VUUR「In This Moment We Are Free – Cities」: 煉獄のような熱き女性ボーカル!オランダ産プログレメタルの2017年デビュー作!

こんにちは、ギタリストの関口です。

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本日はオランダのバンドVUURのデビュー作をご紹介します。

In This Moment We Are Free – Cities / VUUR


In This Moment We Are Free – Cities

VUUR(フィアー)はオランダのプログレッシブ・メタルバンド。

来歴


オランダ南部の街オス。そこで活動していたThe Gatheringの女性ボーカリストAnneke van Giersbergenが、自身のメタルバンドを持ちたいと願い実現したプログレメタルバンド。

The Gatheringにも軽く触れると、結成は1989年。当初は男性ボーカルでデスメタルやドゥームメタルといったゴリゴリのメタルバンドでしたが、アネクが加入する3rdアルバム以降、その芯の太い女性ボーカルを生かしたプログレッシブ・ロック方面に移行します。

2007年にバンドの看板であったアネクが脱退して以降は新たなボーカルをオーディションし活動を続けています。

さて、The Gatheringを脱退したアネクですが、家族との時間を大事にしたいという自身の願いを尊重しながら、それも落ち着いた2012年よりソロにて音楽活動を再開します。

ソロでは主にアコースティックギターを片手にとても心に沁みるSSWスタイルにて楽曲を発表。現在まで2枚のアルバム、2021年に3rdアルバムを控えているということだけ明言しておきます。

Anneke van Giersbergenがニューアルバム『The Darkest Skies Are The Brightest』を2021年2月にリリース!

2014年にはオランダのロックオペラプロジェクトAyreonにも参加。そうした活動も減ることで、彼女の内側で沸々とヘヴィメタルに対する欲求が生まれてきます。

それはいつしか自身が主導となった新しいメタルバンドの結成へと目標が向かうことになります。

そして2016年、VUURを結成。オランダ語なので発音は難しいと思いますが、筆者がGoogle翻訳を使い弱々なリスニング力で聞いた限りだと「フィアー」と聞こえました。日本語に訳すると「炎」を意味するそうなので、「Fire」だと思えばその発音にも少なからず納得がいくと思います。

本作『In This Moment We Are Free – Cities』は結成から一年経った2017年にリリースされた、VUURの記念すべきデビュー作。タイトルには日々変わっていく時の中で「今、この瞬間を生きろ」と言った意味が込められています。そして旅が好きなアネクの想いの形か、サブタイトルにCities、そして楽曲ごとに都市も割り当てられています。

VUURはその後ヨーロッパツアーを行い、2019年には大阪で行われたMetal Female Voice Fest Japanにて来日公演も成功させています。

アルバム参加メンバー


  • Anneke van Giersbergen – Vocal
  • Ed Warby – Drums
  • Jord Otto – Guitar
  • Ferry Duijsens – Guitar
  • Johan van Stratum – Bass

楽曲紹介


  1. My Champion – Berlin
  2. Time – Rotterdam
  3. The Martyr And The Saint – Beirut
  4. The Fire – San Francisco
  5. Freedom – Rio
  6. Days Go By – London
  7. Sail Away – Santiago
  8. Valley Of Diamonds – Mexico City
  9. Your Glorious Light Will Shine – Helsinki
  10. Save Me – Istanbul
  11. Reunite! – Paris

オープニングナンバー#1「My Champion – Berlin」から、ヘヴィなリフにメロウなテーマがギターによって奏でられます。アネクのボーカルはメロディアスというよりは割と大味気味で、ヘヴィメタルだからこそポップな志向ではなくそのサウンドに重きを置いている辺りこだわりが伺えます。

6:00〜はテクニカルなギターソロが登場。ツインギター編成となる本バンドですが、主にリードギターを担当するのはJord Otto。アーミングによるアーティキュレーションやモダンなスケールアプローチにも精通した注目のプレイヤーです。

#2「Time – Rotterdam」はイントロからツインギターならではのダークなハーモニーをもたらすギターリフが聴け、それがヴァースにおいても生かされています。作曲はアネクのはずですが、ボーカル主体のワンマンにならずあくまでバンドと、それに溶け込んだ自分というスタンスが感じられるのでそれだけで好印象です。

#3「The Martyr And The Saint – Beirut」は、芯となるドラムサウンドは保ちながらも、ボーカルの繊細かつパワフルな表現の幅を生かした3拍子のナンバー。オスティナート的に動くギターリフもメカニカルで特徴的です。

うねるようなギターリフから幕を開ける#4「The Fire – San Francisco」。イントロやインターバルで聴けるハイトーンのクアイアもエネルギッシュですが、歯切れのいい刻みと3+4拍子を絡めた独特のサビが印象的です。

SSWとしてソロ活動するアネクの魅力を存分に堪能できるバラード#5「Freedom – Rio」。小休憩を挟み勝負どころを感じる#6「Days Go By – London」からは再びパワフルなメタルサウンドで駆け抜けていきます。特にこの曲に関してはイントロからヨードのソロが炸裂するなど熱量が凄まじいです。

先ほど大味気味なボーカルラインと言いましたが、それに関してはアネクの口からNightwishやWithin Temptationの名前が飛び出しているのでその辺のゴシックメタルからの影響は確実にありそうです。

#7「Sail Away – Santiago」はプログレッシブな展開やブレイクを特徴としたメタルナンバー。キーボード不在ながらシンフォニックさを感じられイントロやヴァースでのタイトさとメロディアスで伸びやかなコーラスパートとのギャップが琴線に触れます。

途中エクストリームな轟音に包まれる瞬間があったり、ギタリスト二人によるソロがあったりなど要素の詰め込み具合が6分の域ではありません。

曲に独特のテンション感が存在する#8「Valley Of Diamonds – Mexico City」。タイトでパワフルなアンサンブルは元より、アネクのボーカル・コーラスは力強くも幻想的で幽玄な深い霧を思わせます。

ストリングスによるフェードインから始まる#9「Your Glorious Light Will Shine – Helsinki」。ヴァースではメインボーカルにコーラスがアンサーを歌う掛け合いがゆったりとしたテンポのこの曲をさらにファンタジックなものへ押し上げています。

サブタイトルのイスタンブールらしく、リフにエスニックな雰囲気が込められた#10「Save Me – Istanbul」。サブタイトルでの様々な都市ですが、おそらくはそれまでの活動でアネクが巡ってきた街であり、旅好きの彼女らしい発想です。

ラストナンバーとなる#11「Reunite! – Paris」。クリーンによるコードギターとアネク本来の魅力と言える太く優しいボーカルに癒されるバラード。舞台でも通用しそうなその声と歌唱力を聴けばAyreonに呼ばれたというのも納得です。1:57〜は静寂を打ち破るようにバンドがインしておりあくまでメタルバンドとしてのスタンスを貫いています。

ゴシック系のヘヴィメタルに、変拍子や変則リズムを加えたプログレッシブなアプローチ、そしてテクニカルかつどっしりとした安定感のあるアンサンブルと柔らかでパワフルなアネクのボーカルというオイシイところを詰め込んだ本作。間違いなく全メタルファンに癒しとエキサイト両方を与えていくことでしょう!

関口竜太

東京都出身。ギタリスト、音楽ライター。 ​14歳でギターを始め、高校卒業と同時にプロ・ギタリスト山口和也氏に師事。 ブログ「イメージは燃える朝焼け」、YouTube「せっちんミュージック」、プログレッシヴ・ロック・プロジェクト「Mind Over Matter」を展開中。2021年から『EURO-ROCK PRESS』にてライター業、書籍『PROG MUSIC Disc Guide』にも執筆にて参加。

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