Twitterの演奏動画アップロード問題。SNSと著作権の関係〜もしTwitterがJASRACと契約を結んだら。

こんにちは、ギタリストの関口です。

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緊急事態宣言の発令から2週間、この2週間で人との接触を8割減らせれば新型コロナウイルスの感染者をピークアウトさせることができるとされていますが、みなさまいかがお過ごしでしょうか。

好きなアーティストのライブが中止になった友達とご飯に行けないなど不便は数えきれないほどありますが、少し前にはそんなフラストレーションを解消させようとSNSを中心に歌のコラボや演奏動画がよく上がりました

うちで踊ろうが与えた影響


中でも星野源さんの「うちで踊ろう」はそのパイオニアとして特に有名です。

この企画が大成功だった理由には、

  • シンプルに曲がいい
  • 星野源という今もっとも影響力のある人物による発信
  • 星野さんのイメージに合っている
  • これをどう調理したらいいのか明確な指示がある
  • 様々な著名人とのコラボにも柔軟に対応できる
  • SNSを利用したその後の音楽的遊びの先駆けになれる

などが挙げられます。この映像と共に安倍総理が自宅でくつろぐ様子を合わせたツイートがかなりの物議を醸し、以降は大分飽和状態になりましたが日々の窮屈さを緩和させる役目として2週間ばかり心に少しの余裕を持てた人もいたのではないでしょうか。

バトンが生み出した気軽さと警鐘


さて、「音楽的遊びの先駆けになれる」というのはあながち嘘ではなく、実際にこれを受けTwitterでは演奏をバトンで繋ぐ「#リフつなぎ」「#ソロつなぎ」というものも流行りました。

バトンとは…
あるお題に対し自分がそれをこなしたら、SNSのフォロワーや友人を指名し同じお題をこなしてもらう。指名されたフォロワーや友人はそこからまた別の人を指名していく。mixiなどで2006年ごろから見られた動きで、指名先には事前の告知がなされないゲリラさとSNS社会らしく気軽に承認欲求を満たせるためしばしば人気だが、蚊帳の外にいる多くの人からは場合によっては煙たがれることもある。

このバトンのシステムを利用し、ギタリストやキーボディスト、ベーシスト、ドラマー、その他のインストゥルメンタリストたちが各々に現存する曲のリフやソロを弾きTwitterにアップ。著名人も参加したことでこれらのハッシュタグは「うちで踊ろう」ほど主流ではないものの人前で楽器の演奏をすることを拒まれた多くの人にとってカンフル剤となったのは間違いないでしょう。

と、結構心温まるいい話じゃないかと思うのですが問題はここから。

この「#リフつなぎ」「#ソロつなぎ」に対して一意見としての警鐘が鳴らされます。それがこちらのツイート。

みんな動画上げてるけど…基本、
Twitterにカバー動画UP→NG
Youtubeにカバー動画UP、Twitterにリンク貼る→OK
とのこと。(TwitterはJASRAC契約してない)それで再生回数伸びた!ヤッホーって盛大に著作権侵害してる可能性あり。

プロギタリスト山口和也さんのこちらのツイートは、瞬く間に楽器演奏者たちへ広まりました。

著作権とJASRACの関係


まず、著作権について簡単にご説明します。

一般的に世に出た芸術作品にはそれを作った人(たち)への権利というものが存在します。美術なら絵や彫刻やキャラクター、文芸なら物語や文章そのもの。当然音楽にも存在し楽曲やそこに含まれる情報(作詞、作曲、編曲、歌を含む演奏、歌詞など)はそれらを作った人の知的財産となっています。

その知的財産、言わば作り手の思想や感情や人間性を守るためこれを自分のものとし守れる権利が著作権となります。そして音楽という媒体に与えられた著作権をほぼ独占的に管理しているのが一般社団法人日本音楽著作権協会JASRACです。

この著作権とJASRACの問題はしばしばネット上でも議論されて、その多くは「権利という市場」を事実上独占しているJASRACへの批判と、一部ネットの噂を引用し闇を暴いてやるといった当てつけのようなものなのですがここではあえてそこには触れないでおきます。

JASRACが行なっている「著作権管理」というのは要するに楽曲とそれを作ったアーティストの権利を守ることにあります。

「守る」からには「犯される」危険性があるということですが、ここで登場するのが私的利用という概念。すなわち音楽を個人で楽しむその線引きですね。

「個人」の定義は様々ですが、例えば自分が買ってきたCDを別のCD-Rにコピーしたとしても自分が移動中聴きたいなどの理由で個人的に使うのならセーフです。ですが、コピーしたCD-Rを誰かに譲渡したり公共の場で無断で使用したりすると、本来そこでアーティストに入るべき収益が入らないという事態が起こります。これがアウト。

多くの音楽家はこの収益を生業としているため、本来あるべき収益がないというのは死活問題です。そこで楽曲の著作権管理をJASRACに委託することで自分では把握しきれない不本意な楽曲使用も制限できるということになります。

包括契約とSNS


逆に、アーティストの楽曲を公共的な目的での使用、もしくはカバーなどの二次創作に使いたいということもJASRACに申請することで可能です。その場合、曲の単体での申請の他、包括契約というものが存在します。

この包括契約は企業などが慢性的にJASRAC管理楽曲を使用したい場合、いちいち曲を指定して都度申請を出すのが煩わしいため包括的に契約を結び一挙に楽曲を使えるようにするというもの。TV番組のBGMでアーティストの楽曲が使えるのはそういった事情があります。

そして、この包括契約はYouTubeやニコニコ動画などの動画投稿サイトも結んでいるため、アーティストの音源を使用し安心して演奏動画をアップロードすることができます。しかし、Twitterはこの包括契約を結んでいない&不特定多数が見られ私的利用の一線を超えているので動画サイトのリンクはOKだけど直接動画をツイートに貼り付けるのはNGになるということです。

Dream_Theater___Sacrificed_Sons_Interlude【9_11】_-_YouTube_🔊

YouTubeで管理楽曲を使用した場合、このように楽曲やアーティストの詳細、管理団体などが記載されます。

なお、JASRACなど管理団体に登録されていない個人管理の楽曲など、契約を結んでいない楽曲を無断使用した場合も同様に著作権侵害となります。

著名人はどうしていたか


さて、この一連のバトンでしたが、参加者の中には著名なミュージシャンも見られました。楽曲を流すことが問題となっていた中で彼らはどうしていたのでしょうか。

例えばserial TV dramaの新井弘毅さん。EXTREMEの「He Man Woman-Hater」を弾いているのですが、バックで鳴っているのはメトロノームです(原曲もメトロノームなんですが…)。

凛として時雨のギタリストTKさんも同じくアカペラでの演奏。著名な方の演奏動画の中にはご自分の曲を演奏しているケースが多く、訴えを起こされる可能性が低いと思われますがSNSに演奏動画を上げること自体がこの場合のNGなのでグレーではあります。

なお、個人でJASRACに届け、Twitterに動画を上げるなどした場合はこの限りではありません。

演奏動画を上げる際のポイント

  • 個人で使用の申請を出す
  • 自作曲を使用する

Twitterが包括契約をしたらどうなるか


ここでもう一つ言われていたのが、演奏者に対しての批判、JASRACに対しての批判はそこそこ見受けられたのにそもそもこういう事態を想定して包括契約をしていないTwitterへの批判というのは二つに比べると少なかったという点。

Twitterの売り上げは年間35億ドルにも達するそうなので、それならいっそ包括契約を結んだ方がよりコンテンツとして発展するのでは?というのはもっともらしい見解です。

そこで仮にTwitterがJASRACと契約した場合想定されることが二つあります。

①動画に広告が付く

いくら黒字が続いていたとしてもTwitterはボランティアではありません。もしJASRACと契約を交わした際には契約金に等しい売り上げを出さなくてはいけません。Twitterでは現在2分20秒までの動画投稿が可能になっていますので、例えば1分を超える動画には再生前に広告が流れるなんてことも考えられます。

②有料プランが登場

そんな動画再生の煩わしさに業を煮やすユーザーが現れることは自明の理なので、広告表示をフリーにする月額制の有料プランが設けられるかもしれません。そこまで高くはないと思いますがなんとなく重りを背負った気分になりますね。

・・・面倒ですよね!?わかります!線引きを守りましょう!

最後に


子どもの時から誰の手も及んでいない遊び場というのはかけがえのないものでした。それがいつしか自分の知らない大きな存在によって管理され閉め出される事例をいくつも見てきました。

今すぐ罪に問われることはないかもしれません。もっと言えばカバーしてくれたアーティストご自身も嬉しく思っていることすらあります。ですがそれはあくまで個人の意見。今のご時世、誰かに管理されていないシステムの方が珍しい中で、Twitterの演奏動画はまだその手が及んでいないかけがえのない遊び場です。

リツイートやいいねで再生回数が増えやすいため上げている側は気持ち良かったりしますが、巡り巡って誰かの迷惑にならないよう今からしっかり自制していくことが肝心です。もしそうでなければ遅かれ早かれ上記で想定したようなことが起こるのは確実でしょう。

あと最後に、本記事についてなるべく中立に書いたつもりですがどちらかに偏っていたら申し訳ありません。またJASRACや著作権についてもし間違った説明をしていたら単に僕の勉強不足です、精進します。

関口竜太

東京都出身。 ​14歳でギターを始め、高校卒業と同時にプロギタリスト山口和也氏に師事。ロックやメタルに加え、ブルース、ファンク、ジャズなど幅広い演奏や音楽理論を学ぶ。 プログレッシブロック/メタルの大ファン。自身が企画するプログレッシブ・ロックプロジェクト「Mind Over Matter」を展開中。

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