Virtual Symmetry「Exoverse」: DTから影響を受けたスイス・イタリアンのプログレメタルルーキー最新作!23分の大作を含む叙情的コンセプトアルバム!
by 関口竜太 · 2020-07-29
こんにちは、ギタリストの関口です。
本日ご紹介するのはVirtual Symmetryの最新作『Exoverse』です。それではさっそく見ていきましょう。
Exoverse / Virtual Symmetry
Virtual Symmetry(バーチャル・シンメトリー)はスイス/イタリアのプログレッシブ・メタルバンド。
来歴
2009年にギタリストValerio Æsir Villa(ヴァレリオ・エシル・ヴィーヤ)のソロプロジェクトとして結成されたVirtual Symmetryは、隣国同士にあるスイス&イタリアンなバンドとして近年注目を浴びています。
Dream Theaterからの影響を強く受け、長尺傾向にあるエピックソングにテクニカルな演奏スタイル、そしてボーカルのMarco Pastorino(マルコ・パストリーノ)から繰り出されるエクストリームなハイトーンを強力な武器として持ち合わせています。
結成した当初からアイディアにあった構想を元に、2016年、1stアルバムとなる『Message from Eternity』をリリースしデビュー。
このアルバムにはDream TheaterのJordan RudessやイタリアのメタルシンガーAlessandro Del Vecchio、サックス奏者のRuben Paganelliなどゲストも多数参加。リリース前にEvergreyとDream Theaterのダブルヘッドショウにてデビューライブを行なっていたことから、鳴り物入りのデビューとなりました。
本作『Exoverse』はそこから実に4年ぶりとなる彼らの2ndアルバム。ゲストには先述のバンドから大先輩であるTom S. EnglundやJordan Rudess、そしてPeter GabrielやPaul Gilbertバンドでも知られるドラマーThomas Langが参加した人脈豊かな一枚となっています。
なお本作にて待望の日本デビューも果たしているため、今後さらなる注目も期待されます。
アルバム参加メンバー
- Marco Pastorino – Vocal
- Valerio Æsir Villa – Guitar
- Mark Bravi – Keyboards
- Alessandro Poppale – Bass
- Alfonso Mocerino – Drums
その他参加ミュージシャン
- Thomas Lang – Drums, Percussion
- Tom S. Englund – Vocal on #5
- Jordan Rudess – Keyboards on #1, #7, #8
- Simone Campete – Orchestra on #3, #6, #8
- Ruben Paganelli – Saxophone on #8
- Jennifer Vargas – Vocal on #6
- NuVoices Project – Choir on #8
楽曲紹介
- Entropia
- XI
- Odyssey
- Vortex
- Exodus
- Remember
- Safe
- Exoverse Suite
#1「Entropia」は壮大なコンセプト作を迎える6分のオープニングインスト。足元に沈殿するシンセベースとエレピのテーマから、エクストリームなヘヴィリフへ導入していきます。Dream Theaterからの影響というのも納得のフィルやキメ、シアトリカルなリードギターなど、少々長さはあるものの安定した演奏力を印象付ける一曲です。
ベースの導入からさらなる章の開幕を思わせる#2「XI」。10分を超えるプログレメタルナンバーで、ギターリフにユニゾンした隠し味のピアノや効果的に場面を切り替える転調などこの手のジャンルのセオリーをしっかり押さえています。どちらかというとDGMやSpheric Universe Experienceらしさがありますが攻撃的なボーカルは特にVirtual Symmetryのアイデンティティと言えそうです。
続く#3「Odyssey」はイントロから、アコースティックギターとストリングによる抒情的な演出が美しいナンバー。溜めて絞り出すようなマルコのボーカルは、曲の雰囲気もあってEduardo Falaschi在籍時のAngraにも近いです。3:57~は歌の高揚感に釣られるようにエモーショナルなギターソロ、そしてスピード感を増す形で#4「Vortex」へと繋がっていきます。
そんな#4はエンジン全開のまま疾走していくメタルナンバーですが、これを聴いてみると確かに歌い方や節の回し方にJames LaBrieを感じることができます。ただオマージュのような安易な影響ではなく、しっかりとオペラ的な表現力という部分に反映されているので素晴らしいです。
#5「Exodus」はMVが作られた先行シングル的扱いの一曲。EvergreyのTom S. Englundをゲストに迎えたナンバーで、メロディックなミドルバラードにプログレメタルシーンにおける二大ボーカリストによるデュオは鳥肌ものです。
それと、今回ミックス/マスタリングにはドイツのメタルオペラグループAvantasiaを担当したことで知られるSascha PaethとMichael “Miro” Rodenbergのコンビが就任しており、6:40~聴けるオーケストラパートをはじめ、壮大さが売りのVirtual Symmetryの音楽と相性もバッチリですね!
続く#6「Remember」は#5からの流れを崩さないシンフォニックバラード。ゲスト参加した女性ボーカルJennifer Vargasのゴスペルや前回に引き続き参加したRuben Paganelliのサックスソロなど感情の高ぶりも頂点です。聴きようによってはPink Floydっぽさも感じるかも。
#7「Safe」は9分半の長尺ながら、イントロから晴れ晴れとしたハードロックチューンを聴かせています。ちょっとクサメロなメロディラインもAlfonso Mocerinoによるご機嫌なドラミングもメタラーには漏れなく気持ちいいはず。3:50~はロングインターバルによるプログレッシブパート。キメや展開の多さはもちろん5:10~はJordan Rudessのキーボードソロも聴けたりラストはMark Braviの美しいピアノで締められていたりと2ndアルバムの新人バンドとは思えない貫録です。
そして最終曲#8「Exoverse Suite」はタイトルナンバーにふさわしい23分の大作曲。近年、プログレメタルと言ってもこの規模の長尺曲にはなかなか出会わなかったのでそれだけで嬉しいです笑
Dream Theaterをインフルエンスに持つと言うだけのことはあって、「Black Clouds & Silver Linings」や「Awake」期のころのようなヘヴィネスライクに畳み掛けるイントロからすでにその片鱗が見え隠れしているし、映画音楽のように壮大で大仰しいエピックプログレを展開しています。
ボーカルはイントロ明けのヴァースから感情たっぷりに歌い上げていて、将来的にDevin TownsendとかAyreonとかに呼ばれるんじゃないかなというくらいの気概。
サウンド的には古き良きプログレを継承ではなくモダン寄りで、ユーロメタルに北欧のネオプログレなんかも素材として入ってくるイメージですね。大々的なテーマなども用意されていますが、もっとGenesisとかEL&Pのそれを期待していると意外と何もなく終わってしまうかも。
それでも近年コンパクトな傾向にあるプログレ界で20分を超える大作を作ってくれるのは応援したい部類ですし、すでに自分たちのスタイルを見つけ大物のゲストも呼ぶオープンな姿勢はかなり好印象。
良し悪しは分かれると思いますがクオリティとしては申し分ないレベルなのでまずは聴いてほしいと思います!
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タグ: プログレッシブ・メタル瑞プログレJordan RudessVirtual Symmetry伊プログレ
関口竜太
東京都出身。ギタリスト、音楽ライター。 14歳でギターを始め、高校卒業と同時にプロ・ギタリスト山口和也氏に師事。 ブログ「イメージは燃える朝焼け」、YouTube「せっちんミュージック」、プログレッシヴ・ロック・プロジェクト「Mind Over Matter」を展開中。2021年から『EURO-ROCK PRESS』にてライター業、書籍『PROG MUSIC Disc Guide』にも執筆にて参加。
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