & Queens & Bitter Things
    IV. Island in the Sun
    V. Drifting Through the Years
    VI. Watercolor Sky
    VII. Worlds Away

ダウンロード及びストリーミングが主となる今日、「2枚組」という売り文句がどの程度意味をなすかはわかりません。しかし、それぞれに「Innocence」と「Danger」という役割が持たされていることから、8曲目までと9,10曲目が違った意味を持つということは頭の片隅にでも入れておくべきでしょう。

さて、#1「Do It All Again」NMBらしいハッピーな雰囲気漂うオープニング。曲調としてはバラードに近いですが、スタジオ音源なのにライブでの登場をイメージさせるイントロや、エリックのギター・ソロ、Genesisを感じさせるシンセ・リードも健在です!1stアルバムでの「The Call」における21年最新版と言ったナンバーですね。

#2「Bird On A Wire」では、冒頭から、勢いのあるスケール上昇のユニゾン・フレーズも強烈ですが、ここではその後のシンセサイザーの音色にも注目!前作に収録された「Freedom Calling」で使っていたパッチですね。個人的にこの音が好きなので今回かなり気に入りました。あくまでポップなハードロックを守りつつ、インターヴァルではキーボードとギターソロの濃密な掛け合いもあって非常にタイトなナンバーです。なおファンの間ではもっぱらランディのベースラインが人気みたいです。

ベースのランディが持ち込んだとされるポップ・ソング#3「Your Place In The Sun」。NMBを形成する重要なファクターでもあるThe Beatlesや、Totoのエッセンスを存分に含んだピアノとコーラス中心のナンバーで系統で言えば「The Ways of A Fool」、「Hey Ho Let’s Go」、「Vanity Fair」辺りを彷彿とさせます。

Maroon5も思わすピアノワークが特徴の#4「Another Story To Tell」は#3に続いてAORな一曲。TotoやElectric Light Orchestra、Supertrampといったエレクトロなポップさと、正解のはっきりしているハードなギター、シンセサイザーのソロがとても気持ちいいです。

ギターの繊細なヴァイオリン奏法から繋がる#5「The Way It Had To Be」。後期Pink Floyd風のこの曲は、過去の「The Sloth」などにもあったアンニュイな雰囲気のナンバーですが、エリックのボーカルがやはり美しく、曲は寂しげなのにポジティブな気持ちにさせてくれる不思議なパワーを持っています。

アコースティック・インストである#6「Emergence」ですが、事実上、その後の#7「Not Afraid Pt.1」に繋がるイントロにもなっています。なお、関連性のない単発曲で構成されている本作において、#4,5、#6,7は各トラックを繋げているので流している分には組曲のように聴こえてくるというギミックになっています

さてそんな#7ですがメロディックなアコースティック・ギターの流れから「Waterfall」風のコーラスが魅力的なバラードとなっています。

#8「Bridge Over Troubled Water」はブリティッシュ・プログレのアプローチを踏襲した8分のナンバー。二転三転するイントロはシンフォニックであり、ジャジーで怪しげなアプローチもあり終始退屈させない造り。『The Grand Experiment』のボーナス・ディスクに「MacArthur Park」というRichard Harrisのカヴァーが収録されていますが、あれをより仰々しく発展させたのが本曲だと説明するのが最も易いと思います。

ニール本来の声の良さはもちろん、ビルが歌うサビも非常に味わい深く、泣きとも言えるギターソロは歌謡曲の雰囲気もあり、1曲の中で多国籍を感じることができます。そして何より5:40〜の出し惜しみのないオーケストレーションは一部のエンディングにふさわしく、もうここでアルバムが終わってしまってもなんら不思議ではありません。

しかし!

その場合若干の物足りなさをファンは感じてしまうと思いますので、続けてDisc2に収録されたラスト2曲を見ていきましょう!

まずは19分超えの大作となった#9「Not Afraid Pt.2」イントロから3分半のインスト・プログラムを有し、かつてのNeal Morseを強く意識させる強烈なインパクトを与えます。歌の序盤はPt.1を踏襲したバラード、7:30〜はダークなピアノに見るシアトリカルな緩急からビルのボーカル・パートへと移っていきます。

ニールの十八番である多重コーラスとドラム・ロール(バンドイン)とのコール&レスポンスを抜けると、11:47〜からはエリックの大胆かつロックフルなギター・ソロ。この曲でイントロ、インターヴァル、アウトロと魅せてくれるリードギターは前作までの勢いを上回りますね。ラストはPt.1のリプリーズを行い壮大に締めています。

そしてラストとなる#10「Beyond The Years」はNMBでも最長の曲時間31分23秒。ニールの活動全体で見ても「World Without End」、そしてTransatlanticの楽曲にも迫る超大作になっています。

冒頭は上品なストリングスからビルの導入。1:50まで来たところでテンポインからニールとエリックの両者へとボーカルのバトンが繋がれます。なお7部構成である本曲でビルが歌う冒頭部分が「I. Far From Home」となります。

「II. The Far That’s Always Near」は王道のニール・ポップ。5:55からの「III. Kings & Queens & Bitter Things」では序盤、シーケンス的なギターリックから、一部エスニックを含むパーカッシブなパートへと移ります。軽快なピアノ、オルガン、クラップ〜ギターソロなど一通りのアンサンブルを行ったところで、アコギを携え歌うアップテンポなYesへと変貌します。

インターヴァルを挟んで12:50〜は「IV. Island in the Sun」。十八番のマドリガーレ・コーラスと、ギターとキーボードによるクラシカルなユニゾン・フレーズ、そこからのシンフォニックな展開は「V. Drifting Through the Years」へと繋がっていきます。ここでは、ストリングスやオルガンよって神聖な雰囲気を演出、エリックのブルージィなギターとビルの渋いボーカルがマッチします。アンニュイな曲作りはこれまでもニールの楽曲で行なわれてきたことですが、本曲におけるこれはよりバンドを意識しているというか、ニール以外のセンスが取り込まれているのが聴いていてもわかり、非常に新鮮です。

30分の物語もいよいよ佳境、「VI. Watercolor Sky」はプログレッシブな変拍子とキメ、キーが曖昧なほどクロマチックに行き来するフレキシブルなパート。この辺は「The Battle」でも感じましたが、本作で一際活躍が光るランディのベース・ソロが用意されていたりとまだまだフラストレーションを解放していきます。

いよいよラスト・パート「VII. Worlds Away」。ここまで曲時間は24分を超え、熟練のプログレッシャーもさすがに#1から聴いていればお腹も膨れてくるでしょう。しかし、まだメインボーカル2人による楽曲の締めと壮大なシンフォニック、ギター・ソロが残っています。メロディは「II」のリプリーズ、アウトロでは「I」のテーマへ戻っていきます。

ニールも以前インタビューで「ラスト・パートはこうして盛り上げるように作るとうまくいきやすいんだよ」と話していたように、残りの7分をたっぷり濃密な音にくるまれながら過ごすというのは実に贅沢な時間です。

そして段々と音数が減り、ついにはストリングスのみに。……そして、

プツン。

ラストのストリングスは意図的に強制終了されていて、綺麗な幕引きという終わり方をしていないんですね。やり尽くされた手法ではありますがニールがそれをやるのは実に斬新。私が思うに彼はとてもきっちりした人間なので最後に「想像の余地を残す」というやり方は好きではないと思っていました。

最後に


意外性も残しながら綺麗に締めくくる最新作『Innocence & Danger』。前作にあったようなストレートなヘヴィメタル・チューンに出会えなかったのは少々残念でしたが、どちらかと言えばSpock’s Beardにも近いような、過去のニールから再発見を行える由緒正しきプログ・アルバムとなっています。

そして、同じく単発の曲で構成された『The Grand Experiment』よりバンドとしてのバランスに優れ、各パートの存在感を随所に感じられる発展系の作品になっています。実力派の5人が集まったバンドではありますが、そこにさらなる成長を感じられてまた次回作が楽しみになりました!

関口竜太

東京都出身。 ​14歳でギターを始め、高校卒業と同時にプロギタリスト山口和也氏に師事。ロックやメタルに加え、ブルース、ファンク、ジャズなど幅広い演奏や音楽理論を学ぶ。 プログレッシブロック/メタルの大ファン。自身が企画するプログレッシブ・ロックプロジェクト「Mind Over Matter」を展開中。

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