Haken「Affinity」: 日本初上陸の超名盤!キングダムから出でし最先端のプログレメタル!
by 関口竜太 · 2020-05-26
こんにちは、ギタリストの関口です。
本日はアーカイブ再編集第四弾!Hakenの『Affinity』をご紹介します。
元記事:本場イギリス生まれのプログレメタル、Hakenの本邦デビュー作が名盤すぎる!
Affinity / Haken
Haken(ヘイケン)はイギリスのプログレッシブ・メタルバンド。
来歴
2007年、ロンドンで結成されたHakenはマルチプレイヤーであるRichard Henshall、ギタリストMatthew Marshall、ボーカルRoss Jenningsの3人によって結成されました。
バンドの本格始動時には、メンバーにドラムRaymond Hearne、ベースThomas MacLean、キーボードPeter Jonesが加入。このトーマスとギターのリチャードは以前よりTo-Meraというプログレメタルバンド結成していた間柄。
精力的なライブ活動からいくつかデモを制作していき2008年にはそれらをまとめたデモアルバム『Enter the 5th Dimension』を発表。同時にオリジナルメンバーであるギタリストのマーシャルとキーボーディストジョーンズが脱退してしまう事態に見舞われますが、後任には元Linear SphereのギタリストCharlie Griffiths、キーボーディストDiego Tejeidaがオーデションにより新加入することで体制を立て直します。
この6人に目を付けたアメリカSensory Recordsによって2010年、デビューアルバム『Aquarius』と2011年の2ndアルバム『Visions』がそれぞれリリース。
その後Sensoryを離れた6人は新たに名門Inside Out Recordsと契約し、2013年9月に3rdアルバム『The Mountain』をリリースします。70年代UKの伝統的なプログレのエッセンスとDream TheaterやMetallicaなど息の荒いヘヴィメタルサウンドを展開し、その圧倒的に幅広い音楽でイギリス国内のみならずさらなる人気を勝ち取ることとなります。
しかし一方、この作品を最後に6年在籍したベーシストのマックレーンが脱退、新たにConner Greenが加入をしています。
2016年にリリースされた本作『Affinity』は彼らにとって初めて日本盤が発売された、いわば本邦デビュー作。
コンセプトアルバムを主体に作品作りをしているのはバンド元来のものですが、今作もその例に漏れずAI(人工知能)や機械と人間との関係をそれぞれの世界観で描いたオムニバス的コンセプト作となっています。
アルバム参加メンバー
- Ross Jennings – Vocal
- Charlie Griffiths – Guitar
- Richard Henshall – Guitar
- Diego Tejeida – Keyboard
- Conner Green – Bass
- Raymond Hearne – Drums
ゲストミュージシャン
- Einar Solberg – Vocal on #5
- Pete Rinaldi – Acoustic Guitar on #9
楽曲紹介
- affinity.exe
- Initiate
- 1985
- Lapse
- The Architect
- Earthrise
- Red Giant
- The Endless Knot
- Bound By Gravity
オープニングとなる1分20秒ほどの小曲#1「affinity.exe」。曲自体はノイズとSEによるものですがタイトルの「.exe」がテクノロジーとの関わりを表現しています。
シームレスに繋がる#2「Initiate」。歯切れのいいコードリフと憂鬱な雰囲気の中、ロスの美しいファルセットがそれらと対比するように響きます。間奏でかき鳴らすヘヴィなリフとシンセサイザーによるデジタルサウンドのギャップは、人とコンピュータが共存する近未来感を見事に描いています。
このアルバムにはノルウェーのバンドLeprousのEinar Solbergが参加していて、彼もまた美しいファルセットの持ち主ですがロスのボーカルはそこからの影響を受け取っていそうです。
#3「1985」はクランチギターのカッティングリフにロー帯域のリフを加え奥行きを持たせたイントロが非常にキャッチー。間奏でのドラマティックな展開と不気味にスケールアップしていくユニゾンソロなど、Dream Theaterの風情も存分に感じながら、ボーカルの壮大なメロディラインへと繋がっていくバンドの緻密さに溢れた一曲。個人的に本作一押しの曲です。
#4「Lapse」はイントロの繊細なアルペジオとエレクトリカルな4つ打ちのドラムのヴァースが特徴的。ワンコーラス以降はヘヴィメタルへと変貌していきますが、初期Jeff Beckを思わすフュージョン系シンセリードやしなやかなドラミングなど、とにかくバンドの広い音楽性を感じ取れる一曲です。
アルバム中盤に配置された15分の大作#5「The Architect」。コンセプトである機械をモチーフに工場のような金属音やデジタルノイズなシンセ、変拍子を絡め変則的に組み上げた怪しげなギターリフなど全てがHakenの手のひらの上のよう。
伸びのいいメロディラインに太いボーカルで序盤を終えてから、5:50〜はPink Floyd的環境音やジャズの流れを取り込んだインプロパートで実に生々しい。この楽曲には先述のEinar Solbergがゲストに参加しています。
#6「Earthrise」はタイトル通りの爽やかなイントロを持つミディアムバラード。クリーンなギターのカッティングやUKらしい多重コーラスなどの要素がタイトにキメられた曲で、近年のPolyphiaやChonといったプログレメタル・フュージョンの雰囲気を持たせているのが新しい。
#7「Red Giant」はリバースを使ったシンセの音色とリズムマシーンのように一定なドラムが印象的なバラード。メロトロンやトレモロギターによる浮遊感ある雰囲気はLeprousらしさもありますね。
デジタルでテクニカルな高速リフを持つ#8「The Endless Knot」。ラップ要素を取り入れたタイトなヴァースと伸びやかなサビとのギャップが最高にかっこいい一曲。新ベーシストとなるコナーのソロや滑らかなリチャードのギターソロなど、このバンドのポテンシャルを余すところなく発揮したハイライトの一つです。
ラストは9分半に及ぶバラード#9「Bound By Gravity」。ゲストにRick Wakemanなどとの活動で知られるオーストラリアのギタリストPete Rinaldiを迎え、ロスのウォームなボーカルとディエゴのピアノ、ベルなどが雄大に奏でる美しい大団円。
9曲の中にモダンなプログレメタルはもちろん、デジタルな流れを汲むポストロック、蜘蛛の糸のように繊細で力強いバラードまで揃っている究極の一枚です。コンセプト作でありながらアラカルトとして聴いても問題ない柔軟性もこのHakenが持つ強みだと思います。
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タグ: プログレッシブ・メタル英プログレHakenRoss Jennings
関口竜太
東京都出身。ギタリスト、音楽ライター。 14歳でギターを始め、高校卒業と同時にプロ・ギタリスト山口和也氏に師事。 ブログ「イメージは燃える朝焼け」、YouTube「せっちんミュージック」、プログレッシヴ・ロック・プロジェクト「Mind Over Matter」を展開中。2021年から『EURO-ROCK PRESS』にてライター業、書籍『PROG MUSIC Disc Guide』にも執筆にて参加。
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