プログレメタルを紐解く完全保存版!METAL HAMMER JAPAN Vol.2をレビュー。

こんにちは、ギタリストの関口です。

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リットー・ミュージックから出版されている英国のハードロック/ヘヴィメタル専門誌『METAL HAMMER』の日本語版『METAL HAMMER JAPAN』

その第二号が届きましたので本日はこちらをご紹介します!

METAL HAMMER JAPAN Vol.2 (リットー・ミュージック)


METAL HAMMER JAPAN (メタルハマー・ジャパン) Vol.2 (表紙・巻頭ミュージシャン:ドリーム・シアター) (Rittor Music Mook)

「すべてのヘヴィメタルはプログレッシブに通ず」と打って出た128ページのムック本。

ヘヴィメタルのサブジャンル的扱いに止まるプログレッシブ・メタルですが、一般的に「プログレメタルでない」バンドにもプログレッシブな要素を多分に含んでいるということで、そこをフォーカスした今回の企画。

導入は昨今のコロナウイルス感染拡大を受けて、あらゆるコンサートが延期もしくは中止となり、興行が白紙に返っている現状から、その影響を受けた一バンドであるDream Theaterの話へと繋がっていきます。

巻頭インタビュー:ジェイムズ・ラブリエ(ドリーム・シアター)

「このコロナ禍でメンバーも同じくロック・ダウンの影響を受けている」と語るDream TheaterのボーカルJames LaBrieのインタビュー。

5月に予定されていた待望の来日公演が10月に延期されたことを受け、日本のファンへのメッセージやライブツアーで予定していることを語ってくれています。

大ヒットアルバム『Images & Words』から掘り下げるラブリエの音楽的バックグラウンドなど現在の彼らへの関心が文字に起こされているのは非常にありがたいです。

影響の源をたどる旅――幽玄なる象徴”プログレッシブ五大賢者”絵巻

インタビューページを終えると、本号のテーマである「プログレ」の話へ。

そもそものProgressive」の定義から入るのは、あくまでメタル誌であるから極端ではないにしろ縁遠い人もいるだろうという配慮ですね。素晴らしいです。

その上で簡単な沿革とそれに関連したアルバム、Pink FloydやKing Crimsonと言ったUK五大プログレバンドの解説など、まずは歴史から掘り下げていくのはこのジャンルにおいて避けて通れない道です。

メタル・サブ・ジャンルの大道を進む――王道プログレッシブ・メタルの系譜

時代は流れ、プログレがハードロック、ヘヴィメタルへ系譜を進めていきます。

JourneyやBostonと言った所謂アメリカン・プログレ・ハードから、徐々に「プログレッシブであるということ」「メタルであるということ」の両端を擦り合わせジャンルの糸口を見つけていきます。

80年代のネオプログレッシブ・ロック、MarillionやIQ、Pendragonなどにも触れつつ、いよいよ歴史上初とされるプログレメタルバンドFates Warningが登場。

80年代後半に結成されたMajesty(後のDream Theater)や、90年代のSymphony Xも登場したりなどいよいよシーンでプログレッシブ・メタルが加熱してきます。

from 1980-2015――アイアン・メイデンは、いかにしてプログレッシブになっていったのか!?

僕はIron Maidenって実はそんなに聴いたことがなくて、おそらくHR/HMに多感な時期にMr.BigやVan Halenと言ったアメリカンハード、もしくはメロディックなスピードメタル系に行ってしまったからなんですけど。

NWOBHM(ニュー・ウェイブ・オブ・ブリティッシュ・ヘヴィメタル)の代表格であるIron Maidenにもプログレッシブなアプローチが多いというこの章。

変拍子や変則的なリズムアプローチが多かったり、3連を基調にしていたり。またSFなどの要素をアルバムに取り入れていたりと、過去のアルバムを分析しプログレ成分を抽出した内容が書かれています。

これには結構意外で、Dream TheaterがIron Maidenからの影響があると知ってはいてもそこに向かうことはしてこなかったので、今まで通ってきた道を改めこれからはメイデンも聴いてみたいと思わせてくれました。

禍々しきプログレッシブの森を進む――エクストリーム・メタルの深化論

ここではヘヴィメタルからさらに派生した、スラッシュメタル、デスメタル、ブラックメタルなどの音楽とプログレとの繋がりを紐解いています。

Metallicaは僕も好きで、プログレッシブ・メタルに通ずる面は認めています。またデス/ブラックメタルにおいてもプログレを遥かに凌ぐほどの超絶技巧やテクニカルなアプローチが多く、Green Carnationなど曲が長尺になる例も珍しくありません。

このデスとプログレを混ぜた音楽性は90年代にそのままOpethが実現していますし、ダウナーなサウンドイメージはKing Crimsonからの影響もあると思うのでエクストリーム・メタルとプログレとの関連性は確実に存在するでしょう。

『メタル・ジャスティス』はどうプログレッシブなのか?

そんなMetallicaの中でもとりわけプログレッシブと評判のある『メタル・ジャスティス(原題:…And Justice for All)』

このアルバムが如何にプログレッシブかを分析しているのが、実にメタル誌が特集するプログレという感じ。とても新鮮です。

実際このアルバムは10分に迫ろうというナンバーが2曲、7分台も2曲と長尺ナンバーが際立っており、また4/4と3/4による変拍子のリフ形態も数多く存在。

86年リリースの前作『メタル・マスター(原題:Master Of Puppets)』から、すでにこのようなドラマ性に富んだ長尺の曲と変拍子を使用したアレンジは見受けられたため、言わばこれの延長線上と個人的には解釈しています。

プログレッシブ・メタルの究極形態――インテリジェント・アグレッシブ=ジェントの進撃

そして現在、このプログレメタルの最終形としてシーンで幅を効かせているのがMeshuggahを初めとしたDjent(ジェント)

ギターの低音をごっそり削り、必要以上にミドルをブースト。ノイズゲートによってまるでDAW上で波形を切り取ったような歯切れのいいヘヴィリフを変拍子と共に展開するこのスタイルは、アメリカのバンドPeripheryのMisha Mansoorが音の擬音として「Djent」と言ったことに由来します。

このDjentの名前の由来は知っていましたが、実際このスタイルがいつ生まれ、誰の手によって改良が進められたのかそれがまだ謎でした。しかし本誌では90年代まで遡りルーツを探っているので非常に収穫の多い内容と言えるでしょう。

インタビュー:トーマス・ハーケ(メシュガー)

さらにそんなMeshuggahのドラマーTomas Haakeのインタビューからこのモダン・プログレッシブ・メタルの内面やソウルをさらに深掘りしています。

ノウハウ特集:知ってるつもり? 変拍子の基本と実践

雑誌中腹には変拍子にフォーカスを当てたリズムノウハウのコラムも掲載。

ギター誌やドラム誌ではないので具体的な練習フレーズが載っているわけではありませんが、あのリフはこんなリズムだった的なノリで楽曲に対する理解を深めてくれます。

最後に


特集の最後には雑誌編集部によってまとめられたプログレッシブ・メタルの分布図なるものが掲載されていて、僕もこれに関しては自分の中で常日頃考えていますが具体的に形になっているものを見たのは初めて。

横線ではトラディショナル⇆モダンを、縦線ではテクニカル⇆叙情という風にカテゴライズしてDream TheaterやCircus Maxiums、PeripheryからThe Flower Kingsに至るまでを分布してあります。

大変興味深く、自分の中で作っていた分布との答え合わせにも最適です。あえて一つ不満を言うのなら、分布の中心、縦と横がクロスする位置に何かバンドを置いて欲しかったなということくらいですかね。

ツイートにも書きましたが、プログレッシブ・メタルの資料というのは、こと日本においては非常に貴重で2、3年に一冊出たらいいなくらいのペースです。雑誌業界も厳しい中、1500円でここまでまとめてくださってるリットーさんに感謝を込めて。

ご興味ある方は是非ゲットしておきましょう!

関口竜太

東京都出身。ギタリスト、音楽ライター。 ​14歳でギターを始め、高校卒業と同時にプロ・ギタリスト山口和也氏に師事。 ブログ「イメージは燃える朝焼け」、YouTube「せっちんミュージック」、プログレッシヴ・ロック・プロジェクト「Mind Over Matter」を展開中。2021年から『EURO-ROCK PRESS』にてライター業、書籍『PROG MUSIC Disc Guide』にも執筆にて参加。

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