Rikard Sjöblom’s Gungfly「Alone Together」: スウェーデンのシンフォニック職人ソロプロジェクト2020年作!英米欧問わず国境を越えるスーパートラディショナル!
by 関口竜太 · 2020-09-29
こんにちは、ギタリストの関口です。
本日はRikard Sjoblom’s Gungflyの最新作をご紹介します。
Alone Together / Rikard Sjöblom’s Gungfly
Alone Together (Ltd. CD Digipak)
Rikard Sjöblom’s Gungfly(リカルド・シェーブロムズ・ガンフライ)はスウェーデンのプログレッシブ・ロックバンド。
来歴
スウェーデンのストックホルムを中心に、2001年〜2016年まで活動していたシンフォニック・ロックバンドBeardfishのリーダーRikard Sjöblomが、2009年ごろからスタートさせたソロ名義プロジェクトバンド。
このBeardfishは、ベーシストRobert HansenとドラマーMagnus Östgrenという北欧の実力派ミュージシャンを従え、Frank ZappaやKing Crimsonなどの前衛音楽やGentle Giantと言った王道なプログレッシブ・ロックバンドからの影響を受け継ぎ活動していました。
そんなバンド活動と並行してリカルドが新たに立ち上げたGungflyは、このBeardfishのハンセン他にドラムPetter Diamant、その兄弟であるRasmus Diamantを始めとするオーケストラパートも招いたソロ活動ならではの王道シンフォニックロックになりました。
2009年のデビュー作『Please Be Quiet』から始まり現在まで5枚のアルバムをリリース。最新作である本作『Alone Together』ではゲスト枠をディアマント兄弟に絞り、20年に迫るプログレキャリアでさらにクラシカルなスタイルの追求に挑戦しています。
アルバム参加メンバー
- Rikard Sjöblom – Vocal, Guitar, Keyboard
- Petter Diamant – Drums
- Rasmus Diamant – Bass
楽曲紹介
- Traveler
- Happy Somewhere in Between
- Clean as a Whistle
- Alone Together
- From Afar
- On the Shoulders of Giants
- Grove Thoughts (Bonus Track)
- Shoulder Variations (Bonus Track)
オープニングナンバーである#1「Traveler」は立ち上がりの早いリカルドのボーカルから始まります。ドライブ感のあるリズム隊にThe Flower Kingsを思わせるエッジの効いたギターサウンド、そこへオルガンや多重コーラスなどのシンフォニックロックとしてのエッセンスが混じるクラシカルな構築プログレです。
フリーキーなギターリフが特徴的な#2「Happy Somewhere in Between」。イントロからKansasのようなライトな風情を感じさせるナンバーで緻密な楽曲構築とリカルドの自由気ままなボーカルスタイルが独特な捻りが癖になる一曲です。
#3「Clean as a Whistle」はアコースティックギターを基調としたナンバー。イギリスのMagentaを思わせる煌びやかなフォークサウンドにリカルドの透き通ったファルセットが響く上質な仕上がりです。リカルドはマルチに演奏するので楽器数は多いのですが、根本はスリーピーススタイルなため、すっきりとしたプロダクションも聴きやすさを裏付けるポイントだと思います。
タイトルナンバーである#4「Alone Together」。若干ブーミーですが哀愁漂うリードギターのイントロから始まるドラマティックな9分の長尺曲です。YesやEmerson, Lake & Palmerを思わせる突飛な展開やテクニカルな演奏を楽しむことができます。
#5「From Afar」は70年代のアコースティックナンバーとでも言うべき弾き語り楽曲。3分弱の小曲ではありますが、リカルドという人物のマルチな才能が楽器演奏だけでなくボーカルの表現力にも宿っているのを確認できるという意味で聴き飛ばせないナンバーです。
本編ラストとなる14分超えの大作曲#6「On the Shoulders of Giants」。ロータリーなギターサウンドリフはThe Beatlesを思わせ、そこから先述のMagentaやThe Flower Kingsら現代ネオプログレの王道とも言える豪華なシンフォニックロックへと展開していきます。掴み所の難しいボーカルのメロディラインはこのプロジェクトの本質とも言えますが、そのラインをキーボードでもなぞるため謎にメロディックに感じるという不思議な空気を感じます。
楽曲はそんなフリーキーかつタイトなロックパート、ピアノとコーラスが美しいバラード、そして70年代プログレの特徴を捉えたジャム的なインストパートを経て大団円と繋がる凝縮された組曲になっています。
そしてボーナストラックとなる#7「Grove Thoughts」と#8「Shoulder Variations」はいずれもインスト曲。#7は幽玄なピアノに浮遊感のあるコードアプローチとフリージャズ的なリズム隊とで織りなす実験的アトモスフィア。#8はメロトロンを始めSAW波形のシンセサイザーなどキーボディストとしてのリカルドの創作意欲を汲んだトラッドプログレなナンバーです。
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タグ: シンフォニック・ロックRikard Sjoblom's Gungfly北欧プログレ
関口竜太
東京都出身。ギタリスト、音楽ライター。 14歳でギターを始め、高校卒業と同時にプロ・ギタリスト山口和也氏に師事。 ブログ「イメージは燃える朝焼け」、YouTube「せっちんミュージック」、プログレッシヴ・ロック・プロジェクト「Mind Over Matter」を展開中。2021年から『EURO-ROCK PRESS』にてライター業、書籍『PROG MUSIC Disc Guide』にも執筆にて参加。
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