VOLA「Witness」: デンマーク産ルーキー・バンドの3rd作!あらゆる音楽要素を飲み込むプログレ・メタル界の大型モンスター!
by 関口竜太 · 2021-06-28
こんにちは、ギタリストの関口です。
本日はヨーロッパのルーキーバンド、VOLAの最新作をご紹介します。
Witness / VOLA
VOLA(ヴォラ)はデンマーク、スウェーデンのプログレッシブ・メタルバンド。
来歴
デンマーク最大の都市、コペンハーゲンで2006年に結成されたVOLAは、今日まで確実に欧州プログ・バンドとしての地位を登っています。
このバンドを引っ張る主人公はギター・ボーカルのAsger Mygind。彼は他数人の友人と共にVolaを結成すると、2年後には現在のキーボーディストであるMartin Wernerも合流。2010年までにEP『Homesick Machinery』や「Glasswork」というシングルを発表します。
その後のメンバー・チェンジではベーシストNicolai Mogensenが加入。ここでは『Monster』というEPの他、2015年に1stアルバム『Inmazes』をリリースするなどコペンハーゲンを中心にその人気を高めていくこととなります。
彼らの音楽性は7弦ギターを用い、プログレッシブ・ロック/メタルやDjentを基盤とするようなハードなアンサンブルに、エレクトロな要素も追加。さらに雄大で壮大なコーラスを武器とすることで、Pink Floyd+Rammstein+Meshuggahという独自のスタイルで世間的な認識を獲得しています。
なお、バンドはインフルエンスとして今挙げたバンドの他にOpethやPorcupine Tree、Devin Townsendも公言しています。
さて、2018年には2ndアルバム『Applause of a Distant Crowd』をリリースしており、その前にはドラマーAdam Janziが加入することで現ラインナップが完成しています。
本作『Witness』は彼らの3rdアルバムとなる最新作。ゲストにヒップホップ・アーティストのSHAHMENを迎え入れよりワイドな音楽性を求めるバイタリティが伺えます。
アルバム参加メンバー
- Asger Mygind – Guitar, Vocals
- Martin Werner – Keyboards, Programming
- Nicolai Mogensen – Bass
- Adam Janzi – Drums
その他参加ミュージシャン
- SHAHMEN – Vocals on #4
楽曲紹介
- Straight Lines
- Head Mounted Sideways
- 24 Lightyears
- These Black Claws
- Freak
- Napalm
- Future Bird
- Stone Leader Falling Down
- Inside Your Fur
バンド自身が公言しているように、Opethからの影響を随所に感じ取れる最新作。デスヴォイスこそないものの、それはコンパクトなOpethであり、素直なPain Of Salvationであり……そこにCircus MaximusやDevin Townsendなど、由緒あるプログ・アーティストをリスペクトする姿勢が読めると思います。
シンセサイザーのリバースから突入する#1「Straight Lines」は先行配信もされたシングル曲。マス要素のある独特なリズム・パターンとヘヴィなリフが、プログレ・メタルに刺激を求める全ての人に刺さります。サビでは一層の激しさを増し、プラック系シンセと切ないボーカルのファルセットの攻撃的なサウンドに浸れることでしょう。
#2「Head Mounted Sideways」は’90年代のオルタナティブ・サウンドを取り込み現代流にまとめ上げているのですが、その姿がまさにポストPOSといった具合で、琴線に触れるリスナーも多いのではないでしょうか。サウンドはかなりミネラルなものですが、厚みのあるコーラスにフックの効いたメロディという色付けによって何度も聴いてしまう、そんな曲に仕上がっています。
近年のプログレはデジタル・ポップの要素が顕著で、2010年代よりもエレクトロだったり、純粋なバンドほど免疫のないシンセ・サウンドだったりが楽曲に採用されることが増えました。
その新プログレとなるサウンド・スケープの頂点にいるのがSteven Wilsonだと個人的に考えていますが、#3「24 Lightyears」はそんなスティーヴンの思惑を読み取り自分たちのスタイルに落とし込んだ斬新な一曲です。
まとわりつくシーケンスに露骨なまで16分に刻まれたドラムが印象的ですが、それ以上にメロディアスなボーカル・ラインが気持ちよすぎてこの音の波に呑まれることを自然と許容してしまいます。中盤でのブラウン・サウンド・ギターもクドさを抑えるファクターとしてナイスなアイデアです!
アルバムの中で特にOpethの雰囲気を感じるのがこの#4「These Black Claws」。冒頭はエレクトロなドラムとゴーストなギター・アルペジオですが、すぐにそのメロディを踏襲したヘヴィ・リフへと変貌します。まぁこの辺は敬虔なリスナーであれば容易に想像するアプローチではあると思うのですが、怪しげに進行する歌と繊細なコード進行がまるでMikael Åkerfeldtをトレースしているように聞こえるのです。
なおフィーチャーリングとして、アムステルダム出身のプロデューサーSENSEとロサンゼルス出身のラッパーBLS aka BlessによるHIP HOPプロジェクトShahmenとのコラボ曲となっています。
中盤の小休憩にはアコースティック・バラードの#5「Freak」。こうしたヘヴィな方向性のアルバムにおいて、優しいメロディと叙情的なサウンドによるバラードは特に意味を持つと思いますし、個人的には大好物です。
アルバムの中盤を支配するメタル・ナンバー#6「Napalm」。後期Circus Maximusを彷彿とさせ、タイトな刻みと気持ちのいい縦ノリのリズム、そしてサビのファルセットとコーラスがとても美しいです。
#7「Future Bird」はこちらもPOS風であるミディアム・メタルナンバー。静寂なヴァースとサビでのエモーショナルなギャップ、隙間を埋めるようなシンセ、ピアノが耳に退屈させない心地よい刺激をもたらしています。
フランジャー・ギターからプログ・メタル然とした変拍子リフを繰り出す#8「Stone Leader Falling Down」、そしてラストの#9「Inside Your Fur」に至るまで、インダストリアルながら上質でメロディアスな現代メタルを見事に体現してくれています。
曲はどれもコンパクトで長くても6分に満たない凝縮ぶりがまさにジャケットのペンタブラックのよう。とにかくメロディがいいのでひたすらループできてしまう中毒性を持ったアルバムとなります。取り扱い注意!!
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関口竜太
東京都出身。ギタリスト、音楽ライター。 14歳でギターを始め、高校卒業と同時にプロ・ギタリスト山口和也氏に師事。 ブログ「イメージは燃える朝焼け」、YouTube「せっちんミュージック」、プログレッシヴ・ロック・プロジェクト「Mind Over Matter」を展開中。2021年から『EURO-ROCK PRESS』にてライター業、書籍『PROG MUSIC Disc Guide』にも執筆にて参加。
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関口竜太
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