DGM「Tragic Separation」: イタリア産パワーメタルクインテット、4年ぶりの最新作!独自のアイデンティティを突き詰めた2020年屈指のプログレメタル作品!
by 関口竜太 · 2020-10-13
こんにちは、ギタリストの関口です。
本日はDGMの2020年最新作をご紹介します。
Tragic Separation / DGM
DGM(ディージーエム)は、イタリアのプログレッシブ・メタルバンド。
来歴
DGMが結成されたのは1994年。オリジナルメンバーのギタリストDiego Reali、ドラマーGianfranco Tassella、キーボーディストMaurizio Pariottiの3人からイニシャルを取ってこのバンド名が付けられました。
1995年には初代ボーカルであるLuciano Regoliが加入、翌1996年にはベーシストにIngo Schwartzも加わり自主制作のミニアルバムを経て1997年に1stアルバム『Change Direction』にてデビューを飾ります。
しかしながらメンバー変遷が激しく、オリジナルメンバーも脱退していく中で元々パワーメタルとしての側面が強かったバンドに新たな感触をもたらしたのが2003年加入のキーボーディストFabio Sanges。
彼の在籍期間は2年と短いものでしたが、非常にフックの効いたメロディとキーボードへのフィーチャーしたアレンジが徐々にバンド内で幅を効かせるようになります。
そんなファビオの脱退と同時期に当たる2006年に最後のオリジナルメンバーであったディエゴも脱退、新たにキーボーディストEmanuele CasaliとギタリストSimone Mularoniを迎え現体制に近づきます。
さて、メンバーチェンジは行われど人気は徐々に高まっていきます。
99年にリリースされた2ndアルバム『Wing of Time』では、雑誌「Burrn!」による独占取材を機に母国イタリアだけでなく日本でも人気を高め、初週に4000枚を売り上げるほど広く支持されます。
2016年8月には9thアルバム『The Passage』をリリースし、イタリアのメタルバンドElvenkingを引き連れたジャパンツアーが同年11月に行われました。
本作『Tragic Separation』はそんな彼らの4年ぶりとなる最新作。2008年に現ボーカルMarco Basileが加入してから安定したメンバーで続くバンドが新たに駒を一つ進めることとなりました。
アルバム参加メンバー
- Simone Mularoni – Guitar
- Marco Basile – Vocal
- Andrea Arcangeli – Bass
- Fabio Costantino – Drums
- Emanuele Casali – Keyboard
楽曲紹介
- Flesh and Blood
- Surrender
- Fate
- Hope
- Tragic Separation
- Stranded
- Land of Sorrow
- Silence
- Turn Back Time
- Curtain
人生において、選択の追求とその結果を歌ったコンセプト作である本作のオープニングナンバーは#1「Flesh and Blood」。
SEや電子音が冒頭に流れますが、ここからリヴァースする形で怒涛のテクニカルリフと壮大なテーマによるイントロが提示されます。いわゆるパワーメタルやスラッシュメタルとしての姿勢は崩さず、DGMの武器であるメロディアスなボーカルラインとそれを担うマルコの抜群の歌唱力で攻めていきます。
4:30〜のインストパートはプログレメタル然としたシーケンスのユニゾンフレーズからギターとキーボードのソロを回し、再度クラシカルなユニゾンパートも盛り込んだリードのオンパレードになっています。
グラムロック的なライトさが魅力の#2「Surrender」。開放弦を使った特徴的なリフに突き抜けるサビが痛快で気持ちいいナンバーです。
イントロでDT的ニュアンスを感じる#3「Fate」。スピード感溢れるヴァースとは別にブリッジ〜サビでは伸びやかな印象を受けるのですが、ブリッジでは7拍子に変換していたりと細かなアレンジが嬉しいです。
#4「Hope」は本作の中でもある種トリッキーな類にあるナンバー。
デジタルなアプローチに加え、リフでアクセントに使われるハーモニクスなどリスナーの耳を飽きさせない工夫が盛り込まれています。エモーショナルなボーカルラインやシモーネのテクニカルソロなど聴きどころ多数です。
アルバム中盤に配置されたタイトルナンバー#5「Tragic Separation」。全体的に中尺程度のアベレージで並ぶDGMの楽曲群ですが、一応この曲が#1と並んで最も長い曲。
イントロはピアノとストリングスによる可憐でドラマティックさを感じさせる進行が次の展開を期待させます。『Fire Garden』期のSteve Vaiを思わせるリフに#2に並ぶライトなボーカルソングとして外せない一曲です。
#6「Stranded」は#5の勢いのまま突入していくスラッシュビートなメタルナンバー。メロディックなボーカルラインとは裏腹に終始タイトなアスリート的ナンバーで、休みなく踏み続けられるツーバスにポリリズムを使ったリフやフックの効いたテクニカルリックの数々、当然のように確保されたソロタイムなど良い意味で聴く側の体力が求められます。
#7「Land of Sorrow」はデジタルシーケンスと緩急のついたエモーショナルな展開が特徴と言えるミドルナンバー。メロハードを意識させる分厚さマシマシなコーラスも個人的に好みだし、ギターソロも一番好きですね。
#8「Silence」は冒頭のドラムフィルに代表されるように、ミドルテンポながらタイトに詰めたバンドサウンドが盤石な一曲。
スラッシュに畳み掛ける#9「Turn Back Time」ではザクザクと刻むギターサウンドにドラマティックな楽曲展開、表現力豊かなコーラスパートなど集大成と呼べる仕上がりになっています。
ラストとなる#10「Curtain」は2分ほどの小曲インストで、時計の針の音にヴィンテージを感じさせるキーボードサウンド、そしてクランチ気味のギターアルペジオによって締めるアンビエントとなっています。
日本盤にはボーナストラックとして「Land of Sorrow」のオーケストラバージョンを収録。変拍子など所謂「プログレロック」としての要素が少ない分、王道なそれらのエッセンスを肌で感じるのは難しいのですが、ヘヴィメタルに多くを求めたい人がこのDGMのアイデンティティに行き着いてくれれば、きっとどハマりすること間違いなしだと思います。
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関口竜太
東京都出身。ギタリスト、音楽ライター。 14歳でギターを始め、高校卒業と同時にプロ・ギタリスト山口和也氏に師事。 ブログ「イメージは燃える朝焼け」、YouTube「せっちんミュージック」、プログレッシヴ・ロック・プロジェクト「Mind Over Matter」を展開中。2021年から『EURO-ROCK PRESS』にてライター業、書籍『PROG MUSIC Disc Guide』にも執筆にて参加。
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