Teramaze「I Wonder」: あえてギターボーカルへと踏み切った12年目の挑戦!豪州産叙情派プログレメタルバンドの最新作!

こんにちは、ギタリストの関口です。

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本日はTeramazeの2020年最新作をご紹介します。

I Wonder / Teramaze


I Wonder

Teramaze(テラメイズ)はオーストラリアのプログレッシブ・メタルバンド。

来歴


オーストラリアでも名高い観光地として人気の大都市メルボルン。その街で1993年にギタリストのDean Wellsによって結成されたのがこのTeramaze

MetallicaやTool、Panteraといったスラッシュメタルからの影響を受け精力的に活動を続けますが、2006年に解散の憂き目に遭います

多くのバンドはその時点で過去の歴史として葬られてしまうのですが、Teramazeはその後2008年に再結成、2012年にアルバム『Anhedonia』で再びのデビューを飾ります。

当初は解散前同様、ダウンチューニングを活かしたスラッシュメタルとオーストラリアのエモ系メタルバンドKarnivoolを足したようなゴシックな音楽性でしたが、2ndアルバムからはDream Theaterを思わせる正統派のプログレッシブ・メタルとして活躍

叙情性に富んだ楽曲と分厚いハーモニーはもちろん、タイトでしなやかな演奏によるエピックはここ数年のプログレッシブ・メタルバンドでも抜きん出ています。

第二期Teramazeには過去に二人のボーカリストが在籍。

1stアルバム『Anhedonia』と2019年に出た4thアルバム『Are We Soldiers』ではBrett Rerekura、2nd『Esoteric Symbolism』と3rd『Her Halo』でプログレッシブな方向性を示したNathan Peacheyという二者なわけですが、今回はそのどちらでもありません。

本作『I Wonder』ではギタリストのディーンがメインボーカルを務め、さらにゲストとしてアトランタのクリスチャン・メタルバンドを牽引するJason Wisdomもうち1曲で参加。

色々と複雑な事情はおありでしょうが、リーダーのディーンが「個人的に長い時間をかけ作り込みたいと思っていたアルバムだ」「Teramazeのファンなら気にいること間違いなし」と自信を持って言っている以上期待が高まります。

アルバム参加メンバー


  • Dean Wells – Guitar, Vocal
  • Andrew Cameron – Bass
  • Nick Ross – Drums
  • Chris Zoupa – Guitar

ゲストミュージシャン

  • Jason Wisdom (Death Therapy) – Vocal on “A Deep State of Awake”

楽曲紹介


  1. Ocean Floor
  2. Only Daylight
  3. Lake 401
  4. A Deep State of Awake
  5. Here To Watch You
  6. Sleeping Man
  7. Run
  8. Idle Hands/The Devil’s Workshop
  9. This Is Not A Drill
  10. I Wonder

雑踏とクリーンギターのテーマから幕を開ける#1「Ocean Floor」。エモコア系の音作りと、ぎっしり詰まった音圧が非常に現代の流れを捉えていて、シンプルなバンド構成ながら後にデジタルへの開眼も見込める新境地です。

続いて#2「Only Daylight」。こちらは従来の彼らを体現したメロディアスなプログレッシブ・メタルです。過去二人のボーカルに比べてディーンの歌も全然アリで、ナチュラルな音域とお得意の分厚いコーラスがよりバンドサウンドに馴染んでいる気がします。

冒頭からシンセとギターの絡みがファンタジックである#3「Lake 401」。サビの哀愁漂うメロラインとファルセットが沁みる陰鬱で美しいバラードです。ナチュラルトーンで控えめなギターソロにも大人な姿勢が見受けられます。

#4「A Deep State of Awake」はゲストボーカルJason Wisdomが参加した、唯一の外部ボーカル曲。セクシーで繊細なクリーントーンとパワフルなデスボイスのスイッチが惚れそうなほど見事で、これまでのTeramazeのスタイルを折衷したようなプログレメタル曲。

表現力豊かなボーカルに負けないほどワイドレンジな展開とバンドの武器であるタイトな演奏を堪能できる8分間は、彼らが1stシングルに選んだのも納得なバンド史に残る名曲です。

#5「Here To Watch You」は淡々としたリズム隊をベースにアコースティックギター、そしてディーンのポストロック的なボーカルが特徴のナンバー。アンニュイなヴァースとエモに集中したサビとのギャップが楽しめる一曲で、Steven Wilsonに代表されるのような“インテリジェンスでクールな灼熱”を感じます。

冒頭からシーケンスなイントロが特徴のナンバー#6「Sleeping Man」。Circus Maximusに近い叙情性を有したナンバーで、2nd,3rdファンである私としてはあの頃のTeramazeが帰ってきた!という感じ。ディーンはギタリストとしても注目すべき人物で、基礎の堅いプレイスタイルがこのギターソロから感じ取れると思います。

ピアノとアコースティックなバンドサウンドを基調にした#8「Run」を抜け、#7「Idle Hands/The Devil’s Workshop」は2部構成になった本作随一のプログレソング。

前半は、ダウンチューニングから繰り出されるヘヴィなマシンガンピッキングと突き抜けるクリーンボイスがたまらなく切ないパートです。Dream Theater的ではありながらやはりエモメタル大国オーストラリアの特性をうまく消化していますね。後半は一度ピアノバラードにトーンダウンしてから、再びオープニングのテーマに戻っています。

こちらも8分を超える長尺となった#9「This Is Not A Drill」。#9とはまた違う、Djentにタッチした音作りでモダンなメタルアプローチをしているナンバーです。同じオーストラリア出身のCaligula’s Horseにも近いかもしれません。しかしながら、テクニカル&パワーでゴリ押すCHに比べあくまで正統派で叙情的メロディを大事にするTeramazeの姿勢はこれからも評価されていくべきだと思います。

ラストとなるタイトルトラック#10「I Wonder」。弾き語りでもいけそうなほど歌を大事にしたミディアムバラードで、アコースティックギターにフルートのインターバルなどほのかに70年代の香りもあって好感度が高いです。オススメとしては5:00〜からシンフォニック&プログレメタルなソロへと発展していく展開で、John Petrucciを彷彿とさせる名アクトです。

2nd,3rdで王道路線のプログレメタルに踏み切るも4thでは再びゴシックにも回帰したTeramaze。ファンとしてはそこからわずか1年半弱でリリースされた本作へも注目度は高かったわけですが、非常にモダニズムで流行に沿った音作りやアレンジで固めているのが印象的でした。

関口竜太

東京都出身。ギタリスト、音楽ライター。 ​14歳でギターを始め、高校卒業と同時にプロ・ギタリスト山口和也氏に師事。 ブログ「イメージは燃える朝焼け」、YouTube「せっちんミュージック」、プログレッシヴ・ロック・プロジェクト「Mind Over Matter」を展開中。2021年から『EURO-ROCK PRESS』にてライター業、書籍『PROG MUSIC Disc Guide』にも執筆にて参加。

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