Pattern-Seeking Animals「Prehensile Tales」: アメリカンプログレ始まってるな…Spock’s Beardであってそうでない、新ファミリーバンドの2020年最新作!
by 関口竜太 · 2020-05-16
こんにちは、ギタリストの関口です。
本日はPattern-Seeking Animalsの2020年最新作をご紹介します!
Prehensile Tales / Pattern-Seeking Animals
Pattern-Seeking Animals(パターン・シーキング・アニマルズ)はアメリカのプログレッシブ・ロックバンド。
来歴
アメリカのプログレハードバンドSpock’s Beardに曲の提供を行なっている作曲家John Boegeholdが発端となり、現ボーカルTed LeonardとベースDave Meros、さらに元ドラマーJimmy Keeganとが結集した新生プログレバンド。
Spock’s Beardは兄Alan Morse、弟Neal Morseのモーズ兄弟を中心に90年代初頭から活躍するバンドで、ベースのデイヴは結成間も無くからバンドに所属する古株ゆえメンバーからも絶大な人気を集めます。
事態が急変した2002年。作曲の大部分を担っていた弟のニールがバンドを脱退します。
そのせいで一時はドラムのNick D’Virgilioがボーカルも兼任しレコーディングを行うなど、穴を埋めながらの活動を余儀なくされることに。その時、ニックがボーカルを務める際のライブでドラムを担当したのがジミーでした。
ニールが脱退してから苦節10年、アメリカでネオプログレバンドEnchantのボーカルをしていたテッドが加入したことでその後Spock’s Beardは一気に安定感を取り戻します。
そうして互いを補いながら常に歩み続けたSpock’s Beardは、作曲面においても外からゲストを招きコラボするというスタイルを確立。その一人が作曲家でマルチプレイヤーでもあるジョンだったという経緯を持っています。
Pattern-Seeking Animalsは2018年に結成され、2019年にバンドタイトルである『Pattern-Seeking Animals』を発表。ジョン独特のセンスが溢れるプログレッシブ・ロックでSpock’s Beardではまた表現できない部分を突き詰めていくまだまだ綺麗な白紙。
驚くべき作曲ペースでわずか11ヶ月によりリリースされた本作『Prehensile Tales』はデビューのみで終わらなかった新たなプログレバンドの、期待を寄せるべき2ndアルバムです。
アルバム参加メンバー
- Ted Leonard – Vocal, Guitar
- John Boegehold – Keyboard, Synthesizer, Guitar, Mandolin
- Dave Meros – Bass
- Jimmy Keegan – Drums, Percussion, Vocal
- Producer – John Boegehold
楽曲紹介
- Raining Hard In Heaven
- Here In My Autumn
- Elegant Vampires
- Why Don’t We Run
- Lifeboat
- Soon But Not Today
商業的な部分も見えた前作に代わって、かなり本質的なプログレに攻めた作品。
#1「Raining Hard In Heaven」はデイヴのベースリフからダンサブルに導入するナンバー。Michel Jackson風のイントロを感じながら加わっていくギターやキーボードはYesのインスピレーションがありそうです。コミカルに聞こえるヴァースや7拍子インストパートなど、プログレッシブな要素も惜しむことなく取り込んでいます。
#2「Here In My Autumn」は本作に際していち早く発表された先行配信曲。1stアルバム同様キーボードフィーチャーやRenaissanceやKansasといった王道のシンフォプログレを貫き通している他、デイブのベースソロやテッドの速弾きも聴きどころです。
続く#3「Elegant Vampires」もイントロからKansas風のアナログなストリングスサウンドとシンセリードのイントロが独特のテイストを演出。本編はゴースト混じりの16分のリズムとシリアスなコード進行によるドラマティックな一曲となっています。
#4「Why Don’t We Run」は中華的な弦楽器の雰囲気や、スペイン・イタリア辺りのフラメンコギターなど情熱的な側面の両方を持ち合わせた欧中混合のオリエンタルなナンバー。かなり斬新な切り口のアレンジではありますが、歌メロやコーラスなどニールが在籍していたころのSpock’s Beardの香りもあったりしてかなり面白いです。
商業よりもプログレッシブとは言いましたが人を引き込む魔力がある曲です。
5曲目となる#5「Lifeboat」は本作の目玉である17分の大作曲。特徴的なEL&P風のエレピからメロトロン系のストリングスサウンド、モーグ系シンセリードなどかなりジョンの嗜好が反映されたシンフォニックナンバー。難波船に乗った人たちの運命や過酷さを表現した曲で、17分間息をつかせぬ緊張感とパワフルなドラム、ノイジーなギターソロなど情景を思い浮かべるギミックが盛りだくさんです。
ラストとなる10分の抒情詩#6「Soon But Not Today」。ハーモニクスによるギターの導入、強烈なノスタルジーが襲いかかるフルートの温かみあるリードやインターバルでのシンフォニックなメロディラインなどかなり壮大に作り込まれている模様。ブラス混じりのリズムカルなリフはとてもフックが効いていて、パターン二周目からは思わずリズムを刻みたくなる癖の強さ。
テッドのボーカルを始め、全編で存在感のあるデイヴのベース。そしてもちろんジョンのシンセに至るまで4人がほぼ同列にならんだPSAの真骨頂となるサウンド構築は1stを超える出来であることは間違いないでしょう。
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タグ: 米プログレPattern-Seeking AnimalsSpock's BeardTed Leonald
関口竜太
東京都出身。ギタリスト、音楽ライター。 14歳でギターを始め、高校卒業と同時にプロ・ギタリスト山口和也氏に師事。 ブログ「イメージは燃える朝焼け」、YouTube「せっちんミュージック」、プログレッシヴ・ロック・プロジェクト「Mind Over Matter」を展開中。2021年から『EURO-ROCK PRESS』にてライター業、書籍『PROG MUSIC Disc Guide』にも執筆にて参加。
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