Frost*「Day And Age」: UKスーパー・プログにおける2021年注目作!スリリングでホラーなテイストを持つ5年ぶり最新作!

こんにちは、ギタリストの関口です。

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本日は現代プログレの覇者、Frost*の2021年最新作をご紹介します。

Day And Age / Frost*


Day And Age (Deluxe Edition) [Explicit]

Frost*(フロスト)はイギリスのプログレッシブ・ロックバンド。

来歴


ちょうど1年前、3rdアルバムと姉妹関係にある楽曲を収録したEP『Others』を突如発表。さらにそれさえも含め、冬にはこれまでの活動をまとめたアンソロジー・ボックス・セット『13 Winters』もリリースするなど、ここにきてFrost*という氷の火山が急に活動的になってきました。

元はと言えば、作曲家・音楽プロデューサーであるJem Godfreyが中心となり2004年に結成されたニューエイジなプログレッシブ・ロック・グループとして不定期な活動を続けてきたFrost*。

活動はジェムの気分に左右される性質はありますが、2006年のデビュー作『Milliontown』で、John Mitchell(Gt)Andy Edwards(Dr)John Jowitt(Ba)、John Boyes(Gt)というネオ・プログレッシブ・ロックを盛り上げたベスト・プレイヤーが招集され、これはプログレ史に名を刻めるほどの名盤となりました。

その後2ndアルバムやライブ・活動休止を経て、2016年には新たにIt BitesのNathan King、PendragonのCraig Blundellと言った、これまたネオ・プログレ界の大ベテランたちが参加し、3rdアルバム『Falling Satellites』をリリースします。

そして2020〜2021年。多くのバンドやプロジェクトがそうであったように、ライブが行えない反面とにかくパソコンや楽器に向かい、偉大な制作期間に入っていったことは間違いありません。

本作『Day And Age』はそんなFrost*にとっても例外のない期間に生まれたファン待望の4thアルバム。ギターにはミッチェル、ベースにはネイサンと過去作品より信頼の置けるメンバーが選ばれた他、数々の有名ミュージシャン・サポートをこなすKaz Rodriguez、The DarknessのDarby Todd、’90年代King Crimsonで存在感を放つPat Mastelottoと言った3人のドラマーを起用。さらに楽曲中のヴォイスにはハリウッド俳優Jason Isaacsも参加しています。

アルバム参加メンバー


  • Jem Godfrey – Keyboards, Vocals
  • John Mitchell – Guitars
  • Nathan King – Bass
  • Kaz Rodriguez – Drums
  • Darby Todd – Drums
  • Pat Mastelotto – Drums
  • Jason Isaacs

楽曲紹介


  1. Day And Age
  2. Terrestrial
  3. Waiting For The Lie
  4. The Boy Who Stood Still
  5. Island Life
  6. Skywards
  7. Kill The Orchestra
  8. Repeat To Fade

#1「Day And Age」はジェムとミッチェルが共作した11分の大作ナンバー。緊張感のあるシンセサイザー、クールなサウンドのドラムにSteven Wilsonラインなギター・アルペジオがバンドのタイトさを表現しています。

先行で公開となったMVでは、ITや通信機器に支配される現代人テーマにしており、Jltdesignsによるヘタウマなアニメーションが何よりも印象的。豚の格好こそしているものの完全にITに犯された現代人が、ひたすらループしているだけのような毎日に精神が崩壊し、ラストはと畜場の豚であることを心から受け入れてしまう……Frost*らしい風刺の効いた映像となっています。

続く#2「Terrestrial」は、直訳すると「この世の」「現世の」「陸生の」というような、今この瞬間地面の上に立っているといったニュアンスの言葉ですが、この曲のテーマは1969年に死去したとされるイギリスの実業家ドナルド・クローハースト(Donald Charles Alfred Crowhurst)に由来します。

彼は1968年10月に英サンデータイムズが主催した世界一周のヨットレースに出場。事業の失敗でかさんだ借金を優勝賞金で穴埋めしようと目論見ますが、レース序盤からトラブルが続き、早々にレースを断念します。そしてあろうことか、世界一周をしていないにも関わらず、さも航海を達成したかのような航海記録をつけ、ゴールを目指します。しかし、1969年6月29日に無線が途絶え、数日後発見された無人のヨットからは7月1日で止まった航海日誌だけが見つかり、クローハーストはそれ以降姿を現すことはありませんでした。

そして彼が、最後に更新した航海日誌にあった言葉、それが「Terrestrial」だったそうです。

『Others』に限らず近年のUKプログレががかなりデジタルポップ化していたので、本作が私の管轄下に入るか心配だったのですが、ここまでで本来のロックなFrost*が戻ってきています。デジタルシンセと解像度の高いタイトなギター、パワフルで存在感の強いリズムセクションといった具合に、私たちがFrost*に求める21世紀のプログレがそこにありました。

#3「Waiting For The Lie」は上品さを感じさせるピアノのアルペジオが中心となり、ウィスパー的に入るボーカルが特徴。キラキラとしたシンセサイザーやデジタルなドラムも割り込んできてスペイシーな雰囲気を与えています。

アイザックのナレーションから始まる#4「The Boy Who Stood Still」。現代エレクトロのアンビエントをジェム流に消化した7分半のこの曲は、複雑なベース・ラインやリズムパターンを含みながらパワフルに展開していきます。

続く#5「Island Life」は、本来盲目的に楽しむべき休日という概念に異議を唱え、実際その「楽しみ」というものを感じられているのかといった面白い視点からの哲学。リズムやスリリングな演奏は#1を思わせ、ミッチェルのソロ・プロジェクトLonely Robotからの流れも当てはまりそうなロックなナンバーとなっています。

マステロットがドラムを担当した#6「Skywards」。ヴァースの内省的なボーカルからサビでは一気にカタルシスを放出するコントラストを濃く設定したナンバーとなっています。

9分半の大作#7「Kill The Orchestra」は序盤暗く、淡々としたボーカル・ワークで進んでいきますが、3:08より本作一のヘヴィ・リフが登場します。尖ったそのサウンドも織り込んだメタリックかつ蛇行的な展開は、ジェムのプロデュースによるセンスが強く現れ、ドラマティックに楽しませてくれます。

#8「Repeat To Fade」はラストにしてアルバム一力強いビートが刻まれる一曲。咆哮するミッチェルやそこに独特のフィルターをかけ力を制御するプロダクション、それらの土台を支えるネイサンとマステロットとの相性の良さも伺えます。曲はマニアックな様相ですが現代プログの潮流を見事に押さえた会心の出来となっています。

最後はホワイトノイズによるフェードアウトから「聞こえますか?」という少年の囁きによってばっさりと切られています。サウンドは全体的にライトながらホラー・テイストを感じられる上、現代哲学やジェムの思想も織り交ぜた深く探求できる作品となっています。

最後に


今回貼らせていただいたアルバムのリンクからはデラックス・エディションを購入することができるのですが、こちらでは各曲のインストゥルメンタル・バージョン、そして「Day And Age」のシングル・エディットが収録されています。

新型コロナウイルスによる窮屈な日々のそれは、もしかしたら音楽すら死なせてしまうかもと私はずっと危惧していましたが、こうしてエネルギッシュな作品がとめどなくリリースされてくれる現状を見るとむしろ斬新な作品が生み出されるのはある種の抗体のように感じていて、若干皮肉ではありますがとても感謝すべきことだと思います。

以前、今年のプログレ・アルバムはとても少ないと嘆きを漏らしたこともあったのですが、むしろこの状況下でリリースされる作品のそれぞれにとてつもなく大きな意味があるのでは思えている最近。サウンド面だけでなく常に進もうとする精神こそがプログレッシブ・ロックなのだと再認識させられました。

関口竜太

東京都出身。 ​14歳でギターを始め、高校卒業と同時にプロギタリスト山口和也氏に師事。ロックやメタルに加え、ブルース、ファンク、ジャズなど幅広い演奏や音楽理論を学ぶ。 プログレッシブロック/メタルの大ファン。自身が企画するプログレッシブ・ロックプロジェクト「Mind Over Matter」を展開中。

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