Protest The Hero「Fortress」: ハードコアから進化したカナダ産プログレメタル!母国でチャート1位を獲得した盤石なる2ndアルバム!
by 関口竜太 · 2020-07-17
こんにちは、ギタリストの関口です。
本日はカナダのバンドProtest The Hero、2008年作2ndアルバムをご紹介します!
Fortress / Protest The Hero
Protest The Hero(プロテスト・ザ・ヒーロー)はカナダのプログレッシブ・メタルバンド。
来歴
結成は1999年。
カナダ・オンタリオ州、トロントの近郊にある都市ホイットビーにて、若干14歳の少年5人組がHappy Go Luckyというバンド名でスタートさせたことに始まります。
彼らのサウンドは元々ハードコアパンクで、政治的メッセージが強く、特にカナダのバンドPropagandhiから影響を受けていました。
2002年と2003年にインディーレーベルよりそれぞれ『The Search for Truth』と『A Calculated Use of Sound』という2枚のEPをリリース。これがきっかけでカリフォルニアのレーベルVagrant Recordsの目に留まり正式なデビューが決定しバンド名をProtest The Heroに変更しました。
2005年にリリースされた1stアルバム『Kezia』において、彼らはそれまでのハードコアパンクなルーツに加えメタルコア、マス、プログレッシブ・メタルへと開眼。音楽的な勢いに加え型破りな構成や変拍子、そしてテクニカルな演奏技術を武器に人気を勝ち取ることとなります。
本作『Fortress』は2008年に発表された2ndアルバム。DragonforceのVadim Pruzhanovをゲストに迎え、本国カナダで総合チャート初登場1位を記録しています。
アルバム参加メンバー
- Rody Walker – Vocal
- Tim Millar – Guitar, Vocal
- Luke Hoskin – Guitar, Vocal
- Arif Mirabdolbaghi – Bass, Vocal
- Moe Carlson – Drums
ゲストミュージシャン
- Vadim Pruzhanov – Keyboard solo on #6
楽曲紹介
- Bloodmeat
- The Dissentience
- Bone Marrow
- Sequoia Throne
- Palms Read
- Limb From Limb
- Spoils
- Wretch
- Goddess Bound
- Goddess Gagged
10曲収録で40分程度とコンパクトな作風。前作と違いコンセプトアルバムではありませんがアルバム自体は3つの楽章に分かれています。
これはベーシストのアリフによれば「イギリスの詩人Robert Gravesの伝統的な女神崇拝」に近いとされ、言わば3つのテーマを設けたオムニバス的構成になっていることが示唆されています。
第1楽章のタイトルは『On Conquest and Capture』と題され、#1〜#3までに構成。
#1「Bloodmeat」の冒頭から、タイトかつ大胆なメタリックリフが飛び出します。マス的に計算された変拍子と休符を混ぜた複雑なイントロで一気にプロテストモードへ点火していきます。このリフにスクリームをユニゾンしたボーカルや分母が16の変拍子+テンポチェンジ+両手タッピングというテクニカルの極みのようなインターバルも含め、4分の中に詰め込まれたアスリート的一曲です。
続く#2「The Dissentience」は#1よりはヘヴィメタル然なリフの構築が特徴的。コアなハイトーンとデスボイスとの切り替えが見事な上、タイトなキメにも3連のユニゾンを入れたりと余念がないです。3:09〜の大サビはフックの効いた大変メロディアスな仕上がり。
#3「Bone Marrow」はエジプシャンな雰囲気のアンビエントとリードギターのイントロから、強引にテンポチェンジを繰り返していくメタルナンバー。間奏ならずともボーカルの裏でスウィープをかましていたり、エネルギーに溢れたやんちゃさがなんとも痛快。
各章の繋ぎはクロージングのピアノによって引き寄せられこの曲では4:30〜がそれに当たります。
第2楽章のタイトルは指定されていませんが#4〜#7までの4曲がこれに当たります。
#4「Sequoia Throne」は#1に続いてMVも制作されたエクストリームなテクニカルナンバー。タッピングorタイトな刻みが終始曲を支配していて、続く#5「Palms Read」もそうですが、ギターとしての役割というより全パートが曲に対し5人6脚している印象です。
続いて#6「Limb From Limb」。DragonforceのキーボーディストVadim Pruzhanovですが、曲全体がギターソロのような曲でヴァディムへ席を空け渡すような構成がなかなかにDragonforce風。そのくらい傍若無人ぶりが発揮された曲ですが、変拍子や細かいテンポチェンジも多いのでそれらをしっかり構築し管理しているのには感服です。
第2章のラストとなる#7「Spoils」。彼らのベースにあるハードコアが見え隠れする楽曲で、キメの突拍子のなさなども含めこれがProtest The Heroなんだと思わせてくれる一曲。2:59〜のピアノにより最終章へ進んでいきます。
第3楽章には『Isosceles』というタイトルが付けられ、これがラスト#8〜#10までの3曲。
#8「Wretch」のイントロは近年のDream Theaterにも見られるプログレッシブ・メタルリフ。メロディアスなボーカルラインとコーラスとのスピード感ある掛け合いが非常に気持ちいいナンバーです。
#9「Goddess Bound」はこれまでのパンキッシュな流れに加えブルータリティー面も盛ん。プログレメタルというよりはよりブラックなものを連想させました。変則的な曲の進行については、これが後にスウェーデンのA.C.Tへの影響も感じさせます。
そしてラストとなる#10「Goddess Gagged」。#7を再度思わせるメロコアチックなイントロにタイトを極限まで突き詰めたバッキングリフ、カタルシスを感じさせるメロディックなサビが返ってカオスさを増しています。
プログレメタルとして聴くと圧倒的にメタル寄りであることは間違いないですが、プログレのジャンルとしてみると先人からのノウハウやスタイルの継承ではなく独自に発展させたものだということがわかります。
Dream Theaterと比べられることもあるかと思いますが個人的には根本的な部分で違うなということは、やはり彼らがハードコア出身であるところに起因するのでしょう。それでも常にフルスロットルで聴けるプログレメタルというのは珍しいので演奏力の高さも込みでオススメできる一枚です!
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タグ: プログレッシブ・メタルProtest The Hero加プログレ
関口竜太
東京都出身。ギタリスト、音楽ライター。 14歳でギターを始め、高校卒業と同時にプロ・ギタリスト山口和也氏に師事。 ブログ「イメージは燃える朝焼け」、YouTube「せっちんミュージック」、プログレッシヴ・ロック・プロジェクト「Mind Over Matter」を展開中。2021年から『EURO-ROCK PRESS』にてライター業、書籍『PROG MUSIC Disc Guide』にも執筆にて参加。
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