Need「Norchestrion: A Song for the End」: 神聖な空気を取り入れた注目株のメタルバンド!シリーズ最終作にして大傑作のグリース・プログレ!
by 関口竜太 · 2021-03-03
こんにちは、ギタリストの関口です。
本日はギリシャのバンド、Needの2021年最新作をご紹介します。
Norchestrion: A Song for the End / Need
Norchestrion: A Song for the End
Need(ニード)はギリシャのプログレッシブ・メタルバンド。
来歴
Needはギリシャのアテネを拠点とするプログレッシブ・メタルバンド。
元Deadman’s TaleのギタリストRavayaを中心として2004年に結成されると、2年後の2006年には1stアルバム『The Wisdom Machine』でデビューを果たします。。またこの頃に行なったメンバーチェンジで、バンドはより安定感を高めることになります。
硬派なメタルサウンドにSymphony XやFates Warningのような叙情的アプローチや展開を加えた音楽性で、アルバムでは10分を超える長尺ナンバーも得意としています。
バンドはデビュー以来、コンスタントにアルバムをリリース。2014年の3rdアルバム『Orvam: A Song for Home』がアングラな音楽界隈で話題になると、この年に北アメリカのプログレ・メタル・フェス「Prog Power USA」で賞を獲得。翌年にはその時のライブが映像化され勢いを増します。
2017年には前作『Hegaiamas: A Song for Freedom』をリリース。この作品でこれまで以上の評価を受けたNeedはスウェーデンのEvergreyとダブルヘッドライナーのツアーを行います。このツアーは夏と秋の2シーズンに渡り、追加公演を含め10か国47回のライブで大成功を収めることとなります。
その後もオランダの「Prog Power Europe」に出演したり、Fates WarningやPain Of Salvationらライブでオープニングアクトを務めるなど、近年ノリにノっているというわけです。
最新作『Norchestrion: A Song for the End』はそんな彼らを押し上げた3rd、4thアルバムの続編に当たり、バンドは「最新作にはNeedのシグネチャーとも言えるサウンドがたくさん含まれているよ。そして僕たちの音楽を実験してさらに前進させようとしているんだ」とし、「全てのプログレメタルファンが楽しめるアルバムだと心から感じている」と自信を見せています。
アルバム参加メンバー
- Jon V – Vocals
- Ravaya – Guitar, Vocals
- Anthony Hadjee – Keyboards, Vocals
- Stelios – Drums
- Viktor – Bass
楽曲紹介
- Avia
- Beckethead
- Nemmortal
- Bloodlux
- V.a.d.i.s
- Norchestrion
- Circadian
- Ananke
- Kinwind
#1「Avia」の冒頭はおそらくメロトロンだと思われますが、ノスタルジーなテープエフェクトが印象的。甘いボーカルに「Pave the way and I will follow you there, I’m right behind you」という歌詞が、彼らの思い描くストーリーのプロローグとなっています。なお、タイトルの「Avia」は「神は私の父」を意味するヘブライ語に由来しています。
バンドが入ると、変拍子を交えたタイトなギターリフ、Ray Alderに近しいものを感じるJon Vのボーカルによって展開されるヘヴィなミディアムチューン。先述した通りFates Warningからの影響を随所に感じますが、パワフルな演奏と繊細な楽曲構成が実に見事です。
シンセサイザーのシャワーからトリッキーなギターリフへと流れる#2「Beckethead」。ヴァースはバックのピアノと相まってしっとりと、それ以外では変拍子や、スネアが主導のブレイクとシャウトなど、激しさも兼ね備えた非常にドラマティックな一曲です。ギターソロは、前半は浮遊感のあるアプローチ、後半はメロディアスに。
そして先行シングルの#3「Nemmortal」ですが、こちらは過去作に負けないくらいヘヴィでアグレッシブなナンバーです。ブリティッシュプログレを彷彿とする多重コーラス、DGMを思わせる力強いボーカルのヴァースや随所に根付いた変拍子要素がこのバンドに与えた様々な影響を想像させます。
#4「Bloodlux」は、こちらもヘヴィチューンには変わりないですが、よりDream Theater的表現と説明した方が納得が早そうです。その鍵を握るのはキーボーディストのAnthony Hadjeeで、この曲以外でも本作では随所にJordan Rudessを思わせる音色の数々、リックを散りばめてあります。バンドも含め知名度的にはまだ発展途上ですが、これからフォロワーをガツンと増やしそうな、勢いを感じるプレイヤーですね。
#5「V.a.d.i.s」はこのあとに続く#6「Norchestrion」への導入も兼ねた、ピアノと二人の女性による会話がメイン。本編と思われる#6は9分半に及ぶ大作曲で、本作のタイトルナンバーでもあります。
粒の細かいアルペジオメロディアスなバッキングまで、ギターについては歌心に溢れ終始楽しませてくれるでしょう。そしてそれらをコントロールするリズム隊のタイトな演奏と、柔らかな雰囲気を演出するキーボードとの、バランスのいいアンサンブルが心地いいプログレッシブ・メタルです。ボーカルも変わらずメロウに歌い上げますが、後半ではグロウルも披露するなど表現に幅を持たせています。
冒頭のスラップベースとダウンチューンされたキメで一気に引き込まれる筋肉質なナンバー#7「Circadian」。このバンド、どちらかと言えば王道寄りのプログレメタルやオルタナですが、近年のArch / MatheosやCaligula’s Horse、Circus Maximusらのモダンなメタルサウンドも取り入れているため、その辺りの予備知識があるとより鮮明に楽曲を楽しめると思います。曲は、仮に光を遮断されていても25時間の周期で体は変化を繰り返すサーカディアンリズムを歌っています。
#8「Ananke」は19分弱にも及ぶ叙情エピック。運命や必然性の象徴とされるギリシャ神話の女神アネンケーをテーマに、シタールやパーカッションを用いた非常に幻想的なオープニングから始まります。ここまで彼らの音楽を聴いてくれば、もう間違いなくハマるスーパー・プログレメタルナンバーで、単に荘厳でヘヴィなだけでなくライトなストレートロックも用意されていたりと、ファンが望むプログレ抒情詩のアイコンです。
#8のフェードアウトから、ラストナンバー#9「Kinwind」はジョンによるマンリーなアカペラによって締められています。その歌声は実に神聖的で、神話の多いギリシャで生まれ育ってきたNeedというバンドの何よりのバックグラウンドとなっています。
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関口竜太
東京都出身。ギタリスト、音楽ライター。 14歳でギターを始め、高校卒業と同時にプロ・ギタリスト山口和也氏に師事。 ブログ「イメージは燃える朝焼け」、YouTube「せっちんミュージック」、プログレッシヴ・ロック・プロジェクト「Mind Over Matter」を展開中。2021年から『EURO-ROCK PRESS』にてライター業、書籍『PROG MUSIC Disc Guide』にも執筆にて参加。
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