Logos「Sadako e le mille gru di carta」: Le OrmeやP.F.Mを継ぐイタリアンプログレバンドの最新作!原爆と千羽鶴をテーマに平和のあり方を問うメッセージ作品!

こんにちは、ギタリストの関口です。

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本日はシンフォニックバンドLogosの2020年最新作をご紹介します。

Sadako e le mille gru di carta / Logos


Sadako e le mille gru di carta

Logos(ロゴス)はイタリアのプログレッシブ・ロックバンド。

来歴


イタリア北部の都市ヴェローナで1996年に結成されたのが今日ご紹介するLogos

初期のメンバーはキーボーディストLuca Zerman、ドラマーAlessandro Perbellini、ベーシストFabio Gaspariの3人。

この3人によって当初は70年代のイタリアンプログレLe Ormeなどのカヴァーを行なっていましたが、後にギタリストのMassimo MaoliAndrea Dossi joinedが加わり、バンドはオリジナル曲へ着手していくこととなります。

アンドレアについては早々に脱退してしまいますが、1999年、自主制作による1stアルバム『LogoS』にてデビューを飾ります。

元々カヴァーしていたLe Ormeはもちろん、P.F.M(Premiata Forneria Marconi)、Banco、Genesis、King Crimsonなど、70年代のプログレッシブ・ロックから多大な影響を受けた彼らの音楽性は大作志向なシンフォニック・ロックへと昇華。

2001年には2ndアルバム『Asrava』をリリースしますが、その後メンバー間のトラブルが絶えず続く3rdがリリースされたのは実に13年後。

そこからさらに6年の歳月をかけて制作された本作『Sadako e le mille gru di carta』は、新メンバーにピアニストのClaudio Antoliniを迎えよりシンフォニック性を高めています。

アルバム参加メンバー


  • Luca Zerman – Vocal, Hammond Organ, Synthesizer
  • Fabio Gaspari – Vocal, Bass, Guitar, Mandlin
  • Claudio Antolini – Piano, Synthesizer
  • Alessandro Perbellini – Drums

その他参加ミュージシャン

  • Elisa Montaldo – Vocal on #4
  • Massimo Maoli – Guitar on #6
  • Simone Chiampan – Drums on #4
  • Federico Zoccatelli – Saxophone on #2

楽曲紹介


  1. Origami in SOL
  2. Paesaggi di insonnia
  3. Un lieto inquietarsi
  4. Il sarto
  5. Zaini di elio
  6. Sadako e le mille gru di carta

本作のタイトルの『Sadako e le mille gru di carta』というのは直訳すると「禎子と千羽鶴」

この訳でピンとくる人もいるかと思いますが、禎子というのは広島への原子力爆弾投下により被曝し、その後原爆症により死亡した佐々木禎子さんのこと。千羽鶴はそんな彼女が自らの延命を祈って折ったことが始まりとされており、以降日本で千羽鶴は平和の象徴となっています。

ただ、日本人的感性で言えばこの「希望」への解釈はどちらかというと「祈り」に近いのですが、ここでは「千羽鶴を折ると願いが叶う」みたいな解釈がされているので、そこは若干ズレてるかなと思います。

ガッツリとコンセプトアルバムというよりは、#6「Sadako e le mille gru di carta」や戦争をテーマにした楽曲を肝に据えつついつものファンタジックな世界観も描いていますね。

アルバムのティーザー映像▼

そこまで解れば、ジャケットが鶴を折った折り紙広げた状態だとわかります。#1「Origami in SOL」はそんな祈りの物語のオープニングとして用意された2分程度の小曲。ここでの「SOL」はイタリア語によるGマイナーのこと、邦題を付けるなら「折り紙 – ト短調」と言ったところでしょうか。プログレバンドらしく白玉のアタックとシンセサイザーによるテーマが演奏されます。メロディには若干緊迫感が現れています。

#2「Paesaggi di insonnia」はタムロールと不穏なベースラインから、フリーキーなシンセサウンドによって繰り広げられるKing Crimson風実験曲。ヴァースはオブリを効かせた緊張感を漂わせつつ、インストパートにはアコースティックギターにGenesisライクなシンセリードと王道感溢れる一面も。

キーボーディストが二人いることによるオルガンのバッキングとシンセリードが成立している点にも注目しつつ、5:04〜はゲストFederico Zoccatelliによるムーディーなサックスソロが雰囲気を引き立てています。

#3「Un lieto inquietarsi」はYesやAsia風のシンセサウンドからスピーディーに展開していくフュージョン系プログレ。おそらくはEL&PやT-SQUEREからの影響も若干伺える一方で、リズム隊の重さやよりタイトに感じるキメは80年代以降のネオプログレやプログレメタルのエッセンスも感じます

10分強の楽曲ですがボーカルが入るのは6:50〜。イタリア語によるボーカルは英語やスウェーデン語とはまた違う独特の表現がありますね。

仕立てを意味するテーラーと名付けられた#4「Il sarto」はアコースティックギターをメインにしたポップソング。ゲストにはイタリアのロックグループIl Tempio Delle ClessidreからElisa Montaldoがボーカル参加、彼女もまたキーボーディストとして活躍しています。ヨーロッパならではの雰囲気と民族感を併せ持つフォークソングです。

なおエリサはSamurai of Progの2019年作『Toki No Kaze』にも楽曲を提供していたりと意外にも日本贔屓なところがあるのかも。

12分半の大作となる#5「Zaini di elio」。タイトルはいずれもイタリア語でこちらは「ヘリウムのバックパック」と言った訳になりますが翻訳ソフトではその真意に限界がありますね…

イントロからGenesis系シンセリードを効かせ、近年で言うところのA.C.TやBig Big Trainのようなトラッドで明るいプログレッシブサウンドを披露しています。

そしてラストは21分の大作にしてタイトルナンバー#6「Sadako e le mille gru di carta」

アルバムに先んじてこの曲のRadio Editが発表されていますが、頭から5分程度までのパート1を切り取った試聴的な役割。そんな前半は初め、爆撃を思わせる衝撃音と現在の広島で遊ぶ無邪気な声がSEとして使われています。ボーカルパートはアコースティックギターをメインに穏やかに歌い上げますが、前半パートを印象付けるテーマでサンドする構成から4:15〜はスピーディーに展開。

キメとプログレッシブなアプローチを決めていくインストパートとボーカルパートとのの対比は見事で、ギター成分は正直強くないですが、ダブルシンセによるパワーはそれを感じさせません。アルゼンチンのnexusなどスパニッシュな香りも漂わせつつ、曲の発想は平均的でありながらこれはイタリア版EL&Pといって差し支えませんね。

最後に


本来なら8月6日や15日辺りに合わせてこの記事を書くべきだったのかもしれませんが、わざわざそこへタイミングを持ってきて湿っぽくしても仕方ないし、7月にリリースされたこの新譜への評価を一ヶ月も温める方が罪深いと感じたので躊躇わずここに書き記しておきます。

イタリア語につきすべてを解釈できるわけではありませんが、第二次世界大戦でイタリアはドイツ勢力としてソ連(現在のロシア)勢力と熾烈に争った歴史もあります。

お互いかなり傷つきあった過去を持ちますが、そんなイタリアが日本の地を見て原爆と平和をテーマにアルバムを作ってくれたことを一日本人として大変ありがたく思います。

関口竜太

東京都出身。ギタリスト、音楽ライター。 ​14歳でギターを始め、高校卒業と同時にプロ・ギタリスト山口和也氏に師事。 ブログ「イメージは燃える朝焼け」、YouTube「せっちんミュージック」、プログレッシヴ・ロック・プロジェクト「Mind Over Matter」を展開中。2021年から『EURO-ROCK PRESS』にてライター業、書籍『PROG MUSIC Disc Guide』にも執筆にて参加。

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1件の返信

  1. Logos より:

    Thank you very much for your feedback on our album. SOL- is the Italian canonical meaning of G minor, the tune of that song.
    The album would broadcast a message of peace. So, greetings from Italy. Best

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