Paralydium「Worlds Beyond」: DTから影響を受けた北欧産パワーメタルの新人バンド!日本人好みなメロディックさと大胆なシンフォニックアレンジで期待大!
by 関口竜太 · 2020-08-04
こんにちは、ギタリストの関口です。
本日はスウェーデンの新生バンドParalydiumのデビューアルバムをご紹介します。
Worlds Beyond / Paralydium
Paralydium(パラリディウム)はスウェーデンのプログレッシブメタルバンド。
来歴
スウェーデンのストックホルムで2015年、ギタリストのJohn Bergによって結成されたParalydiumは、元はジョン個人の制作プロジェクトでした。
同年には自主制作EP『The Paralydium Project』をリリースし、Dream TheaterやSymphony X、Pagan’s Mindなどのバンドから受けた影響をアウトプットした、メロディックでテクニカルなスタイルを押し出していきます。
結成から長らくジョン個人としての活動で、一時はParalydium Projectとも呼ばれていましたが、近年ではドラムのGeorg Härnsten、ベースのJonathan Olsson、キーボードのMikael Blanc、そしてボーカルMikael Sehlinらの協力を経てメンバーが固まって来たご様子。
本作『Worlds Beyond』は大手Frontier Musicとの契約を決めリリースされる、そんな彼らのデビューアルバムとなっています。
アルバム参加メンバー
- John Berg – Guitar
- Georg Egg – Drums
- Jonathan Olsson – Bass
- Mikael Blanc – Keyboard
- Mikael Sehlin – Vocal
楽曲紹介
- Enter Paralydium
- Within The Sphere
- Synergy
- Finding The Paragon
- Crystal Of Infinity
- Awakening
- The Source
- Into Divinity
- Seeker Of The Light
#1「Enter Paralydium」はアルバムのオープニングを飾る小曲。映画音楽のように大仰しいテーマながら、スリリングなストリングスとギターが高揚感を誘います。
派手なオープニングから繋がるように迎えてくれる#2「Within The Sphere」はGalneryusやFirewindなどで見られる典型的なパワーメタル曲。ミカエルのボーカルはきれい目の声質で、ダミを活かした力強さもある一方、メロディアスなサビに代表される滑らかな質感が魅力的です。
キラキラとしたオリエンタルな導入が特徴の#3「Synergy」。二転三転見せるイントロからタイトなリフのヴァースに繋がっていきます。
開放的でメロディアスなサビも引き続き健在で、7分を超える長尺ながらあっさりと聴けてしまいます。インターバルではベースソロからスパニッシュなアコースティックソロを披露するなどプレイの幅も広いようです。
#4「Finding The Paragon」はシーケンスとジェントなキメから疾走していくメタルナンバー。アレンジはシンプルながらギターソロとキーボードソロの掛け合いが堪能できます。特にキーボーディストブランクの使用する音色はJames LaBrieなどでその腕を振るうMatt Guillory的でありここでもDT系列からの影響が伺えますね。
先行シングルとなった#5「Crystal Of Infinity」。穏やかなシンセ+ピアノの頭からハーモナイズされたツインギター風のリフへ繋がっていくイントロが特徴。サビ前では大胆にブレイクを設けたりして楽曲に対しポップな考え方を持っている点は日本人好みかと思います。
#6「Awakening」はこの後に続く#7「The Source」へ向けた小曲で、#1を彷彿とするストリングスにギターのアルペジオが加わったナンバー。
そして#7はこちらも先行シングルで、80年代プログレハードを思わすメタルナンバー。基本的なスタンスはこれまでと変わっていないものの、2:30〜のリフとボーカルがシンクロするリズミカルなパートもあったりしてフックが効きまくりです。間奏では変拍子リフとテクニカルなソロを交えたプログレッシブな一面を披露しています。
#8「Into Divinity」はPink Floydを思わせるギターのアルペジオからブレイクで組み上げた刻みのイントロへ。演奏はヘヴィではありますが、キーボードの音色がトランスやダンスミュージックのようであったり、ミカエルがファルセットを使用していたりとかなり感傷的。
本作の中ではとりわけオシャレな部類なので、今後この感じの楽曲が増えることにも期待したいです。
ラストソングとなる#9「Seeker Of The Light」。イントロではピアノが、ヴァースではコーラスを交えたボーカルが繊細に針を進めますが、スタイルはこれまでと大きく変わりません。終始メロディアスなボーカルラインと心地よさを追求したアンサンブルとの絡み、ジョンとブランクの鮮やかなソロなどここまでParalydiumを聴いてこれた人なら容易に受け入れることができるでしょう。
5:45以降のクロージングはアコースティックギターにストリングスのシンフォニーになっていて、イントロでの映画的オープニングとすり合わせたような締め方となっています。
総括すると非常にストレートな作品で、プログレッシブ・メタルのカテゴライズではあるもののその本質はパワーメタルにありというところですね。プログレッシブなアプローチもありますがそこを見せびらかしていくタイプではありません。
故にDream Theaterからの影響と期待してがっつり運動会的なものを期待するとちょっと退屈かも。
しかしながら単にメタル作品と消化するにはもったいないくらいハイクオリティの原石で、今後5年10年続いていくならより複雑に切り込んだ作品も出て来そう。そんな期待値大のデビューアルバムでした!
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タグ: シンフォニック・ロックプログレッシブ・メタルParalydium北欧プログレ
関口竜太
東京都出身。ギタリスト、音楽ライター。 14歳でギターを始め、高校卒業と同時にプロ・ギタリスト山口和也氏に師事。 ブログ「イメージは燃える朝焼け」、YouTube「せっちんミュージック」、プログレッシヴ・ロック・プロジェクト「Mind Over Matter」を展開中。2021年から『EURO-ROCK PRESS』にてライター業、書籍『PROG MUSIC Disc Guide』にも執筆にて参加。
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