Cryptex「Once Upon a Time」: アリス・クーパーなどレジェンドも一目置くワールドワイドな独産オペラロック!5年ぶりとなる注目の最新作がついにリリース!

こんにちは、ギタリストの関口です。

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本日はCryptexの2020年最新作をご紹介します。

Once Upon A Time / Cryptex


Once Upon a Time

Cryptex(クリプテックス)はドイツのプログレッシブ・ロックバンド。

来歴


北ドイツに位置するザルツギッター、ハノーファーを中心に、2006年に結成されたプログレッシブ・ロックバンド。

ボーカル・キーボードのSimon Moskon(サイモン・モスコン)とドラマーRamon Fleig(ラモン・フライグ)のセッションから生まれたこのバンドは、早々にCryptex名義での活動を開始します。その後サイモン主催のオーディションに合格した、当時若干19歳のギタリストMartin Linke(マーティン・リンケ)が加入。

3人は2008年にEP『Even Nature Will Be Thrilled』をリリースします。

リリース後、バンドはライブ活動を積極に行いながらLocal Heroes、Schoolijam、Emergenzaなど有名な音楽コンペにも参加。ドイツ国内では全国ツアーを行えるほど知名度を上げていきました。

2010年、デビューアルバムとなる『Good Morning, How Did You Live?』をリリース。

CryptexのサウンドはQueenのようなオーケストレーションたっぷりのシアトリカル・ロックフォークの要素も加えたシンフォニックハード。1stアルバムからそれは顕著で、管楽器やゴスペル、ストリングスなどゲストミュージシャンを多数呼び豪華絢爛なバンド像を形成します。

2012年にはスウェーデンのPain of Salvationと14ヶ国を回るヨーロッパツアーを行うなど国外にも進出。翌年にはチェコの音楽フェスにAlice Cooperから招待を受けるなど、レジェンドも一目置くワールドワイドなバンドに成長していきました。

一方で2013,14年ごろはオリジナルメンバーであったマーティンとラモンが相次いで脱退、新たにベースボーカルのMarc Andrejkovits(マーク・アンドレイコビッツ)、ギターボーカルのAndre Jean Henri Mertens(アンドレ・ジャン・メルテンス)、そしてドラマーSimon Schröder(サイモン・スコリドレ)が加入するなどメンバー変遷の時期でもありました。

本作『Once Upon A Time』は、前作より5年の歳月をかけ作られた待望の3rdアルバムとなります。

アルバム参加メンバー


  • Simon Moskon – Lead Vocals, Keys
  • Marc Andrejkovits – Bass, Backing Vocals
  • Andre Jean Henri Mertens – Guitars, Backing Vocals
  • Simon Schröder – Drums

ゲストミュージシャン

  • Erika Emerson – Female vocal on #3
  • Greta Leona Hasenbalg – Female vocal on #3

楽曲紹介


  1. Once Upon A Time
  2. Because The Reason Is You
  3. Bloodmoon
  4. Body Language
  5. Two Horned Crown
  6. Haunted
  7. Reptiles
  8. I Don’t Know Why
  9. The Promise Keeper
  10. I See It In Your Eyes
  11. A Mo(u)rning
  12. Leaving
  13. Closer (Bonus Track)

タイトルナンバーにしてオープニングとなる#1「Once Upon A Time」。静かに幕を開けるストリングスに誘われ、壮大なテーマがイントロで描かれます。ヴァースで平坦に歌わせたかと思えば、メタリックなビートの加速から、サビでは大団円のようなコーラスが待ち受けています。

この超巨大なサビがCryptexの何よりの武器で、まるでプログレッシブ・ロックという世界で太古より言い伝えられる獣のようです。

続く#2「Because The Reason Is You」はサスティンの伸びたリードギターとピアノの軽快なリズムから始まるシャッフルナンバー。この大仰しいアレンジは言ってしまえば壮大な水戸黄門。

アンドレのギターは安定感のあるプレイとレンジの広いサウンドで、テクニック的面ではフリーク向けではないもののシンフォニックなバンドのスタイルによくマッチしています。

#3「Bloodmoon」は本作のリードナンバー。哀愁漂うピアノから部族のようなクアイアの、なんとも言えない緊張感が期待を高ぶらせます。この曲ではドイツのErika EmersonGreta Leona Hasenbalgという二人の女性ボーカルがゲスト参加。サイモンとの見事なハーモニーを歌い上げています。

重たいピアノの一発から始まる#4「Body Language」。壮大なシンフォニックの波とロックバンドらしいビートを大事にした演奏とのバランスがやはり素晴らしいですね。

先行でMVも作られた#5「Two Horned Crown」。スタイル上、常にバラードに近くありがちなこのバンド。この曲も基本の流れは同じで、ギターとピアノの哀愁あるイントロに飛び込んでくるサックスが妙にクール。ハードなサビにMoon Safariのような多重コーラスも健在です。

#6「Haunted」もMVが作られた一曲。テンション感のあるピアノからハードエッジなギターが飛び出すアップビートナンバー。厚いコーラスはそのままに疾走感の溢れるナンバーで、#5thを使ったキメでのリフにDream Theaterっぽさも感じます。

近年のポストロック的アルペジオから爽やかに幕を開ける#7「Reptiles」。RushやDream Theaterなどのアメリカン・ハードロックで突き抜ける爽快さ、Deep Purpleを思わせるブルースベースのギターリフや、伸びやかなギターソロなどアンドレを存分にフィーチャーした一曲に仕上がっています。

#8「I Don’t Know Why」はイントロのピアノからQueenの「Night at the Opera」を想起させる一曲。上品なストリングスやシアトリカルな展開、ボーカルのサイモンはSpock’s BeardのTed Leonardのようでもありますね。

#7のような爽やかさとロックオペラの劇団ぽさがある#9「The Promise Keeper」。3分と短い曲ではありますが一方通行で展開しまくるストーリーは本質的にプログレッシブ・ロックそのもの。

終盤、#10「I See It In Your Eyes」はU2やOasis、The Beatlesなどアイリッシュ/ブリティッシュな香りが強いバラード。ハイトーンのコーラスも絡む中、ピアノとストリングスでしっとりと聴かせてくれます。

ラストソングへのインタールードとしての役割を果たす#11「A Mo(u)rning」は、ストリングス、ピアノ、ハープなど聖域的なアンビエントの小曲。

そして#12「Leaving」はピアノと語りから、バンドの武器であるオーケストラ的クレッシェンドで荘厳に、そして壮大に締めくくっています。

なお、ボーナストラックに#13「Closer」を収録。ロックオペラを踏襲しつつもサイモンがデスボイスを披露しているなど、ハイクオリティではありますが確かにボーナス的位置づけかなと思います。

前半は大仰しく宗教的なニュアンスもある大作シンフォニックでボリューム感たっぷり、後半はロックバンドらしい爽やかなテーマや短いバラードで淡白に仕上げている印象です。

変拍子や早いパッセージなど”The Prog Rock”を求めるのはきっと違いますが、随所にある哀愁さやフランスのLazuliのようなメランコリックな雰囲気など、個人的には2020年のベスト入りも考えられる素晴らしい一枚でした!

関口竜太

東京都出身。ギタリスト、音楽ライター。 ​14歳でギターを始め、高校卒業と同時にプロ・ギタリスト山口和也氏に師事。 ブログ「イメージは燃える朝焼け」、YouTube「せっちんミュージック」、プログレッシヴ・ロック・プロジェクト「Mind Over Matter」を展開中。2021年から『EURO-ROCK PRESS』にてライター業、書籍『PROG MUSIC Disc Guide』にも執筆にて参加。

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