Course Of Fate「Mindweaver」: まさに「ドリーム&ライク」。14年に渡る地下的活動を経て、ノルウェーのニューカマープログレメタルがついにデビュー!

こんにちは、ギタリストの関口です。

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本日はリリースされたばかり、Course Of Fateのデビュー作をご紹介します。

Mindweaver / Course Of Fate


Mindweaver

Course Of Fate(コース・オブ・フェイト)はノルウェーのプログレッシブ・ロック/メタルバンド。

来歴


世界的に見てもヘヴィメタルや構築的プログレが盛んなノルウェー。その南部に位置する都市フレドリクスタで、この2020年、正式にデビューを果たしたのが本日ご紹介するCourse Of Fateです。

とは言いつつもこのCourse Of Fate、結成は2006年となかなかの古株。リードボーカルのEivind Gunnesenを中心にギタリストKenneth HenriksenMarcus Lorentzen、ベーシストDaniel Nygaard、ドラマーPer-Morten Bergseth、キーボーディストCarl Marius Saugstadの6人で編成されたバンドです。

6人は2006年に3曲入りのデモ『Painting with Fire』『Escaping from Reality』を発表。

Queensrÿche、Fates Warning、Dream Theaterなどといったプログレッシブ・メタルの大御所や、Pink Floyd、Devin Townsendなどの革新的音楽を生むバンドに影響を受け、北欧らしいメタルサウンドを武器に活動を行います。

しかしながら2007年にセルフタイトルのデモ『Course Of Fate』を発表するもデビューには至らず、そこから6年間バンドは音源制作に関して沈黙してしまいます。

2013年に自主制作でリリースされたEP『Congnizance』。収録曲の「Paralyzed Mind」はMVも制作され、結果これがデビューの足がかりとなります。

燻る彼らを発見したのはギリシャのハードロック専門レーベルROAR! Rock of Angels Records。Ashes of AresやEnemy Insideを所属バンドに持つこのレーベルによって、本作『Mindweaver』がリリース。

14年という長い下積みを超え、ついに新たなプログレメタルバンドCourse Of Fateが光明へと歩き始めました。

アルバム参加メンバー


  • Eivind Gunnesen – Vocal
  • Kenneth Henriksen – Guitar, Vocal
  • Marcus Lorentzen – Guitar
  • Carl Marius Saugstad – Keyboard
  • Daniel Nygaard – Bass
  • Per-Morten Bergseth – Drums

楽曲紹介


  1. There Is Someone Watching
  2. The Faceless Men, Pt. I
  3. Endgame
  4. Utopia
  5. The Walls Are Closing In
  6. Wolves
  7. Drifting Away
  8. The Faceless Men, Pt. II

オープニングとなるのは1分半ほどの小曲#1「There Is Someone Watching」。クリーンのアルペジオにボーカルグンネセンのメラコリックな歌が静かに響く一曲で、コンパクトながらDream Theaterの「Space Dye Vest」のようなダークな印象を受けます。

#8と合わせて14分半の大作に仕上げた楽曲の第一部、#2「The Faceless Men, Pt. I」は、ストレートなハードロックサウンドにオクターブ奏法によるメロディアスでエモーショナルなイントロが特徴的。

Queensrÿcheからの影響というのも納得のサウンドで、80年代のグラム・メタルの様式も引き継いだ比較的クラシカルなハードロック。目立ったギターソロはないもののフィルで細かなキメなどTPOも弁えた作曲ノウハウを披露しています。

デジタルシンセからパワフルなドラムのフィルインで幕を開ける#3「Endgame」。リフやシンセリードの音はこれもDream Theaterを感じさせつつメロディックかつ陰鬱な空気が独創性を生み出しています。

#4「Utopia」でもDream Theaterぽさは健在。…そう言ってしまうとついテクニカルプログレ的なアプローチを期待させてしまいますが、ここで明言しておきたいのはサウンドメイクへのリスペクト。

イントロのクリーンアルペジオは『Awake』や『Falling Into Infinity』を彷彿とするものですし、多すぎない展開ながら芯のあるダイナミクスと繊細に作り込まれた姿勢を感じることができます。間奏ではツインギターによる見事なハーモニーのギターソロも堪能できる逸品です。

#5「The Walls Are Closing In」はアコースティックギターとボーカルによる1分程度の小曲。Yesなど70年代プログレがアルバムのインターバルにこういう曲を差し込んでいたりしますがそんなトラッドな雰囲気も感じます。

そこから続く形の#6「Wolves」。瞬発力のあるバンドインとヘヴィな刻み、ロータリーサウンド的なギターアルペジオはPink Floydぽさも匂わせつつ、ダークなボーカルと旋律主義のギターバッキングが生えるメタルナンバーです。

インターバル中に訪れる4:45にはブラックメタルからインスピレーションを受けたようなブラストビートも聴け、彼らのポテンシャルの高さも伺えます。

#7「Drifting Away」は本作唯一と言っていい本格的なバラード。優しいアコギの音色と温かみのあるボーカルやサビでのコーラス、そして存在感のあるドラムと良質なバラードとしてのファクターは一通り揃っています。ギターソロはDream Theaterの「Anna Lee」を感じさせます。

この曲を含む3つのMVはいずれもROAR!のチャンネルから投稿されているのですが、バンドが未だ無名にも関わらず3万再生を記録しているのはさすが。彼らの音楽の本質的な良さもこれから広まっていくことでしょう。

ラストは#2からの続編、#8「The Faceless Men, Pt. II」。イントロから変拍子を含んだ刻みのリフで早くもドラマティック。グンネセンのボーカルによりとことんQueensrÿcheですが、それに加えタイトでシンフォニックなメタルサウンドへとアップデートされているので懐かしさは感じますが古くはない新鮮な感情に襲われます

楽曲は比較的コンパクトで万人がアクセスしやすい構成になっているためリスナーを受け入れる間口は大変広いと思われます。一方で「The Faceless Men」のようなエピックを作る才能にも恵まれているのでこれからよりオリジナリティを増した大作曲にも期待したいです。

関口竜太

東京都出身。ギタリスト、音楽ライター。 ​14歳でギターを始め、高校卒業と同時にプロ・ギタリスト山口和也氏に師事。 ブログ「イメージは燃える朝焼け」、YouTube「せっちんミュージック」、プログレッシヴ・ロック・プロジェクト「Mind Over Matter」を展開中。2021年から『EURO-ROCK PRESS』にてライター業、書籍『PROG MUSIC Disc Guide』にも執筆にて参加。

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