Haken「Virus」: 英プログレメタル界に蔓延する新たなパンデミック。前作からの続編にして人の精神にえぐりこむモダンメタルの最新作が傑作すぎた!

こんにちは、ギタリストの関口です。

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本日はようやくリリースされたHakenの2020年最新アルバムをご紹介します。

Virus / Haken


Virus

Haken(ヘイケン)はイギリスのプログレッシブ・メタルバンド。

来歴


2007年にロンドンで結成されたプログレッシブ・メタルバンドHaken

初期メンバーはマルチプレイヤーであるRichard Henshall、ギタリストMatthew Marshall、ボーカルRoss Jenningsの3人に加え、ドラムRaymond Hearne、ベースThomas MacLean、キーボードPeter Jonesの6人。

70年代UKの伝統的なプログレのエッセンスDream TheaterやMetallicaなどのヘヴィメタルサウンドを併せ持つスタイルで、アプローチは王道でありながら卓越したセンスと演奏力を武器とするモダンメタルバンドです。

2013年からは、プログレッシブ音楽の名門Inside Out Recordsと契約を交わしています。

また、この契約までにマーシャル、ジョーンズ、マックレーンが脱退し、Charlie Griffiths(Gt)Diego Tejeida(Key)Conner Green(Ba)が加入、現在のラインナップとなっています。

2018年にリリースされた5thアルバム『Vector』。コンセプト主義であるHakenが打ち出したのは心を媒介にしたウイルスのような概念で、これにはフロイト理論やさまざまな心理分析、哲学が応用されました。

そしてこのアルバムの制作と同時期に作られていた楽曲から続編的位置付けとしてリリースされたのが本作『Virus』

これについては前作のブックレットからすでに「ウイルスは広がっていく」という風な走り書きで示唆がされていた他、ジャケットや歌詞カードのデザインなどでも多くの共通項が見受けられます。

アルバムは奇しくも新型コロナウイルス(COVID-19)の世界的パンデミックと重なり、当初の2020年6月5日から最終的に2020年7月24日まで発売が延期される事態となりました。

アルバム参加メンバー


  • Ross Jennings – Vocal
  • Charlie Griffiths – Guitar
  • Richard Henshall – Guitar
  • Conner Green – Bass
  • Raymond Hearne – Drums
  • Diego Tejeida – Keyboard

ゲストミュージシャン

  • Pete Jones – Keyboard on #6-10, Programming on #4
  • Pete Rinaldi – Acoustic Guitar on #1, #6-10
  • Adam ‘Nolly’ Getgood – Bass Solo on #6-10

楽曲紹介


  1. Posthetic
  2. Invasion
  3. Carousel
  4. The Strain
  5. Canary Yellow
  6. Messiah Complex i: Ivory Tower
  7. Messiah Complex ii: A Glutton for Punishment
  8. Messiah Complex iii: Marigold
  9. Messiah Complex iv: The Sect
  10. Messiah Complex v: Ectobius Rex
  11. Only Stars

まずはアルバムリリースと共に発表されたシングル#1「Posthetic」

本作をトップリードする最新曲でアルバムの中でも最も早くに完成したナンバー。80年代のスラッシュメタルや90年代のDream Theaterが提示したようなブラストなドラムとシンセサイザーの絡みが秀逸。ヘヴィなリフの中にはクアイアのようなシンセストリングスがアクセントに使われています。

変拍子を交えたオルタナティブでコアなヴァースからメロディックで疾走感溢れるサビへの突入はOpethやSlipknot的でもありますね。

#2「Invasion」は実にHakenらしいミディアムテンポのメタルナンバー。

ゴワゴワとしたシンセベースのパルスに、ロス特有のリズミカルな導入が雰囲気を出します。デジタルに不安を煽るギミックや、Djentっぽく歯切れのいいギターリフがレイヤーのようにそれらに重なり、まさしくウイルスが侵略してくるような造りになっている点が非常に巧み

3:00〜のダークなヘヴィリフではアクセントにしているディスコードが非常事態を知らせるサイレンのようにも聞こえ、唸りを上げるギターソロも媒介となる宿主の静かな悲鳴のように表現されています。

単体では本作一の長さとなった#3「Carousel」

爽やかでクリーンに始まるデュオから#2の世界観を引き継ぐような攻撃的なサウンドへ変化していきます。3rdアルバムの『The Mountain』の頃のようなサウンド構築であるこの曲は、そこから8年経っても変わらないバンドの芯の部分を今一度証明したと言っていいでしょう。

メタリックでプログレッシブに進行するバンドとメロディアスかつハイトーンでそれを受けるボーカルとの「コントラストと一体感の周期」が噛み合うタイミングに緻密さが感じられます。

#4「The Strain」はプログレらしいアンニュイな空気を纏った一曲ですが、この次に続く#5「Canary Yellow」への布石のようにも思えます。

#5は本作の2ndシングルにも選ばれた曲で、Steven Wilson系列の叙情的なバラード。ロスの切ないファルセットとラスサビに向けて少しずつ雰囲気を増長させていく構成は、静かな空気の中にも確実に進行していく一種のドラマ性を感じますし個人的にもお気に入りの一曲。

MVではジャケットに描かれたファージ型の建造物が爆発を起こし人々を巻き込むといったストーリーになっていて、爆風で人形がドロドロに溶けていくラストなど、我々日本人感覚では広島の原爆を思い起こさせますね。

アルバムのハイライトとも言える大型の組曲#6〜10「Messiah Complex」

5部構成17分に及ぶ大作に仕上がっていますが、メタリック抒情詩である5拍子の#6「i: Ivory Tower」やプログレッシブ・メタル然とした高速リフとブレイクのタイトさが決め手となる#7「ii: A Glutton for Punishment」などに常に全力疾走。

本作のミックスにはこの曲のベースソロでも参加している元PeripheryのAdam ‘Nolly’ Getgoodが担当していることもあって磨いた鉱石のようにどこまでも無駄がなく美しいタイトさを実現しています。

#8「iii: Marigold」の冒頭では一旦はメランコリーに落ち着くものの、そこから#9「iv: The Sect」まで目まぐるしく展開していく怒涛のインターバル。特に#8のラストなんかはリズムチェンジの考え方がMike Portnoy的だし、#9へ繋いだあとのボーカルもGentle Giantなど古き70年代のユニークな不気味さがあってグッド。1:22辺りで聴けるゲーム的なサウンドとブラストビートとのギャップもえげつないです。

最終章の#10「v: Ectobius Rex」では5度のフラットを効果的に使いダークさをさらに演出。リチャードのアグレッシブなギターソロなど曲としてのクオリティは保ちつつ、最後は#1でのメロディを伏線回収するような形で壮大に締めています。

そしてこの#6〜#10ですが、『The Mountain』に収録されている「Cockroach King」のセルフオマージュがふんだんに仕込まれています。厳密には#10でのメロや#9のマドリガーレコーラス、それと1:48〜のコミカルなインターバルのブレイクなど。歌詞カードにはひっくり返ったゴキブリも描かれてるのでそこは間違いないと思われます。

ラストとなる#11「Only Stars」はウィルスによってついに媒介が滅ぼされ朽ちていくその後悔と最期を歌った曲で、2分程度の小曲ではあるものロスの果てしなく物悲しいボーカルが余韻として響きます。

以上11曲。前作『Vector』の続編という位置付けではありますが個人的には『Verctor』も聴きやすく、それでいてエキサイトできる傑作に仕上がっていると思います。

日本盤の発売が8月下旬とこれまた延びており、Amazonで輸入盤を買うにも検閲などで大分待つので、僕はフォロワーさんに教えていただいて大手レコードショップのオンラインから買うことに成功しました。

ストリーミングでも配信もされていますのでお手軽に触れたい方はそちらもどうぞ。2020年のプログレメタル作品としてマストの一枚だと思います。

関口竜太

東京都出身。 ​14歳でギターを始め、高校卒業と同時にプロギタリスト山口和也氏に師事。ロックやメタルに加え、ブルース、ファンク、ジャズなど幅広い演奏や音楽理論を学ぶ。 プログレッシブロック/メタルの大ファン。自身が企画するプログレッシブ・ロックプロジェクト「Mind Over Matter」を展開中。

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