Katatonia「City Burials」: 北欧にそびえる深淵の達人。テクニカルな一面も開示した2020年最新作!

こんにちは、ギタリストの関口です。

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本日はリリースされたばかり、Katatoniaの2020年最新作をご紹介します!

City Burials / Katatonia


シティ・ベリアルズ[CD(日本語解説書封入)]

Katatonia(カタトニア)はスウェーデンのプログレッシブ・メタルバンド。

来歴


北欧ならずとも世界的大都市ストックホルムで1991年、ギターボーカルJonas RenkseとリードギタリストAnders Nyströmを中心に結成されたメタルバンド。

結成当初はThe Peaceville Three(イギリスのPeacevilleレコード所属のMy Dying Bride、Paradise Lost、Anathema)に並ぶデス・ドゥーム系やゴシックメタルのパイオニア的バンドとして活動。ボーカルであるレンクセがドラムを、ギターのニーストロムがベースを兼任しながら少ない戦力で音源の制作に励むこととなります。

ただ、当時ゴシックメタルというのは80年代のヘヴィメタル全盛期の流れを受けテクニック面を控えめにする代わり、よりボドムを効かせたヘヴィネスチューンにシフトしていく流行ではあったので、彼らの最初のリリースに当たるデモ作品『Jhva Elohim Meth… The Revival(1992)』は主にヨーロッパを中心に注目を集めることとなります。

この人気はバンドに新メンバーの風をもたらしベーシストにGuillaume Le HucheやMattias  Norrman、ドラムにDaniel Liljekvist、セカンドギターにFredrik “North” Norrmanなどが参加。音楽性をより強固なものとしていきます。

1996年の2ndアルバム『Brave Murder Day』のころには声帯治療のためバンドを一時離脱したニンクセに代わり、同じストックホルム出身で結成も同期、音楽的嗜好も似ているOpethのMikael Åkerfeldtが加入、ニンクセの復帰までバンドの存続を守ります。

復帰後、Peacevilleに移籍したKatatoniaでしたが 以前のようなデスボイスで声帯に負荷をかけられないと悟ったニンクセはデスメタルというバンドのスタイルを見直し、1999年リリースの『Tonight’s Decision』以降、クリーンボイスのオルタナ&プログレ方面へ舵を切ることとなります。これにはミカエルの一時加入も少なからず影響が及んでると思われます。

2000年以降は概ね3〜4年のスパンでコンスタントに作品をリリース。2009年にはアルバムリリース後にマティアスが脱退し、新たにベーシストNiklas Sandinが加入。2016年の前作『The Fall of Hearts』までには新ドラマーDaniel MoilanenとギタリストRoger Öjerssonが加入しており、この5人による最新作が本作『City Burials』となります。

アルバム参加メンバー


  • Jonas Renkse – Vocal, Guitar
  • Anders Nyström – Guitar, Vocal
  • Niklas Sandin – Bass
  • Daniel Moilanen – Drums
  • Roger Öjersson – Guitar

その他参加ミュージシャン

  • Anni Bernhard – Chorus

楽曲紹介


  1. Heart Set to Divide
  2. Behind the Blood
  3. Lacquer
  4. Rein
  5. The Winter of Our Passing
  6. Vanishers
  7. City Glaciers
  8. Flicker
  9. Lachesis
  10. Neon Epitaph
  11. Untrodden
  12. Fighters

芯のぶれないゴシックな音楽性を提示しつつテクニカルな演奏にも注目の最新作。

#1「Heart Set to Divide」は幽玄なストリングスとレンクセのクリーンボーカルからの導入。先導するギターに連れられ1:40〜からのバンドインは北欧らしいタイトなアンサンブルが本作の出来の良さを期待させます。ヘヴィにチューニングされた変拍子ギターリフとDaniel Moilanenのエキサイトなフィルの数々に息を飲むオープニングとなっています。

#2「Behind the Blood」は先行で配信されたシングルで、Katatoniaには珍しくハイテクニカルなナンバー。序盤からニーストロムのギターソロが炸裂するメタルチューン、暗い雰囲気の中にもメロディアスなサビが用意されていたりとアクセシブルな一曲です。

さらに先行配信されたエレクトリカル要素のある#3「Lacquer」、近年のOpethに近い#4「Rein」#5「The Winter of Our Passing」などは動と静をうまくコントロールしながらデジタルなスパイスとパーカッシブな側面を盛り込み、Steven Wilsonなど最新の音楽情勢を見据えたアレンジが非常に特徴的。

#6「Vanishers」では6/8の壮大なストリングスバラードを展開。スウェーデンのエレクトロ・ポップ・ロックバンドFull of KeysのAnni Bernhardが参加しレンクセと共に美しいハーモニーを奏でています。

The Mars VoltaやRammstein系の金属感が香る#7「City Glaciers」#8「Flicker」。アルバムのタイトルにもある「City」という単語ですが、これが本作に込められた冷たいメッセージにうまくマッチングし、非常に無慈悲でありながら甘美で、美しいメロディに浸れる展開が魅力です。基本的にナチュラルでおとなしいボーカルですが、#8ではワウやワーミーを多用した荒々しいギターやエレキピアノによる「メタル的怒り」が爆発しています。

2分弱ほどのピアノバラード#9「Lachesis」を挟み、続いて訪れる#10「Neon Epitaph」。変拍子を混ぜ若干ジェンティな音作りのギターリフを始め全体的にタイトに仕上げられたヘヴィナンバーでレンクセの切ない歌声が絶妙に染み入ります。

アルバムの中盤にはデジタルスパイスな楽曲が配置されていると言いましたが、終盤のバラードを担当した#11「Untrodden」もその一つ。霧のように包み込むシンセやクアイア、コーラスにもう一味加えるかのようなパーカッションと、それらと対を為すようなカッティングやドラムのメリハリある音像がこの曲を曖昧に終わらせない構築です。2:22〜のエモーショナルなワウソロも必聴。

そしてラストとなる#12「Fighters」はこれまでの幻想的なゴシックプログレを打ち破るかのような攻撃的メタル。わかりやすいリフやキャッチーなテーマに#2や#11に続いて繰り出されるテクニカルな速弾きソロは彼ら流のヘヴィメタルへの敬意であることは間違いありません。前作『The Fall of Hearts』と比べるとよりゴシックに偏りながらもアグレッシブな方向へ演奏の幅を広げたと言えそうです。

関口竜太

東京都出身。ギタリスト、音楽ライター。 ​14歳でギターを始め、高校卒業と同時にプロ・ギタリスト山口和也氏に師事。 ブログ「イメージは燃える朝焼け」、YouTube「せっちんミュージック」、プログレッシヴ・ロック・プロジェクト「Mind Over Matter」を展開中。2021年から『EURO-ROCK PRESS』にてライター業、書籍『PROG MUSIC Disc Guide』にも執筆にて参加。

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