Okyr「Premorbid Intelligence」: まるで映画音楽みたいな最新プログレがこれだ!ブラジル出身、「歴史の音」を意味するテクニカルメタルバンドがデビュー!

こんにちは、ギタリストの関口です。

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本日はブラジルの新生プログレバンドOkyrのデビュー作をご紹介します。

Premorbid Intelligence / Okyr


Premorbid Intelligence

Okyr(オーキア)はブラジルのプログレッシブ・メタルバンド。

来歴


ブラジル南部の都市クリチバで2017年、ギタリストTiago AlainとベーシストJean Eliasによってスタートしたプログレッシブ・メタルバンド。

結成当初はDream Theaterのカヴァーバンドとして活動していたようですが、同じくらい影響を受けたバンドにSymphony X、Pain Of Salvation、Rush、Opeth、Hakenなどを挙げており、生粋のプログレメタルニューカマーだということを認識させます。

いずれこの二人は、それらのバックグラウンドと自らの演奏スタイルを投影したオリジナル曲の制作へと乗り出します。

それはすなわち、純粋なプログレッシブ・ロックをベースにブラジルのポピュラー音楽であったり、ジャズ、ラテンなど様々なエッセンスを投入していくことを意味しています。もちろんDream Theaterをカヴァーするほどの演奏技術の高さもオリジナリティに不可欠な要素です。

こうした曲作りの過程でボーカルにはCarlos Rocha、ドラムにValmir Pêgasという二人の若き才能があるミュージシャンも加入。本作『Premorbid Intelligence』はそんなバンドの記念すべき1stアルバムとなります。

なお、バンド名のOkyrは、ブラジルのサンパウロ州以南を中心とした先住民カインガン族が使用していた言語で「歴史の音(The sound of history)」を意味します。発音は恐縮ながら曖昧なので、ここではオーキアと呼ばせていただきます。

アルバム参加メンバー


  • Carlos Rocha – Vocal
  • Jean Elias – Bass
  • Tiago Alain – Guitar
  • Valmir Pêgas – Drums

楽曲紹介


  1. Apathetic
  2. Janus-Faced
  3. Man in White
  4. Calm Down
  5. Satyriasis
  6. Bearer of the Pain
  7. Panacea
  8. Neurosis (And the Attraction Theory)

オープニングナンバー#1「Apathetic」から全編を通し、怒涛の展開を有するインストパートを含んだテクニカルプログレを堪能できます。冒頭のグロッケンはハリーポッターのようなファンタジックさを感じさせる他、ボーカル及びヴァースの入りのリフは「My Sharona」風ですね。

#2「Janus-Faced」は、Symphony Xを思わせる不穏なファンタジックさのあるイントロが特徴的。Okyrにおいては不意のテンポチェンジや転調など、前後の流れを無視した展開の忙しさが常時聴かれます。これに振り回されトリップするのが一つ楽しみ方として提示でき、この変態ぶりが徐々に癖になって来ます。ボーカルのカルロスは時にアンニュイに、時にデスボイスで感情的にこの複雑な曲の中で存在感を見せつけます。

#3「Man in White」はイントロからポリリズムを使用したフリーキーでダークな雰囲気を持つ一曲。初期DT(1st〜2nd辺り)の香りを感じさせながら、ロックオペラも思わせる不穏なヴァースなど、メカニカルな楽曲にも豊かな表情をうかがわせます。サビなどはそのままJames LaBrieに歌わせても似合いそうです。

#4「Calm Down」はドラマティックに語りかけるミドルテンポのナンバー。これまでの無駄にピロピロしたりとテクニカルに走らないアレンジからは、The Flower Kingsなど一部のネオプログレッシブ・ロックの風味が感じられます。彼らなりに玄人的な方向性を目指した結果でしょうか、懐かしい気分にさせてくれます。

#5「Satyriasis」はアルバムリリース前にいち早く発表された1stシングルで、YesやRushを思わせるライトなナンバーになっています。

チアゴのギターサウンドは若干ミドルに寄った印象、アクティブ特有のハイがあるベースに、メタルと言えど重すぎないドラムがこのバンドの基本サウンド。故に、分析すると常に変拍子だったり頭をずらすポリリズムがあったりと複雑な曲たちも胃もたれせず楽しむことができます。

ドラムの高速フィルからヘヴィなリフを展開する#6「Bearer of the Pain」。3分すぎまでは終始淡々としたワルツにより曲は進行するのですが、本編はその後、3:30のギターソロから始まるインストパートと言っていいでしょう。ジャズのような進行に南米を思わせすパーカッション、複雑なテンポチェンジを繰り返すOkyrならではのスキルです。

15分弱の大作となった#7「Panacea」。この記事のタイトルに「映画音楽」と出した以上この曲にも触れておかなくてはなりません。イントロからストリングスを含んだ壮大なオーケストラで、#1のハリーポッター同様映画さながらのシンフォニックを感じられると思います。

3分間オーケストレーションに浸ったところでバンドが登場。ギター、ベース、ピアノによるメタル系リフのユニゾンや、手数が多く、展開していくごとにカウベルなどが追加されていくドラムからはMike Portnoyがイニシアチブを握っていたころのDTの影響を強く感じますね。歌が入るのは曲が6分をすぎてのことですが、ボーカルパートはアンビエントとしての役割があるからか結構空気です。「Metropolis」風にインストパートでの超絶なやり取りを楽しむ楽曲だと思います。

そしてラストとなる#8「Neurosis (And the Attraction Theory)」。メガデスを思わせるスピード感溢れるスラッシュメタルで、ボーカルのカルロスももろDave Mustaineを意識しています。ですがそんな曲でもキラキラした上物のキーボードやプログレッシブかつジャジーな曲展開などOkyrらしいアプローチが満載。

個人的にはボーナストラック的にこの曲を捉えていますが最後まで力を抜かない、大変エネルギッシュな作品でした!

関口竜太

東京都出身。ギタリスト、音楽ライター。 ​14歳でギターを始め、高校卒業と同時にプロ・ギタリスト山口和也氏に師事。 ブログ「イメージは燃える朝焼け」、YouTube「せっちんミュージック」、プログレッシヴ・ロック・プロジェクト「Mind Over Matter」を展開中。2021年から『EURO-ROCK PRESS』にてライター業、書籍『PROG MUSIC Disc Guide』にも執筆にて参加。

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