A.C.T「Heatwave」: テーマは「破滅」か「再生」か?スウェーデンのポップ・プログレッシブ・バンドが4作連続で送る大作プロジェクト第2弾作品!

こんにちは、ギタリストの関口です。

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本日はA.C.Tの2021年最新EPをご紹介します。

Heatwave / A.C.T


ヒートウェイヴ

A.C.T(アクト)はスウェーデンのプログレッシブ・ロック/メタルバンド。

来歴


1994年、スウェーデン最南部の都市マルメにて誕生したFairylandを前身に持ちます。ここではOla Andersson(Gt)Tomas Erlandsson(Dr)Jerry Sahlin(Key)の3人を中心に活動していたのですが、ボーカルのHerman SamingとベースのPeter Aspが加わったことで、1995年にバンド名をA.C.Tへと改めます。

結成当初からプログレッシブな指向の強い音楽性を提示していましたが、根元は残しつつ徐々にポップな音楽性へと変化。2001年にはトマスが脱退し、新たにThomas Lejon(Dr)が加入しました。

2006年の4thアルバム『Silence』までコンスタントに作品をリリースするもそこからしばらく活動が止まってしまい、次の5thアルバム『Circus Pandemoium』がリリースされたのは2014年のことでした。

とは言え、このアルバムも長いスパンを一向に感じさせませんでした。A.C.Tらしいプログレッシブでポップなハードロックのスタンスを守り、コミカルでドラマ性も含んだコンセプトを設けたことで各メディア、ファンから高い評価を得ることとなりました。

次にバンドが打ち出したのが、フルレンジアルバムとしてのリリースではなく、ハーフタイムでEPのようなアルバムを連続して4枚リリースするというものでした。

そうしてまずは2019年に第一弾『Rebirth』を制作。爽やかな朝の様相を伺わせ、ポップさに加えブリティッシュの風味も取り入れているのが特徴でした。

本作『Heatwave』はシリーズ第二弾として話題沸騰中のアルバム。「毎年リリース」というマニフェストは2枚目にして早くも崩れてしまいましたが、前作と繋がったジャケットも含め、シリーズにかける意気込みを感じられる最新作です!

アルバム参加メンバー


  • Herman Saming – lead vocals
  • Ola Andersson – lead guitar, vocals
  • Jerry Sahlin – keyboards, vocals
  • Peter Asp – bass guitar, synthesizer, percussion
  • Thomas Lejon – drums, percussion

楽曲紹介


  1. Intro
  2. Checked Out
  3. Brother
  4. Dark Clouds
  5. Heatwave
  6. The Breakup

まず#1「Intro」ですが、前作の「The Ruler of the World」同様意味深なSEからスタート。ウインドチャイムやハエ、鳥のさえずりなど前作との関連性がきになるところですが、Euro-Rock Press誌のインタビューによると、#2「Checked Out」をより素早く楽しめるように今回はイントロを分けているんだとか。

そんなリード・トラックの#2は80年代ハードロックや90年代初期のJ-POPテイストをほのかに感じるアレンジが特徴的。リフとコーラスとのユニゾンも実にキャッチーで3:14〜のプログレッシブな展開など短い曲時間にファクターを詰め込むまとめ方の巧さも健在です。

エレピのイントロが特徴的な#3「Brother」。5拍子のリズム・キャラクターはユニークに、曲の雰囲気は若干物憂げ気味ながらサビのコーラスで壮大に聴かせています。#4「Dark Clouds」はそこからさらにムーディーなバラードへと発展。子どもをあやすようなエレピとボーカルのヴァースに、Ⅱ-Ⅴ-Ⅰのジャズ進行が聴き手を容易に感情移入へ導きます。

タイトル・ナンバー#5「Heatwave」は、キーボードのイェリーが持ち込んだアイディアが元となっていてこれは2000年代にすでにA.C.Tのために書かれたもの。少々暗めのテーマが続く本作において、従来のA.C.Tらしい風味が漂っていますね。4分の曲ながら芯のあるヘヴィさとメルヘンな煌びやかさが同居した素晴らしい仕上がりです。

ラストナンバー#6「The Breakup」は3部構成となった中長曲。イントロから香らせるピアノのアルペジオとヴォリューム奏法のギターはA.C.Tらしからぬアダルトな雰囲気に。コーラスは分厚くもアンサンブルは無駄を省きシンプルにすることで、すっきりした音像がよりスピード感をもたらしています。離婚がテーマに歌われているという点においては珍しいかなとも思いましたが、思えば『Circus Pandemonium』がそうだったように人間関係を取り扱うのはこのバンドの十八番でしたね。

ラストは前作同様、軽快なピアノのメロディに時計の音がぶつ切りになるエンディングです。

最後に


最終的に一繋ぎのパズルになる、そんな長期スパンの2ピース目である本作。

考察では「Rebirth」が再生、「Heatwave」が地球温暖化、そして本作ジャケットには世界終末時計(およそ2分前)が描かれていたりと若干の見え隠れ。3ピース目はどんな物語になるのか待ちわびながら、また来年のお楽しみです。

関口竜太

東京都出身。ギタリスト、音楽ライター。 ​14歳でギターを始め、高校卒業と同時にプロ・ギタリスト山口和也氏に師事。 ブログ「イメージは燃える朝焼け」、YouTube「せっちんミュージック」、プログレッシヴ・ロック・プロジェクト「Mind Over Matter」を展開中。2021年から『EURO-ROCK PRESS』にてライター業、書籍『PROG MUSIC Disc Guide』にも執筆にて参加。

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