Fates Warning「Long Day Good Night」: 元祖プログレメタルバンドしか勝たん!最新作は哲学的で知性を感じるオトナなメタル作品!

こんにちは、ギタリストの関口です。

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本日はFates Warningの2020年最新作をご紹介します。

Long Day Good Night / Fates Warning


Long Day Good Night

Fates Warning(フェイツ・ワーニング)はアメリカのプログレッシブ・メタルバンド。

来歴


アメリカで1982年に、現在唯一のオリジナルメンバーであるJim Matheosを中心として結成されたヘヴィメタルバンド。初期メンバーにはJohn Arch、Victor Arduini、Joe DiBiase、Steve Zimmermannらがいます。

現在は元RedemptionのRay Alderがボーカル、Armored SaintのJoey Veraがベースを務めている一方で、ジムとジョンは2010年にArch/Matheosとして新たなファミリーバンドを結成するなど近縁なツリーも盛んに枝を伸ばしています。

1986年の3rdアルバム『Awaken the Guardian』にて変則的なリズムやテンポチェンジを含むドラマティックな曲調を提示。このスタイルが後にプログレッシブ・メタルと呼ばれる音楽性へと変化していきます。

元Dream TheaterのMike Portnoyは「プログレッシブ・メタルを作り出したのはFWであった」という発言もしており、カナダのRushやイギリスのIron Maiden、アメリカのMetallicaに並びプログレッシブ・メタルという音楽ジャンルを築く重要なファクターになっていきます。

さて11月にリリースとなるニューアルバム『Long Day Good Night』ですが、アルバムリリースは前作『Theories of Flight』以来実に4年ぶり。

90〜00年代は実験的な方向性を提示していたバンドも、2010年を境に本来のヘヴィメタルバンドとしての原点回帰を行い、サポートギターにMichael Abdowを加えたことでデビュー当時のツインギター構成を復活させました。さらに本作では、一部Porcupine TreeやThe Pinnaole Thiefで知られるドラマーGavin Harrisonも参加しており、近年のヘヴィなサウンドと過去通った芸術性の高い音楽へと発展を目指しました。

フロントマンであるジムとレイはアルバム制作中ほぼ毎日を共に過ごしたと語っており、上手くいったこともそうでなかったことも全てを共有したその日々は「これまでのアルバムがそうだったように、何も簡単なことはなかった」という言葉に集約されています。

アルバム参加メンバー


Ray Alder – Vocal
Jim Matheos – Guitar
Joey Vera – Bass
Bobby Jarzombek – Drums
Frank Aresti – Guitar

その他参加ミュージシャン

Mike Abdow – Guitar solo
Gavin Harrison (Porcupine Tree/The Pineapple Thief) – Drums on #6,9

楽曲紹介


  1. The Destination Onward
  2. Shuttered World
  3. Alone We Walk
  4. Now Comes the Rain
  5. The Way Home
  6. Under the Sun
  7. Scars
  8. Begin Again
  9. When Snow Falls
  10. Liar
  11. Glass Houses
  12. The Longest Shadow of the Day
  13. The Last Song

アトモスフィアなシンセサイザーのフェードとマテオスのヘヴィなギターリフから幕を開ける#1「The Destination Onward」。3分ごろまでアルダーのエピック的ボーカルが聴かせ以降はパワフルなメタルサウンドで果敢に攻めていきます。正統派メタルを踏襲していながらクリーンアルペジオを挟んだり、印象的なアルペジオのトップからサビに入ったりなど繊細かつキャッチーな仕上がりになっています。

続く#2「Shuttered World」は冒頭からツインギターにタイトなリフを住み分けたイントロが特徴。伸びやかなサビのボーカリゼーションと、どことなくジャムスタンダード曲である「Sunny」を彷彿とさせる馴染みやすいメロディアスさを感じます。

変拍子を交えたリフや各尺が印象的な#3「Alone We Walk」。ヘヴィなギター以外にもPink Floydの風味を漂わすロータリーサウンドが混じっていたり、ワウかファズか今にも爆発しそうな轟音が裏の方で鳴っていたりと立体的な楽曲に仕上がっています。

#4「Now Comes the Rain」は先行配信されたナンバーの一つ。ミディアムテンポのバラードで泣き叫びそうなディストーションギターと切ないクリーンギターとのギャップが琴線に触れます。サビにおいてもメインボーカルとコーラスの掛け合いがあるなど叙情的な要素をふんだんに盛り込んでいるのがポイント。

ハーモニクスとアルペジオで始まる#5「The Way Home」。ヘヴィな印象の強いFates Warningですが、この曲のように繊細なタッチとニュアンスを持ったクリーンギターのアプローチも非常に得意で、もし彼らをゴリゴリの古参メタルバンドだと認識しているなら改めなくてはいけません。マイケルのアーティキュレーション豊かなギターソロにも注目。

そして#6「Under the Sun」。ここまで3曲連続でバラードが続いていきます。古びたストリングスのサウンドをイントロに、取り分けメロディアスで親しみやすいメタルバラード像を構築していきます。三者三様、楽器選びも様々で、同じカテゴリーでも飽きの来ないアルバム構築になっているのはさすがです。ドラムはハリソン。

モードを切り替え#7「Scars」からは再び王道なプログレッシブ・メタルナンバーへと進んでいきます。このあたりはFates Warningでなくとも同ジャンルのファンたちには長く親しまれているサウンドですね。

#8「Begin Again」はマテオスのアコギ&クリーンギター、そしてヴェラのベースがファンクかつグルーヴィなテーマとなって曲全体を支えています。個人的にアルバムの中でも好きな一曲で、ペンタライクなギターソロも漢気あってグッド!

#9「When Snow Falls」ではアルペジオにリバースディレイをかけ、さらにエレクトロなドラムやパーカッションも加えた独特のグルーヴ感があるナンバー。ゲストで参加しているThe Pineapple ThiefやSteven Wilson風の知的さを伺わせます。

#10「Liar」#11「Glass Houses」は共に王道プログレメタルなナンバー。粘りのあるディストーションサウンドにメロディック歌メロが絡む#10、スピード感のあるリフと手数が多めのドラムがパワフルに引っ張っていく#11、という具合にアルバムの後半にありがちなたるみを引き締めていくシンプルながら重要な役割を担っています

アルバムで唯一10分を超える長尺ナンバー#12「The Longest Shadow of the Day」。前半はインストとして機能、後半はボーカルパートになっているのが最大の特徴で、単純な楽曲構成では語れない革新的要素を含んだ曲です。前半はジャズ/フュージョンの香りがあるギターやベースも特徴でLiquid Tension Experimentも彷彿とさせました。後半は重ためなリズムに哀愁たっぷりのギター、終始丁寧に歌い上げるアルダーのボーカルすらアンサンブルの一部と化しています。上品なギターソロとフェードアウトしていく余韻も切なく、芸術展の高い一曲です。

その余韻を受け継ぎしっとりとアルバムを締める#13「The Last Song」がラスト。ナイロンギターによるサウンドはクラシックな印象を受けますが、マイナー調の楽曲にしてブライトに響くリードがとても綺麗。通算13枚目のアルバム『Long Day Good Night』の13曲目が「The Last Song」なところに若干意味深なものを感じます。もちろん変な妄想はそこまでに留めておきますが。

全体的にゴシックかつアーティスティックな作風に仕上がっている本作。Redemptionのようなゴリゴリのパワーメタルを希望する人には合わない可能性がありますが、知的でプログレ本来のアンニュイな雰囲気をメタルサウンドと共に味わいたい人には至極の時間となるでしょう。

関口竜太

東京都出身。ギタリスト、音楽ライター。 ​14歳でギターを始め、高校卒業と同時にプロ・ギタリスト山口和也氏に師事。 ブログ「イメージは燃える朝焼け」、YouTube「せっちんミュージック」、プログレッシヴ・ロック・プロジェクト「Mind Over Matter」を展開中。2021年から『EURO-ROCK PRESS』にてライター業、書籍『PROG MUSIC Disc Guide』にも執筆にて参加。

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