Octavision「Coexist」: 今知らなきゃヤバい部門1位!アルメニア出身ギタリストが送るYouTube130万回再生のプログレ・メタル&1stアルバム!
by 関口竜太 · 2021-05-09
こんにちは、ギタリストの関口です。
近年、それまで考えもしなかった発想からとてつもないバンドが飛び出してくることが多々あります。それらはおそらくずっとそこにいたはずなのですが、SNSやYouTubeの発展で「彼ら」が地上に出ようとしたことと、それらを駆使して新バンドの発掘に精を出す音楽マニアたちが邂逅することで我々は今日も新しい音楽に出会うことができるのでしょう。
というわけで本日は、Octavisionのデビューアルバム『Coexist』ご紹介します。
Coexist / Octavision
コエグジスト[高音質SHM-CD仕様/日本語解説・歌詞対訳付き]
Octavision(オクタヴィジョン)は、アメリカのプログレッシブ・メタルバンド/プロジェクト。
来歴
2010年にギタリストHovak Alaverdyan(ホヴァク・アラヴェルディアン)が中心となったプログレッシブ・メタル・プロジェクト。ここであえてプロジェクトと言っているのは、後記している参加ミュージシャンがゲストとも正式メンバーとも取りづらい、非常に境界線の薄い形態をとっているからです。
基本的にはアメリカで活動しているOctavisionですが、中心人物のホヴァクはアルメニアの出身。2008年に音楽キャリアのためアメリカへ移住し今にいたります。
ちなみにアルメニアという国にぴんと来ない人もいるかもしれませんので簡単にご説明を。アジアとヨーロッパの間にそびえるコーカサス山岳地帯にある国で、かつては旧ソ連の構成国でもありました。陸続きのお隣さんにはトルコやイラン、ジョージア、アゼルバイジャンなどが存在します。
さて、自身での音楽プロジェクトを立ち上げたホヴァクですが、その前年にNAMM SHOW(アメリカで行われる世界最大級の楽器フェア)でかのVictor Wootenと知り合ったことも大きなポイントです。
ウッテンやフュージョン界隈で活躍するベテラン・キーボーディストのSteve Weingartを迎え入れ、2016年に「Three Lives」をMVを公開。プログレッシブ・メタルとしての完成度ももちろんですがそこにウッテンが参加している意外性もマニアの間で話題となりました。
本作はそんなヒット・ソングを7曲入りのデビュー・アルバム。ボーカルにはSons Of ApolloのJeff Scott Soto、ベースにはウッテンの他、同じくSOAやMr.Bigでお馴染みのBilly Sheehanもクレジットに名を連ねています。
アルバム参加メンバー
- Jeff Scott Soto – Vocals
- Hovak Alaverdyan – Guitars
- Victor Wooten – Bass on #3, 5, 7
- Billy Sheehan – Bass on #1, 2, 4, 6
- Murzo – Keyboards
- Roman Lomtadze – Drums
- Avo Margaryan – Blul on #1, 5, 7
-
Steve Weingart – Keyboards on 5
-
Anahit Artushyan – Kanun on #5
- Artyom Manukyan – Cello 6
楽曲紹介
- Mindwar
- Coexist
- Proctagon
- Apocalyptus
- Three Lives
- Stormbringer
- So It Begins
全7曲中5曲がインスト・ナンバーとなっているのはかなり異質であるかと思いますが、その注目度は2021年屈指。
現代らしいDTMとデータの送受信を駆使し、昨今の時勢にもあった音楽制作スタイル。ギタリストでありながら、バンドを意識しバランス良く仕上げる、これもホヴァクの拘っている点になります。
ダークなギター・リフで幕を開ける#1「Mindwar」。力強いベースとドラム、さらにはシンセ・クアイアを用いたミステリアスな雰囲気と卓越したギター・ソロに早くも引き込まれていきます。この曲を始め計3曲で聴くことができるフルートのような音色(2:00〜)はブルールという木管楽器。アルメニアが発祥ではないものの、民族的によく使われる伝統の楽器です。
続いてタイトル・ナンバー#2「Coexist」。この曲と#4「Apocalyptus」の2曲はジェフが参加したボーカル曲となり、ベースもSons Of Apolloで足並みを揃えるビリーということもあってとてもバンド的で統一感のあるタイトなアンサンブルが聞きどころとなっています。#4は10分に迫るドラマティックな構成でDream Theater風味のフレーズも多数登場します。ぶっちゃけた見解ですがSOAよりプログレッシブを聴きたいならこっち!笑
#3「Proctagon」はヘヴィなリズム・パートにワウを効かせたエモーショナルなギターが聴かれるナンバー。短い曲の中でもきちんとソロ・パートを振り分け、自由に変化するリズムやタイトなユニゾンなど、常に退屈を感じさせない丁寧な造りになっている点は大いに支持したいです。
そしてプロジェクトとホヴァクの名前を広めた#5「Three Lives」。YouTubeに上げられたMVは現在までで130万回以上の再生回数を誇ります。
タイトルにあるようにムードの異なる3つのパートから成り立っており、エッジの効いたメタル・サウンド、Dream Theaterを彷彿とさせるメロディックかつテクニカルなプレイはもちろん、ウッテンのソロも含めジャズやオリエンタルな雰囲気のある後半パートといった具合に全てが気持ちよく、そして革新的です。
これを聴かずして2021年のプログ・メタルは語れないという逸品です。
#6「Stormbringer」は叙情的に紡がれたハード・サウンドなバラード。ラスト#7「So It Begins」はスタイリッシュなフュージョンと変則リズムのプログレッシブさを同居させたインテリジェンスなナンバーとなっています。
最後に
プレイヤーとしてもサウンド・クリエイターとしても才覚のあるホヴァクという人物を見つけられたなら、これを読んでいただいたみなさんの知見はまた少し深まるはずです。
2021年はプログレッシブ・メタル界により新たな躍進が伺えるなと個人的に感じているのですが、Octavisionにはぜひプロジェクトして1,2作品で終わらず長く続いて欲しいと願っています。
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タグ: 米プログレOctavision
関口竜太
東京都出身。ギタリスト、音楽ライター。 14歳でギターを始め、高校卒業と同時にプロ・ギタリスト山口和也氏に師事。 ブログ「イメージは燃える朝焼け」、YouTube「せっちんミュージック」、プログレッシヴ・ロック・プロジェクト「Mind Over Matter」を展開中。2021年から『EURO-ROCK PRESS』にてライター業、書籍『PROG MUSIC Disc Guide』にも執筆にて参加。
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