Covet「Technicolor」: 鮮やかで繊細なギターと透き通ったアンビエントが唯一無二!Yvette Young率いるモダン・ポスト・ロックトリオの最新作!

こんにちは、ギタリストの関口です。

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本日はアメリカのバンドCovetのニューアルバムをご紹介します。

Technicolor / Covet


テクニカラー

Covet(コヴェット)はアメリカのプログレッシブ・ロック/マス、ポスト・ロックバンド。

来歴


カリフォルニアの女性ギタリストYvette Young(イヴェット・ヤング)にて2014年に結成されたプログレッシブ系のインストゥルメンタルバンド。

ヤングは幼少からピアノとヴァイオリンを弾いて育ち、この二つが最終的に弦楽器上で両手を使うタッピングスタイルへと繋がっていきます。

2009年からYouTubeで自身が弾き語るオリジナルソングや、そのタッピングの演奏技術を投稿。今やチャンネル登録者数は16万人を突破するテクニカルギター界の最前線です。

そんな彼女のオリジナル曲のバンド演奏という夢に賛同してくれたのは、当時からヤングの友人でもあるベーシストのDavid Adamiak(デヴィッド・アダミアク)、そしてデヴィッドの紹介で知り合ったドラマーBen Wallace-Ailsworth。

3人はそれぞれの音楽性を掛け合わせポスト・ロックとしての爽やかさにマス・ロックの数学的リズムを研究。途中、ウォレスがバンドを脱退し新たにKeith Grimshawが加入するなどメンバー変遷もありましたが、一年の歳月をかけEP『Currents』を完成させます。

近年その勢いを増しているSarah LongfieldやCHON、Pliniなどのようなギターオリエンテッドのプログレ・フュージョンより、もっとバンドありきで澄んだ空気を大事にするCovetの音楽性。しかしながら先述の彼らの人気にも乗る形で知名度を上げていきます。

そのEPを持ってライブツアーやMV製作など活動を本格化したCovet。2018年にはドラムのキースが脱退、現在のドラマーForrest Rice(フォレスト・ライス)が加入し1stアルバム『Effloresce』を完成させます。

本作『Technicolor』はおよそ2年ぶりとなる待望の2ndアルバムとなります。

アルバム参加メンバー


  • Yvette Young – Guitar, Vocals
  • David Adamiak – Bass
  • Forrest Rice – Drums

ゲストミュージシャン

  • Phillip Jamieson – Guitar on #4

楽曲紹介


  1. Good Morning
  2. Atreyu
  3. Parachute
  4. Predawn
  5. Nero
  6. Pirouette
  7. Ares
  8. Parrot
  9. Odessa
  10. Farewell

前作が6曲収録だったため、どちらかと言えばミニアルバム的な位置付けだったかもしれませんが、本作はしっかり10曲とフルレングスな内容

#1「Good Morning」はシンセサイザーとギターのアルペジオ、ループ的なリズムセクションによる穏やかなオープニング曲。

続く#2「Atreyu」は、クランチ気味のギターと変則的なリズム、変拍子を絡めジャズ的に進行していくプログレライクな一曲。モダンな半音ぶつけのギターフレーズなど近年のトレンドとしてのギターテクニックもさりげなく取り入れています。

ボーカル曲となる#3「Parachute」。ヤングの透き通った歌声も単純に素晴らしいのですが、デヴィッドとフォレストによる不屈のリズムセクションも心地よく、そこに旨味の強いギターのフィルがキュッと入るのがたまりません。

#4「Predawn」にはバークリー音楽出身のポストロックバンドCaspianよりギタリストPhillip Jamiesonがゲスト参加。アーミングで揺らしながら幻想的なアルペジオと、幽玄なキーボードによるストリングスが深い森のようなアンビエントを醸す一曲となっています。

特徴的なドラムのフィルインからマス的リフを展開する#5「Nero」。自動車廃工場で近未来なガジェットを取り付け、チープなサバイバルゲームをしているコミカルなMVが印象的。曲の方ではアルペジオとソロの中間のような、シームレスなフレーズが流暢に流れていく3:10〜がオススメ。

なるほど、フレーズを決めるとそれがコマンドになってビームが出るのね。

一つのフレージングを様々なコードに当てはめ、分離させたような小曲#6「Pirouette」

#7「Ares」は同ジャンルの基本形となるフュージョン系プログレインスト。繊細で発音のいいギターはもちろん、アクセントずらしによる変則的なドラミングやテンポチェンジ、後半に訪れるオルタナメタルなアンサンブルなど、非常にエモみの強い一曲です。

#8「Parrot」はスネアロールからテクニカルジャズな風味のナンバー。穏やかに聴かせる曲ですが、その実リズム隊は相当にタイトなので耳で聴く以上の難易度の高さをうかがわせます。

シンセサイザーをフィーチャーしたバラード#9「Odessa」。胡弓のようなニュアンスのストリングスがアジアンテイストを香らせる一曲で、アーミングで揺れる繊細なギターと終盤のエモ系アンサンブルがひたすらに美しい。

ラストナンバー#10「Farewell」。パーティ会場で演奏中ゾンビに侵略され、ゲストや自分たちですら感染していくというMVも面白いですが、R&Bやネオソウルを思わせるボーカルに、ヤング特有のギターバッキングも光るバラードで最後は締めています。

関口竜太

東京都出身。ギタリスト、音楽ライター。 ​14歳でギターを始め、高校卒業と同時にプロ・ギタリスト山口和也氏に師事。 ブログ「イメージは燃える朝焼け」、YouTube「せっちんミュージック」、プログレッシヴ・ロック・プロジェクト「Mind Over Matter」を展開中。2021年から『EURO-ROCK PRESS』にてライター業、書籍『PROG MUSIC Disc Guide』にも執筆にて参加。

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