Devin Townsend「Empath」: あのヴァイに一発で気に入られた男!2019年史上もっとも偏差値の高いソロ最高傑作!
by 関口竜太 · 2020-05-04
こんにちは、ギタリストの関口です。
本日はDevin Townsendが2019年にリリースした『Empath』をご紹介します。
Empath / Devin Townsend
Devin Townsend(デヴィン・タウンゼンド)はカナダのミュージシャン、ギタリスト及びボーカリスト。
来歴
1972年5月5日、カナダのニュー・ウェストミンターで産まれたDevin Townsendは5歳の時にバンジョー、12歳でギターを始めます。
高校に入学すると友人らと組んだへヴィメタルバンドを経てNoisescapesを結成。デモテープをいくつかのレーベルに送った中でアメリカのRelativity Recordsの目に止まることになります。
ただし、Relativity Recordsが気に入ったのはバンドというよりデヴィンのボーカルで、当時すでにプロギタリストとして活躍していたSteve Vaiがボーカルを探していた経緯があり彼にデヴィンを打診すると、渡されたデモテープからその声を気に入り見事Vaiの『Sex & Religion』のボーカリストに抜擢されることとなります。
ヴァイとのツアーやイギリスのハードロックバンドThe Wildheartsのサポートギタリストを経て、1994年ごろから自身の音楽制作をしたいと考えたデヴィンはソロプロジェクトとしてStrapping Young Lad(2007年に活動休止)を発足、後に自身がリーダーのエクストリームメタルバンドとして5枚のアルバムをリリースしました。
一方で1996年からはソロ名義での活動も開始。レコーディングまで順調に行うもレーベルとの契約が叶わず自社レーベルHevyDevy Recordsを設立、ソロアルバムは全てそこからのリリースとなります。
ほぼ1〜2年周期のコンスタントさでソロアルバムをリリースし続けたデヴィンは2009年にDevin Townsend Projectという新名義を発足、2009年と2011年の2年間には4部作となる大作コンセプトの『Ki』『Addicted』『Deconstructin』『Ghost』を相次いでリリース。
ここでの『Deconstructin』は数多くのゲストミュージシャンとフルオーケストラを起用し、長いキャリアの行き着く先としてプログレッシブな音楽性を提示しました。
本作『Empath』は2019年にリリースされた彼の最新アルバム。『Deconstructin』の流れを汲む多数参加のゲストやオーケストレーションを起用した、彼の音楽人生に置ける集大成ロックオペラとなっています。
アルバム参加メンバー
- Devin Townsend – Vocal, Guitar, Keyboard, Synthesizer, Produce
- Morgan Ågren – Drums, Percussion
- Anup Sastry – Drums
- Samus Paulicelli – Drums
- Nathan Navarro – Bass
- Mike Keneally – Guitar, Keyboard
- Elliot Desgagnés – Vocal on #2-5, 10-III
- Steve Vai – Guitar
- Chad Kroeger – Vocal on #6
- Anneke Van Giersbergen – Vocal on #6, 10-VI
- Ché Aimee Dorval – Vocal on #2, 4, 7
- Josefa Torres – Vocal on #5
- Ryan Dhale – Guitar
- Elektra Women’s Choir – Choir
楽曲紹介
- Castaway
- Genesis
- Spirits Will Collide
- Evermore
- Sprite
- Hear Me
- Why?
- Borderlands
- Requiem
- Singularity
I. Adrift
II. I Am I
III. There Be Monsters
IV. Curious Gods
V. Silicon Scientists
VI. Here Comes the Sun
彼の得意とする攻撃的なメタルから、ファンタジックな音のシンフォニー、そしてニューウェーブまでをカヴァーした超高偏差値のプログレ・ロックオペラ。
1:20のオープニング#1「Castaway」から流れるように入る#2「Genesis」。70年代を感じさせる宇宙的な雰囲気からエクストリームメタルまでカバーするデヴィン節炸裂のリードナンバー。この曲だけでドラマーが3人がおり様々切り替わるシーンに合わせて交代する前代未聞の振り切り方。このアルバムに参加しているMats & MorganのドラマーMorgan Ågrenを通じFrank Zappaの香りもありますね。
ちゃんぽんだった#2から続いて#3「Spirits Will Collide」。壮大なスタジアムロックを思わせるバラードでデヴィンの考える音楽的ヴィジョンが具現化した一曲。Elektra Women’s Choirによるクアイアはもちろん、デヴィンのダーティーな歌が妙に心地いいです。
#4「Evermore」はヘヴィなダウンチューンとクアイアで送る壮大なメタルエピック。宇宙的なCGと猫のアニメーションも前衛的で良き。なおサイドギターにはJames LaBrieなどで知られるMike Keneallyが参加。
#5「Sprite」はアメリカンハードな雰囲気を持つポップな一曲。ゲストにJosefa Torresを迎えささやくような甘いボーカルと、それと一体となったオーケストレーションで妖精の物語を紡ぎます。そこから続く#6「Hear Me」は一転、激しいブラストビートとデスボイスで畳み掛けるエクストリームメタルでゲストにNickel BackのChad Kroegerが参加、超攻撃的な一曲となっています。
#7「Why?」はブロードウェイのミュージカルのような古典的な交響アレンジをベースにした琴線を刺激する一曲。直前までデスボイスを披露していたデヴィンの圧倒的表現力の幅に驚かされます。鶏の挨拶から朝の始まりを継げるような11分の大作#8「Borderlands」もこの流れに準じた抒情的楽曲で、やはりFrank ZappaやSteve Vaiからの影響を深く感じさせます。
荘厳なクアイアをイントロとする#9「Requiem」。まるでハリーポッターやディズニー映画のオープニングのようなファンタジックな世界感のシンフォニーでこの後の壮大なプログレエピックの架け橋となっています。
ラストナンバーとなる#10「Singularity」。全6パート23分半に及ぶ本作の集大成的楽曲で、これまでのゲストに加えSteve Vaiもゲスト参加。Pink Floyd風アンビエントの「I. Adrift」を抜け、「II. I Am I」ではフックの効いたシンフォニック・ドゥームメタルを展開。「III. There Be Monsters」ではエスニックな雰囲気から再びエクストリームに感情を突き動かし、後半ではDream Theater的インストパートも。「IV. Curious Gods」では#7,8の再来を思わせるミュージカル風インターバルで、ひたすら実験的な香りが漂った後ハードな「V. Silicon Scientists」へ。大団円となる「VI. Here Comes the Sun」ではモダンなDjentなどへの流れも感じさせつつやはり一筋縄ではいかない高度なシンフォニック・プログレを披露。ヴァイのソロもこれ以上ない見せ場となっています。
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タグ: シンフォニック・ロックプログレッシブ・メタルロックオペラ米プログレDevin Townsend加プログレ
関口竜太
東京都出身。ギタリスト、音楽ライター。 14歳でギターを始め、高校卒業と同時にプロ・ギタリスト山口和也氏に師事。 ブログ「イメージは燃える朝焼け」、YouTube「せっちんミュージック」、プログレッシヴ・ロック・プロジェクト「Mind Over Matter」を展開中。2021年から『EURO-ROCK PRESS』にてライター業、書籍『PROG MUSIC Disc Guide』にも執筆にて参加。
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