Frost*「Others」: 英国プログレにデジタルの流れあり!前作の音楽性をさらに深めたスーパーグループのNew EP!

こんにちは、ギタリストの関口です。

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本日はFrost*の最新EP『Others』ご紹介します。

Others / Frost*


Others – EP [Explicit]

Frost*(フロスト)はイギリスのプログレッシブ・ロック/メタルバンド。

来歴


主にイギリスでアイドルグループなどのプロデュースを行なっている作曲家・音楽プロデューサーであるJem Godfreyが中心となり結成したプログレのスーパーグループFrost*

結成は2004年で、メンバーにはArenaやKinoで活躍するギタリストのJohn Mitchell、IQのドラマーAndy Edwards、同じくIQのベーシストJohn Jowitt、そしてギタリストのJohn Boyesが招集されています。

2006年、その5人で作り上げた1stアルバム『Milliontown』がリリースされるや繊細かつテクニカルでありながら、ポップなサウンドメイクと楽曲でバンドは国内外で高い評価を得ることになります。

2008年の2ndアルバム『Experiments in Mass Appeal』ではメンバーを刷新してバンドを復活、限定的にライブを行いますが、作曲家として売れっ子であるジェムの健康状態を考慮し作品リリース毎に活動休止を繰り返しています。

2011年にイベント絡みで数度ライブを行うと、これがきっかけで再再結成。

2016年に元のミッチェルに加え、新たにIt BitesのNathan King、PendragonのCraig Blundellと言ったいずれもイギリスのネオプログレッシブ・ロックの大ベテランたちが参加し、3rdアルバム『Falling Satellites』をリリースします。

次のアクションはまたいつの日か…と遠い目をしていたところ、5月ごろに突如新曲と、それを提げた本作『Others』のリリースが発表されます。

前作『Falling Satellites』と同時期に書かれた楽曲が中心という経緯があり、当時ダブルアルバムになる予定だったプロジェクトの延長線上のため、その辺がタイトルに込められていそうです。

デジタル配信ではありますがパッケージ版として、今年の後半に彼らの13年の足取りをまとめたアンソロジーアートブック『13 Winters』の発売とそこでの収録が予定されています。

アルバム参加メンバー


  • Jem Godfrey – Keyboard, Vocal
  • John Mitchell – Guitar, Violin, Chorus
  • Nathan King – Bass
  • Craig Blundell – Drums
  • Andy Edwards – Drums

楽曲紹介


  1. Fathers
  2. Clouda
  3. Exhibit A
  4. Fathom
  5. Eat
  6. Drown

EP全体を通して言えることは、それが非常にデジタル主義でエレクトリカルだということ。3rdでもこの流れはありましたが、テクニカルなギターやフュージョン系のキーボードソロなどをバッサリカットしている印象です。

去年リリースされたNo-Manの『Love You To Bits』や、来年に延期となってしまったSteven Wilsonのニューアルバム『The Future Bites』及び新曲の「Personal Shopper」。

これらもイギリスの最新プログレとして話題を呼んでいますが、ジェムもスティーブンも同じイギリスのミュージシャンであり音楽プロデューサーという共通点から、英国プログレのサウンドスケープは現在デジタルな時代を迎えつつあるのかもしれません

まずは#1「Fathers」。バリバリのシンセサイザーによる攻撃的なメタルリフがイントロから展開されます。スティーブンの話を出した後ですが、同じデジタル方向の音楽性でも楽曲はこちらの方が圧倒的にハード。IQを始めとするネオプログレをベースにジェムのエッセンスをたっぷり染み込ませたナンバーです。

同じくヘヴィにチューニングされた#2「Clouda」。ダンサブルなドラムとキラキラしたシーケンスの粒が舞うエレクトロチューンですが、プログレッシブな曲の展開や重厚なコーラスから訪れるメロディアスなサビ、テンション感の強いギターリフなどもある本来のFrost*像に近い一曲です。

こちらは先行で配信された#3「Exhibit A」。民族的なイントロを持つデジタルなロックサウンド。クラブを想定したようなバイブス感のある展開とプログレらしいアンビエントに加え、ギタリストミッチェルのテクニカルでカオスなギターソロにも注目が集まります。

#4「Fathom」から3曲は穏やかなエレクトリカルポップとして展開。

#4ではフィルタリングされたパイプオルガンとピアノ、映画音楽のような荘厳な雰囲気にジェムのボーカルが乗るスタイル。#5「Eat」はR&Bに近くDTM風味の強い一曲で、メロトロンの響きと後半で盛り上げるシンセストリングが斬新です。

そしてラストとなる#6「Drown」。アンビエントミュージックを体現したような、アートポップになっていて言わばこれが『The Future Bites』の流れ。

名盤『Milliontown』のようなネオプログレを期待すると肩透かしを食ってしまうので、まずは焦らず落ち着いて聴くことを推奨します。そして、前作『Falling Satellites』が本作をより深く理解するための手助けとなることは間違いないでしょう!

関口竜太

東京都出身。ギタリスト、音楽ライター。 ​14歳でギターを始め、高校卒業と同時にプロ・ギタリスト山口和也氏に師事。 ブログ「イメージは燃える朝焼け」、YouTube「せっちんミュージック」、プログレッシヴ・ロック・プロジェクト「Mind Over Matter」を展開中。2021年から『EURO-ROCK PRESS』にてライター業、書籍『PROG MUSIC Disc Guide』にも執筆にて参加。

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