John Petrucci「Terminal Velocity」: 米PROG METALスーパーギタリストの2ndソロアルバム!15年の時を経て彼を「変えたもの」そして「変わらなかったもの」。

こんにちは、ギタリストの関口です。

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本日はJohn Petrucciの2ndソロアルバムをご紹介します。

Terminal Velocity / John Petrucci


Terminal Velocity(輸入盤)

John Petrucci(ジョン・ペトルーシ)はアメリカのミュージシャン。ギタリスト及び作曲家。

来歴


アメリカのプログレッシブ・メタルバンドDream Theaterのギタリストとして活躍し、世界的に見ても同ジャンルを代表する存在となっているJohn Petrucci

Dream Theaterを本業とする以外、他で別のプロジェクトに参加したり自らファミリーバンドを結成したりということが少ないペトルーシですが、そんな彼が2005年にウェブサイト限定でリリースしたのが前作『Suspended Animation』

当時Dream Theater側では『Octavarium』がプログレッシブ・ロックの伝統を継承した正統派作品として評価を受けていたころで、バンドとしても盤石なほどノリに乗っていた時期だと思います。

ギターインスト作としてはKiko Loureiroの『No Gravity』とも時期が被っており、Joe SatorianiとSteve Vaiが主催するスーパーギタリストのジャムツアー「G3」にペトルーシが参加するという、一連の「ギターインストブーム」もできていたように感じます。

そのG3の舞台でペトルーシのバックを務めていたのがベーシストDave LaRue、そして当時の盟友Mike Portnoy

ポートノイに関してはもはや説明不要なので省きますが、デイヴは1970年にSteve MorseとRod Morgensteinが中心となり結成されたジャズロック・インストバンドDixie Dregsで、1988年から29年間務めた実力派のベーシスト。

2011年ごろからはアメリカのマルチミュージシャンNeal MorseとポートノイによるニューバンドFlying Colorsが結成され、そこにデイヴも合流しています。このデイヴに関して、ペトルーシはG3ライブでの功績を高く評価しています。

John Petrucci family2

15年ぶりに再開したこのトリオによって本作『Terminal Velocity』は制作されました。

2020年3月、COVID-19によるパンデミックが兆候を見せ始めるこの時期に、Dream Theaterの『The Astonishing』や『Distance Over Time』でエンジニアを務めたJames ‘Jimmy T’ Meslinを招き本格始動。

6月頭には本作最初の告知がSNS上で発表されますが、直前にキーボーディストのJordan RudessがLiquid Tension Experimentの再結成を仄めかしたことで、これが相乗効果を生みファンの注目度が一気に上昇しました。

アルバム参加メンバー


  • John Petrucci – Guitar
  • Mike Portnoy – Drums
  • Dave LaRue – Bass

楽曲紹介


  1. Terminal Velocity
  2. The Oddfather
  3. Happy Song
  4. Gemini
  5. Out of The Blue
  6. Glassy-Eyed Zombies
  7. The Way Things Fall
  8. Snake in My Boot
  9. Temple of Circadia

アルバムは全9曲。極端な長尺ナンバーは本作では見られず、いずれも5〜7分程度の中長楽曲が並びます。

モダングラフィックで硬派な印象を与えるジャケットとは裏腹に、意外にもライトで前向きな活気ある作品に仕上がったのが最大の特徴で、奇しくも現在の世界情勢と対比を置いた形となります。

#1「Terminal Velocity」は先行でMVが公開されたアルバムのリードトラックで、特にオープニングらしいモチーフが満載な一曲。1stアルバム収録の「Glasgow Kiss」を思わせながらも、開放弦を使ったリックやRushを彷彿とさせる爽やかなロックテイストのギターインストです。

続く#2「The Oddfather」はドラマティックな展開を多分に含んだロックナンバー。ビンテージDream Theaterの雰囲気がありながらも、近年のよりタイトになったペトルーシのプレイと堅実なリズム隊が支える非常に充実した一曲です。特に3:50〜から訪れるロングスパンのタッピングプレイは秀逸です。

#3「Happy Song」はペトルーシの影響の一旦でもあるパンクテイストが現れたナンバー。Avenged SevenfoldやGreen Dayのようなハードコアな雰囲気を持ちながら、Joe Satorianiのような王道なインストギターロックを披露。

#4「Gemini」は、序盤から圧倒的な高速パッセージとプログレッションで攻め立てるハイポテンシャルな曲。それこそKiko Loureiroのようでもあるし、中盤では叙情的なソロからフラメンコ風な展開にも持ち込む高難易度の楽曲です。

タイトルの「Gemini」とは一般的には双子座のことを指すのですが、その語源はローマ神話に登場する双子の英雄から取られており、動と静が切り替わる二面性のあるナンバーとなっています。

ブルージーでアダルトな雰囲気のある#5「Out of The Blue」。イントロのオクターブはJimi Hendrixの「Villanova Junction」からインスピレーションを受けているらしく、後半に進むにつれ頂上までクレッシェンドしていく構成はSteve Vaiの「Tender Surrender」を彷彿とさせます。単なるバラードに終わらない劇的でロマンティックな仕上がりはギターインスト史上に残る名アクトです。

#6「Glassy-Eyed Zombies」は本作でも抜きん出たプログレッシブ・メタルナンバーの一つ。フランジャーをかませた7拍子のリフはシンコペーションを混ぜることでより複雑に展開。後半に向かうに連れテンポアップしていくセンスは元より、各所に飛び出す弦跳びフレーズや歯切れのいい刻み、ブレイクでのトリッキーなアプローチなどペトルーシのアイコンを堪能できます。

アルバムの終盤で登場する#7「The Way Things Fall」。Rushのような爽やかなコードリフに本作一キャッチーなメロディラインを添えたアップビートナンバー。比較的堅実な仕事に務めているポートノイのドラムもフィルに金物を混ぜたりしてご機嫌な様子。ポップながら7分半あり、後半ではロングランのギターソロも聴くことができます。

#8「Snake in My Boot」は4つ打ちのキックからVan HalenやJohn Sykesのようなブラウンサウンドのリフが飛び出す一曲。タイトルからもWhitesnakeを思わすこの曲は、とにかくそのアンプサウンドを堪能して欲しいです。80年代を生きたギターキッズのアンセムとも取れる、ソロアルバムの醍醐味となっています。

ラストナンバー#9「Temple of Circadia」はペトルーシの代表格とも言える7弦のヘヴィチューン。『A Dramatic Turn of Events』収録の「Outcry」や前作の「Jaw of Life」と言ったファンが少なからず望むプログレメタルのアイコンで、ヘヴィなテーマと強烈なスウィープラインの応酬が最後まで期待を裏切らない内容となっています。

最後に


この3ヶ月間、アルバムの発表からポートノイとの邂逅までテンションが高いまま楽しませてくれた本作『Terminal Velocity』。

ポートノイのドラムは想像よりも堅実で、ペトルーシ独自の曲を立てるかなり正統派なギターインストアルバムとなりました。

2020年の現在、Dream Theaterを弾ける人は以前より世界中に溢れています。YouTubeなど動画配信サイトが充実し、これまで以上に楽曲やソロの分析が為されてきたのもその要因ですね。

またPeripheryのMisha MansoorやJason Richardson、Tosin Abasiと言ったニューウェーブのプログレメタルギタリストが多数登場。これがある意味でペトルーシを超える域の超絶プレイイングを披露したことで、相対的にDream Theaterのハードルが下がったとも言えます。

となれば、レジェンドギタリストJohn Petrucciとして今後絶対的な評価に繋がるのは、ピッキングのタッチであったりトーンであったり、説得力のある音だと思います。事実、本作を聴いていると、タッピングやスウィープの技術と同様に単なるペンタトニックフレーズですらペトルーシ節を感じるほどでした。

ポートノイがDream Theaterを脱退して10年、バンドもアップデートを続けていくうちにその音楽性はかなりシンプルに、しかし上辺だけのテクニカルとは違う芯の部分で音楽的になったと思います。

逆に、無駄がなくなり洗練された副作用として、楽曲に以前のような寄り道やアソビがなくなったというのも個人的には感じます。前作で言えば「Wishful Thinking」において、穏やかなバラードを披露した後、その余韻でこれでもかというくらい弾きまくるハイライトがありました。

今思えばあれって蛇足だったよねと言えるのですが、当時はあの無駄こそが必要だったんじゃないかと思います。

ペトルーシのギターは華がありながらもボーカルを前提としているため、インスト作品としては相変わらず若干物足りなさを感じてしまう部分もあります。しかし、前作に比べるとその余白は大分狭まったのではないでしょうか。

その理由を頭で突き詰めたとき、やはりペトルーシ個人の人間性が深まったこととその音に説得力が増したこと、この2点に尽きると思うんですよね。

Dream Theaterのインスト部分だけを抜き出したような1stアルバムもスペシャルな扱いでしたが、本作はもっと根本的で王道なギターインストロックとして盤石な一枚だと思います。ここまで明確に進化が見えるのはやっぱりミュージシャンとしての才能でしょう。

でも、調子に乗ってさっさか3rdアルバムとか行かずに、また5年10年熟してから是非その時のプレイイングを聴いてみたいです。

関口竜太

東京都出身。 ​14歳でギターを始め、高校卒業と同時にプロギタリスト山口和也氏に師事。ロックやメタルに加え、ブルース、ファンク、ジャズなど幅広い演奏や音楽理論を学ぶ。 プログレッシブロック/メタルの大ファン。自身が企画するプログレッシブ・ロックプロジェクト「Mind Over Matter」を展開中。

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