The Decemberists「The Crane Wife」: アメリカン・フォーク・ロックの人気バンド4th。プログレッシブ・ロックにも開眼した寓話と史実のコンセプト作!

こんにちは、ギタリストの関口です。

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本日はフォーク・ロック・バンドThe Decemberistsの4thアルバムをご紹介します。

The Crane Wife / The Decemberists


Crane Wife

The Decemberists(ザ・ディセンバリスツ)はアメリカのフォーク・ロック、オルタナティブ・ロック・バンド。

来歴


アメリカ・オレゴン州ポートランド。全米一、環境に優しいとされるこの都市でインディー・ロック・バンドTarkioのギター・ボーカルを務めていたColin Meloyは、’99年にバンドを解体すると翌2000年から新たなバンド結成に向け動き出します。

コリンはまずベーシストのNate Queryを誘い、そこからキーボーディストのJenny Conlee、ギター&テルミン奏者のChris Funk、そしてドラマーEzra Holbrookと、人が人を呼ぶ形でThe Decemberistsが結成。2時間でデモテープを作り上げ活動を開始していきます。

結成から2年後の2002年、処女作である『Castaways and Cutouts』をリリースします。

彼らの音楽スタイルを一概に説明することは難しいのですが、そのジャンルはTarkioの流れも汲んだインディー・ロック、オルタナティブ・ロック、フォーク・ロック、さらにはオーケストラル・ポップとも呼ばれます。

アコーディオンやアコースティック・ギター、アップライト・ベースなどのオーガニックかつフォークな楽器を積極的に取り入れたスタイルは温かみがあり、胸にスッと染み込む非常にエッセンシャルなサウンドです。

影響を受けた音楽にはトルコなどの民族音楽、ヨーロッパの地中海サウンドやブリティッシュ・フォークなど幅広な印象。同国同世代のNorfolk & WesternやExplosions in the Sky、The Postal Serviceを挙げてるところなども横の絆が強めで、同ジャンルにてコミュニティを広く持っているんじゃないかと勝手に想像しています。The SmithのボーカルであるMorrisseyへのリスペクトも公言しています。

さて、その後もバンドは2003年に名を冠した『Her Majesty the Decemberists』、2005年に『Picaresque』とコンスタントに作品を発表。この頃にはエズラがバンドを去り現在まで在籍するJohn Moenへと交替しています。

また、この『Picaresque』をきっかけに大手Capitol Recordsとの契約も勝ち取り「インディー」から「メジャー」へと進出。本作『The Crane Wife』は2006年にリリースされた、メジャー初作品。メジャーだけが注目を浴びたのでなく、プログレッシブ・ロックのスタイルが取り入れられたことで、同ジャンルの持つ奥深さが魅力としてプラスされ高い評価を得ています。

アルバム参加メンバー


  • Colin Meloy – vocals, guitar, bouzouki, percussion
  • Chris Funk – guitar, pedal steel, bouzouki, banjo, hammered dulcimer, hurdy-gurdy, percussion, backing vocals
  • Jenny Conlee – piano, Wurlitzer, pump organ, Hammond organ, Moog synthesizer, accordion, glockenspiel, percussion, backing vocals
  • Nate Query – upright bass, electric bass, cello, percussion, backing vocals
  • John Moen – drums, percussion, backing vocals

その他参加ミュージシャン

  • Laura Veirs – duet vocal on “Yankee Bayonet (I Will Be Home Then)”
  • Eyvind Kang – viola, violin
  • Ezra Holbrook – backing vocals
  • Christopher Walla – backing vocals, keyboards
  • Steve Drizos – hand drums

楽曲紹介


  1. The Crane Wife 3
  2. The Island
    Come and See
    The Landlord’s Daughter
    You’ll Not Feel the Drowning
  3. Yankee Bayonet (I Will Be Home Then)
  4. O Valencia!
  5. The Perfect Crime #2
  6. When the War Came
  7. Shankill Butchers
  8. Summersong
  9. The Crane Wife 1 & 2
  10. Sons & Daughters

日本人なら誰もが知っている「鶴の恩返し」、及びシェイクスピアの「テンペスト」が本アルバムのテーマ。その他、実際に起こった戦争や事件など史実に基づいた曲も書かれているのでアルバム全体がファンタジーというわけではなさそうですね。

シンプルながら不思議な雰囲気のジャケットは、アメリカのイラストレーターCarson Ellisによるデザイン。カーソンは主に海外で児童書のデザインをしており、またここでの仕事が2011年にコリンが出版した「Wildwood」という小説の表紙へと繋がっています。

アルバム・タイトルにナンバリングされたオープニング曲#1「The Crane Wife 3」は、12弦ギターとナチュラルで素朴なボーカルから始まります。リズムはシンプルなもので、四つ打ちのキック、メロディも兼ねたベースラインが特徴的です。

#2「The Island」はメドレーと称して3タイトルが組み合わさった12分の組曲。元々フォーク・サウンドのインディー・ロックであった彼らが、本作でプログレとしての評価を得ているのにはこの辺の理由もあるかと思います。

スローテンポにオルタナ・ライクなオルガン・リフとブルースのフィーリングが特徴的な「Come and See」はKing Crimsonや後期Pink Floydの雰囲気。「The Landlord’s Daughter」ではオルガンと情熱的なボーカルが一層の存在感を放つ、テクニカルなシャッフルパートも展開しています。ラスト・パート「You’ll Not Feel the Drowning」はアップなアルペジオがフォーク感を醸します。

#3「Yankee Bayonet (I Will Be Home Then)」はポップなフォーク・ナンバー。アメリカのフォーク・シンガーLaura Veirsとのデュエットとなったこの曲は、Renaissanceなど透明感のある’70年代ブリティッシュ・フォークを思わせてくれます。

#4「O Valencia!」はスペイン語のタイトルに似合わず、’90年代J-POPやOasis、The Beatlesのような日本人には馴染みの深い8ビートのポップ・ロック。

サーフ・ミュージックのギターサウンドにポップなメロディが付随した#5「The Perfect Crime #2」。ひたすら繰り返されるサビに、聴いたあといつの間にか口ずさんでしまう中毒性の高いナンバーとなっています。

#6「When the War Came」は第二次世界大戦中の1941年から1944年まで、900日近くに渡って繰り広げられたレーニングラード包囲戦を歌ったナンバー。変拍子や変則的リズムを取り入れられカオスに聴かせてくれるプログレッシブな一曲です。

#7「Shankill Butchers」はThe Beatlesからの影響も感じるフォークでノスタルジーな印象のナンバー。

シャンキルブッチャーズとは1975年〜82年にかけて活動したナショナリズムのギャングであり、北アイルランドのシャンキルという地域を拠点としていたためその名が付いています。元はアルスター義勇軍の派閥であり、ここでは詳しい内容を省きますが、非常に攻撃的な思想の組織で一方的な拷問や殺戮を行ったことから悪名高く伝えられています。

8曲目は#8「Summersong」。12弦ギターのきらびやかなサウンドと、2000年前後のRed Hot Chili Pepperを思わすオルタナでメランコリーな雰囲気を纏ったナンバー。リズミカルな歌詞にシャッフル・ビートで対応しています。

11分の大作に仕上がった#9「The Crane Wife 1 & 2」。2:20ごろまでは穏やかにこれまでのアコースティックな様子ですが、以降はシャッフル・ビートでノリのいいロック・ソングへと展開。オルガンやエレキ・ギターの活躍も顕著で、中盤のハーモニクスを使ったメロディックなギターソロも特徴的です。

ラスト・ナンバー#10「Sons & Daughters」も概ねThe Decemberistsの音楽の基本的なサウンドで、よりゆったりとしたシャッフルにノスタルジーを感じるフォーク成分で聴かせる一曲です。ラストは過去のドラマー、エズラらを迎えて「Here all the bombs fade away」という歌詞を繰り返す、若干の寂しさを残し終幕します。

最後に


「鶴の恩返し」から学べるのは「見るなのタブー」という教訓で、古くは旧約聖書、ギリシャ神話、ヘブライ神話から始まり、日本の神話にもその考えが広まっていくつもの物語が作られる中「鶴の恩返し」もその一つに数えられています。

基本的には神話や民話の中に息づくモチーフで、異形の者や状況に対し「見てはいけない」という約束を人間が好奇心に負け見てしまい不幸な結果を招く、憎くも愛らしい人間らしさの本質が彼らのサウンドからは伝わってきます。

なお、2017年にはリリース10年を記念したボーナス・ディスク付きデラックス・エディションが登場。またサブスクリプションやダウンロードでは以下の4曲が追加収録されていますのでそちらも是非チェックしてみてください。

  1. After the Bombs
  2. Culling of the Fold
  3. Hurdles Even Here
  4. The Perfect Crime #1
    The Day I Knew You’d Not Come Back

関口竜太

東京都出身。 ​14歳でギターを始め、高校卒業と同時にプロギタリスト山口和也氏に師事。ロックやメタルに加え、ブルース、ファンク、ジャズなど幅広い演奏や音楽理論を学ぶ。 プログレッシブロック/メタルの大ファン。自身が企画するプログレッシブ・ロックプロジェクト「Mind Over Matter」を展開中。

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