Ebonivory「The Long Dream I」: オーストラリア出身のポストハードコア+Djentを叶えたルーキー最新作!コントラストの見事なライティングセンスと突き抜けるボーカルが素晴らしい!

こんにちは、ギタリストの関口です。

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本日はオーストラリアのバンドEbonivoryをご紹介します。

The Long Dream I / Ebonivory


The Long Dream I [Explicit]

Ebonivory(エボニヴォリー)はオーストラリアのプログレッシブ・メタルバンド。

来歴


オーストラリアの南東、バララット出身のEbonivoryは、2014年にリードボーカルでマルチインストゥルメンタリストのCharlie Powlettによって結成されます。

ギターのJake EwingsLouis Edwards、ベースのConnor McMillan、そしてドラムのDave Parkesという結成当初から変わらないメンバーで活動を続けます。

彼らは2014年に1stEP『Ebonivory I』、2015年には1stアルバム『The Only Constant』、2016年には再びEPの『Ebonivory II』を立て続けにリリース。プログレッシブ・メタル、オルタナティブ・ロック、ポストハードコア、そしてモダンパンクを独自に蒸留したスタイルで徐々にその人気を高めていきます。

2019年にはオーストラリアのプログレフェス「PROGFEST」に出演。国内でも高い人気を誇るThe OceanやMonuments、Skyharborらと同じく名を連ねることとなります。

フェスでの活躍がきっかけとなりオーストラリアのプログレレーベルWild Thing Recordと契約。本作『The Long Dream I』はそこよりのリリースとなった2020年最新作です。

なお、この夏からはオージープログレメタルのトップCaligula’s Horseとの強力タッグによるツアーも予定されていましたが、こちらは新型コロナウイルスの影響で来年1月へ延期となりました。

アルバム参加メンバー


  • Charlie Powlett – Lead Vocal
  • Jake Ewings – Guitar
  • Louis Edwards – Guitar, Backing Vocal
  • Connor McMillan – Bass, Backing Vocal
  • Dave Parkes – Drums, Percussion

楽曲紹介


  1. Introduction
  2. Hanmer Street
  3. Persist
  4. Patting the Black Dog
  5. Cats
  6. A Colour I’m Blind To
  7. Sea Sons
  8. In Reverie
  9. Window Man
  10. Explosions After Dark
  11. Tales of Termina
  12. The Bluegums
  13. Introvection

タイトルの「I(ワン)」が意味する通り、本作は2部構成によるコンセプトアルバムの初陣

#1「Introduction」からバンドはすでに全力投球です。1:40ほどの小曲にヘヴィなテーマやギターソロを詰め込んでいます。

シームレスに繋がる#2「Hanmer Street」はクリーンのアルペジオやDjent寄りのタイトなギターリフでストーリーの幕を上げていきます。ボーカルのパウレットはモダンなポストロックやメロコア系の声質で、日本で言えばONE OK ROCKやUVERworldなどが近縁だと感じます。そういう意味ではサウンド面も含めかなり日本人好みのメタルに仕上がっているはずです。

#3「Persist」ではデスボイスとクリーンなハイトーンとの切り替わりが見事なヘヴィメタルを披露。豊かなコーラスのサビと、ジェイク&ルイスによる強烈なユニゾンギターソロにも注目です。

#4「Patting the Black Dog」ではインターバルでなおも歯切れのいいDjent系リフが登場。タッピングを駆使したバッキングや感情的に叫ぶパワフルなボーカルがとにかく魅力的。

#5「Cats」は幽玄さと荒涼とした雰囲気を取り込んだバラードソング。壮大さを感じるストリングスにリヴァーブでたっぷりと深みを出したドラムやギターのサウンド。そして楽器のように突き抜けるボーカルがこれまたエモーショナルで惚れ惚れとしてしまいますね。

#5から繋がる形でパウレットのボーカルから導入する#6「A Colour I’m Blind To」。ヘヴィでキレがあるギターは健在ながら爽やかなメロディラインと表情豊かなボーカルで目の覚めるアクティブチューンとなっています。

1:30弱ながら歌ありの小曲#7「Sea Sons」で伏線的なテーマを匂わせながら#8「In Reverie」へ。こちらもギターのアルペジオとストリングスで形成する#5のまとめ的なバラード。静寂なパートから感情的に曲を盛り上げていくのが非常に巧く、ドラマティックに激しさを増しつつも彼らのやりたいように耳を傾けてしまう自分がいます

#9「Window Man」はバラード続きから一転のポストハードナンバー。波のように押し寄せるバンドサウンドとハイトーンボーカルの調和、ハードかつテクニカルなギターバッキングとデスボイスが絡んだモダンなアプローチにも注目です!

終盤戦。#10「Explosions After Dark」はMVが制作された先行配信曲。ザラザラした未来的なサウンドスケープで、デスをボーカルスタイルのメインに据え、中盤には後期Pink Floydのようなアンビエントチックな空気も作り出しています。

先行配信曲#11「Tales of Termina」。デジタルなパルスに追従させたギターリフで、新スタイルであるEbonivoryの音楽性でもとりわけてモダン。インドのPineapple Expressも彷彿とさせましたがそれよりももっと直情的で深く分析するより身を委ねてしまった方が良さそう。

9分近い長尺となった#12「The Bluegums」。冒頭はストリングスに鳥のさえずりなどSEも含んだアンビエント。クリーンのアルペジオで彩るヴァースや丁寧に歌い上げるボーカルなど基本的な姿勢は変わらず。

聞いた感じだと3部構成くらいになっていて、3:35〜で一度曲をズバッと終えているのですが、デイヴのパーカッシブなドラムとそれに息を合わせるコナーのベースにより復活。幽玄な空気のままギターソロから波のように盛り返して3分強のインストパートを越えていきます。クロージングはストリングスがふわっと流れるなかパウレットのファルセットにより余韻を残して締めています。

そしてラストとなる#13「Introvection」。これまでのポストパンクやハードコア的なメタルとは一線違う、Dream Theater系統のヘヴィネスとテクニカルなギターリフのイントロが特徴的。魅惑的なクリーンボイスと攻撃性を増すデスボイスとの掛け合いにより最後までアクティブに曲を展開させています。

タイトルは造語だと思われますが、うち「vection」というのは視覚誘導性自己運動感覚のことで視覚的に止まっていることがわかっても周りが動くことで自分が動いているように錯覚する現象のことを言います。電車が停車中、隣の線路を別の電車が通ると自分の乗っている電車が動いているように見えるあの感覚ですね。

これがアルバムのラストソングでありながら実はまだ続いていくという示唆のような気がしますが、コンセプトアルバムと気張らなくてもDjent的なプログレメタルやハードコアが好きな人はループ安定のハイクオリティなアルバムとなっていることでしょう!

 

関口竜太

東京都出身。ギタリスト、音楽ライター。 ​14歳でギターを始め、高校卒業と同時にプロ・ギタリスト山口和也氏に師事。 ブログ「イメージは燃える朝焼け」、YouTube「せっちんミュージック」、プログレッシヴ・ロック・プロジェクト「Mind Over Matter」を展開中。2021年から『EURO-ROCK PRESS』にてライター業、書籍『PROG MUSIC Disc Guide』にも執筆にて参加。

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