Abel Ganz「The Life of The Honey Bee and Other Moments of Clarity」: ポンプ世代のアコースティック・シンフォバンド最新作!「記憶と忘却」をテーマに英国情緒とケルトとの優雅な融合サウンド!

こんにちは、ギタリストの関口です。

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本日はイギリスのバンドAbel Ganzの最新作をご紹介します。

The Life Of The Honey Bee and Other Moments of Clarity / Abel Ganz


The Life Of The Honey Bee and Other Moments of Clarity

Abel Ganz(アベル・ガンズ)はイギリスのプログレッシブ・ロックバンド。

来歴


以前、イギリスという国を簡潔にまとめた記事を書いたのですが、そこでスコットランド出身のバンドにはネオプログレやプログレメタルが多く、ケルト文化も盛んだという話をちらっとしました。

プログレの聖地、イギリスの基礎知識を超が付くほどわかりやすく解説!

スコットランドの西部、全長170kmに及ぶクライド川に面する港湾都市グラスゴーで、1980年に結成されたのがこのAbel Ganz

キーボーディストHew MontgomeryとベーシストHugh Carterの二人を中心に結成。そこにギタリストMalky McNivenとドラマーKen Weirが初期のラインナップとして加入し活動を開始します。

最初期はインストバンドとしてのスタートでしたが、地元グラスゴーのライブシーンですぐに頭角を現したことでボーカリストを迎え、80年代イギリスのネオプログレッシブ・ロックバンドPallasやPendragonと共にシーンを盛り上げます。

1stアルバムのレコーディングも控える中でボーカルとして加入したのは元Trance MacabreのAlan Reed。そうして5人体制となったバンドで1983年、Gratuitous Flashにてデビューを飾ります。

そして積極的なライブ、ラジオやメディアへの露出、そしてフェスへの出演を通じ彼らは人気と実力両面を高めていきます。

しかしながら、やはりというかなんというか、メンバー変遷は非常に激しく行われました。

ボーカルのアランがPallasからの誘いを受け、結果24年に渡って在籍する「居場所」を見つけてしまったことを皮切りに、ギターのマクニベンやベースのカーターが脱退、新メンバーを加えたりその彼らがボーカルを担当したりと一変。

メンバーチェンジと活動の形態が変わった事で余裕もなかったでしょうが、人気はそれに追いつくように上昇し、フランスの名門レーベルMSIと契約。新ドラマーDenis Smithの加入と共に発表された1988年のアルバムThe Dangers of Strangersは特に注目を浴びました。

90年代に入ってからは再び低迷期。主軸のモンゴメリーが脱退した事で当初のプログレッシブ・ロックからよりオリエンタル・ロックへ変化。バンド名も一時Hiatusに改名します(1996-2006)。

バンドがAbel Ganzとして復活を遂げるのは初期メンバーのモンゴメリーとカーターが再び交える2008年。ギターにDavie Mitchell、ベースにStephen Donnelly、ボーカルにMick Macfarlane、そしてデニスのドラムによって『Shooting Albatross』をリリースします。

本作『The Life Of The Honey Bee and Other Moments of Clarity』は、バンドタイトルとなった前作『Abel Ganz』より6年ぶりのニューアルバム。モンゴメリーとカーターとが再度抜けているものの、「記憶と忘却」との関係を探る6つのテーマで構成されたコンセプトアルバムとなっています。

アルバム参加メンバー


  • Davie Mitchell – Guitar
  • Jack Webb – Keyboards
  • Mick Macfarlane – Vocal, Guitar, Bouzouki
  • Stephen Donnelly – Bass
  • Denis Smith – Drums, Vocal
  • David King – Guitars, Keyboard, Drum programming

その他参加ミュージシャン

  • Alan Hearton – Keyboard, Vibraphone
  • Fiona Cuthill – Fiddles
  • Alex Paclin – Harmonica
  • Snake Davis – Saxophone
  • Emily Smith – Vocal
  • Frank van Essen – Strings
  • Stevie Lawrence – Low whistles
  • Signy Jakobsdottir – Conga, Percussion
  • Marc Papaghin – French horn

楽曲紹介


  1. The Life of the Honeybee and other Moments of Clarity
  2. One Small Soul
  3. Arran Shores
  4. Summerlong
  5. Sepia and White
  6. The Light Shines Out

再結成後のアコースティックでクラシカルな、英国情緒ある流れを汲んだ本作。

タイトル曲でもある#1「The Life of the Honeybee and other Moments of Clarity」の冒頭は重厚なフェードインに導かれて、アコースティックギターによる繊細なアルペジオ。変拍子を交えたバンドインでのテーマ(というかミックス)は若干ローミッドな感じもしますが、YesやPink Floydを思わせるアンビエントと初期Kansasを思わせる陰鬱なボーカルライン、そして物語性を感じさせる進行が大変魅力的。また6:15〜のストリングスによるインストパートへの展開もKansasを彷彿とします。Snake Davisによるサックスのオブリも味がたっぷりの大作ナンバーです。

ゲストボーカルにEmily Smithを迎えた#2「One Small Soul」。Elton Johnを感じさせる王道のピアノフォークナンバーで豊かなメロディラインがお見事。エミリーのボーカルは落ち着いた女性ボーカルといった印象でミックとのデュエットコーラスも素晴らしいです。

ギタリストのダヴィによるソロギターインスト#3「Arran Shores」。ソロギター特有のアルペジオとメロディの中間のようなサウンドや、指弾きの柔らかなタッチを大事にしたプレイングで「歌う」癒しのナンバーです。

ピアノバラードとなる#4「Summerlong」。擦り切れそうなくらい切ないミックのボーカルが特徴的な他、ここで聴ける本格派のストリングスアンサンブルが優美で生々しい一曲。後半にはオリエンタルな雰囲気と共にフィドルの甲高いソロがアイリッシュの空気をもたらします。

#5「Sepia and White」は13分の大作。シンセを活かした打ち込みとノイジーさが溢れ出すプログレハードなイントロ。本編はジャジーなピアノとそれに追従するベースとドラム、そして安定感のあるボーカルがアダルトな雰囲気を奏でるミドルテンポです。5分〜はエレピのリードを合図にベースラインがテンポチェンジを引っ張る展開で、緊張感のあるインストパートはスウェーデンのThe Flower Kingsなども思わせます。

ラストとなる#6「The Light Shines Out」。打ち込みのドラムとホーンのサウンドでこれまでよりさらにオリエンタルな雰囲気の冒頭。落ち着いたミックのボーカルも上品で同じくイギリスのBig Big Trainを思わせる貫録です。3:08〜3:50はベースによる一応プログレッシブな展開のインターバルもあり、総じて独特な世界観とストーリーテラーな組曲による英国バンドらしいコンセプト作です!

なおボーナストラックに#2のRadio Editバージョンを収録しています。

関口竜太

東京都出身。ギタリスト、音楽ライター。 ​14歳でギターを始め、高校卒業と同時にプロ・ギタリスト山口和也氏に師事。 ブログ「イメージは燃える朝焼け」、YouTube「せっちんミュージック」、プログレッシヴ・ロック・プロジェクト「Mind Over Matter」を展開中。2021年から『EURO-ROCK PRESS』にてライター業、書籍『PROG MUSIC Disc Guide』にも執筆にて参加。

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