Pain Of Salvation「Panther」: デジタルとバンドサウンドの融合!狂おしいほど破壊的で美しいスウェーデン産プログレメタルの最新作!

こんにちは、ギタリストの関口です。

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本日はPain Of Salvationの2020年最新作をご紹介します。

Panther / Pain Of Salvation


Panther

Pain Of Salvation(ペイン・オブ・サルヴェイション)はスウェーデンのプログレッシブ・ロック/メタルバンド。

来歴


スウェーデン南部の都市エスキルストゥーナで1984年、当時若干11歳のボーカルDaniel Gildenlöwによって結成されたRealityというバンドがその前身。

Realityはスウェーデンの音楽コンテストで最年少バンドとして出場し、そこでダニエルがベストボーカリストに輝くなど早くから存在感を見せつけます。

その後、ベースにMeshuggahでも知られるGustaf Hielm、ドラムにJohan Langellが加入し、1991年にバンド名をPain Of Salvationに改名します。

様々な音楽からの影響が融合されたシアトリカル(物語性)なアルバムや楽曲構築を持ち、King CrimsonやGentle Giantと言ったプログレッシブ・ロックや、PanteraやRammstein、White Zombieと言ったインダストリアルでモダンなヘヴィメタルの両面を受け継いだスタイルで、1997年に1stアルバム『Entropia』にてデビュー。

メンバー変遷は比較的激しく、これまでに何人ものメンバーが加入と脱退を繰り返してきましたが、2012年辺りから安定期に入っています。

しかし2014年にダニエルが食中毒、並びに生命の危険を伴う細菌に感染。治療のため入院を余儀なくされバンドは一時休止、ちょうどそのころTransatlanticのツアーサポートも予定していましたがそれにも欠席せざるを得なくなりました。

無事に回復を果たし2017年、10thアルバム『In The Passing Light Of Day』にてバンドは完全復活を遂げます。その前作『Falling Home』が過去曲のアコースティックアレンジアルバムであるためこの作品が6年ぶりの実質的ニューアルバムとなりました。

あれから3年。

脱退したギタリストRagnar Zolbergの代わりに前職であったJohan Hallgrenがバンド復帰。プロデューサーにIn Flames、Mashuggah、Devin Townsendで知られるDaniel Bergstrand氏を迎え、ダニエルとの協力タッグで制作されたのが本作『Panther』です。

アルバム参加メンバー


  • Daniel Gildenlöw – Lead vocal
  • Johan Hallgren – Guitar, Vocal
  • Léo Margarit  – Drums, Vocal
  • Daniel Karlsson – Keyboard, Guitar, Vocal
  • Gustaf Hielm – Bass, Vocal

楽曲紹介


  1. Accelerator
  2. Unfuture
  3. Restless Boy
  4. Wait
  5. Keen to Fault
  6. Fur
  7. Panther
  8. Species
  9. Icon

#1「Accelerator」はPain Of Salvationならではのタイトでヘヴィな勢いに、エレクトロなシンセサイザーがインパクトを残すアルバムでも重要なオープニングナンバー。この曲でアルバムの大まかな方向性やサウンドを確立することができます。Opeth的な荒廃感も出しながらフィジカルで狂気も見え隠れするMVは芸術性も高いですね。

#2「Unfuture」スライドギターのブルージィなサウンドと、生々しい有機ドラムが特徴的なヘヴィナンバー。重く激しいビートとサビでの叫びがライブを想定させます。

2ndシングルとなった#3「Restless Boy」。ボコーダーを使った印象的なイントロや、近年のプログレシーンで確実にその流行が来ているデジタリズムなコンテンポラリー楽曲。とめどなく流れる時間とスローモーションな世界観を切り取ったロードムービー的な作品です。

サビでは重たい3連と引き裂くような6連のスイッチがさらにその緩急あるスピード感をコントロールし、MVと曲が一体となっているセンスの卓越ぶりに脱帽の一言。

#4「Wait」は美しいピアノのテーマとオリエンタルなアコースティックギター前に出した7分のバラード曲。コード感たっぷりのメロディアスなサビの他に機械的なSEも聴こえてきます。

本作でもテクニカルな印象を受ける#5「Keen to Fault」。7/8をベースにしたシーケンシャルテーマはタイトに、サビやシンセリードの場面では解放的に聴かせ、二つの力をコントロールしています。

#6「Fur」はマンドリンを使用した1分強のインターバル。続くタイトルナンバー#7「Panther」はループ的なドラムにダニエルのラップを採用したSteven Wilsonを代表とする近代プログレの様式。インダストリアルなサウンドに切ないサビが絡む見事な仕事です!

エキゾチックなギターにメロディックなヴァースから始まる#8「Species」。ギターのテーマとユニゾンするようなボーカルラインは宗教的な厳かさもありながら親近感の持てるサウンド。2:15〜はPain Of Salvationらしい、ダークでヘヴィなバンドサウンドにダニエルのシャウトが響きます。

13分半の大作となったラストナンバー#9「Icon」。粒立ちのいいピアノとベースのテーマ、ノイジーなギターサウンドのアルペジオなど、それらがテーマを繰り返し重ねていくことで徐々に厚みと迫力を生み出すKing Crimson的なマテリアルサウンド。バラードを貴重にしたメランコリックな方向性で、7:55〜はJohan Hallgrenによるスライドギターのソロ、そこへクアイアコーラスが混じりPink Floyd的アンビエントの大団円へと収束していきます。

デジタライズかつインダストリアルなサウンドと生々しいバンドとしての演奏がうまく絡んだ美しく破壊力のある一枚です。「多角的なサウンドになる」とインタビューで言っていたダニエルの、その言葉通りの作品だと思います!

※一部不確定な文章を訂正しました。(9/6)

関口竜太

東京都出身。ギタリスト、音楽ライター。 ​14歳でギターを始め、高校卒業と同時にプロ・ギタリスト山口和也氏に師事。 ブログ「イメージは燃える朝焼け」、YouTube「せっちんミュージック」、プログレッシヴ・ロック・プロジェクト「Mind Over Matter」を展開中。2021年から『EURO-ROCK PRESS』にてライター業、書籍『PROG MUSIC Disc Guide』にも執筆にて参加。

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