Steven Wilson「To the Bone」: プログレッシブである前に野心的であれ!Porcupine Treeなどで知られる英国プロデューサーの2017年5th作!
by 関口竜太 · 2020-04-22
こんにちは、ギタリストの関口です。
今日はSteven Wilsonのソロ2017年作をご紹介していこうと思います!ニューアルバムも近いので何かとヒントになるのではないでしょうか。
To the Bone / Steven Wilson
Steven Wilsonはイギリスのミュージシャン、ギタリスト及び音楽プロデューサー。
原点に立ち返る野心的ポップミュージック
1987年にTim Bownessと開始したユニットNo-Manや、そこからソロプロジェクトに派生しやがてバンドへと昇華したプログレッシブ・ロックバンドPorcupine Treeのギタリスト。
Pocupine TreeではPink Floyd寄りのアンビエントを持ち合わせたプログレや、よりハードな音楽性の追求を行なっていましたが2008年からはさらに自身の名義によるソロ活動を開始、バンドとすげ替える形で現在はソロが主流となっています。
音楽プロデューサーとしても敏腕でOpethの名盤『Blackwater Park』やKscopeレーベルに移籍したAnathemaの心機一転アルバム『We’re Here Because We’re Here』などのプロデュースも担当しています。
2020年最新作の発表を受け、本作『To the Bone』は現状リリースされている2017年の前作。悲劇のコンセプト作として評価の高い『Hand. Cannot. Erase.』より2年、ハードでインテレクチュアルな音楽性を引き継ぎながら原点への立ち返りを思わせる作品です。
アルバム参加メンバー
- Steven Wilson – Vocal, Guitar, Bass on #1-3,5,8,11, Keyboard, Production
その他参加メンバー
- Ninet Tayeb – Vocal on #1,3,4,6,7,8
- David Kollar – Guitar on #9,10
- Paul Stacey – Guitar solo #5
- Nick Beggs – Bass on #6,9
- Robin Mullarkey – Bass on #4,10
- Adam Holzman – Piano, Clavinet, Organ, Solina strings
- Craig Blundell – Drums on #1,3,8,9,11
- Jeremy Stacey – Drums on #1,2,4-6,10
- Pete Eckford – Percussion on #1,2,6,8,10
- Mark Feltham – Harmonica on #1,5
- Sophie Hunger – Vocal on #9
- Jasmine Walkes – Spoken word on #1
- David Kilminster – Backing vocal on #1,2,4,11
- Dave Stewart – String arrangements on #2,4,9,10,11
- The London Session Orchestra – Strings on #4,9,10,11
- Synergy Vocals – Choir on #11
- Paul Draper – Sequencer on #1
- Andy Partridge – Lyrics on #1
楽曲紹介
- To The Bone
- Nowhere Now
- Pariah
- The Same Asylum As Before
- Refuge
- Permanating
- Blank Tapes
- People Who Eat Darkness
- Song Of I
- Detonation
- Song Of Unborn
『Hand. Cannot. Erase.』では後期Porcupine Treeのようなヘヴィさやバンドサウンドのキレの良さが持ち味でしたが、本作では原点であるNo-ManやPeter Gabrielの『So』を思わせるエレクトリカルサウンドで仕上げたポップな内容。
タイトルナンバーでありオープニングの#1「To The Bone」。最新作で垣間見せるエレクトリカルサウンドへの過渡を思わすロックテイストが残った楽曲。印象的なテーマのメロディやパーカッシズムなドラム、トレモロエフェクトにより楽曲に準拠したギターサウンドなどが特徴的です。バックに参加しているのはイスラエルの女性シンガーNinet Tayebで、彼女は他5曲でボーカル参加しています。
#2「Nowhere Now」はパーカッションとアコギが印象的なミドルナンバー。Peter Gabrielぽさもあり、変拍子のヴァースや豊かなコーラスも聴きどころのメロディアス・ポップです。
アルバムに先駆けMVの制作がされた#3「Pariah」。ニネットとのツインボーカルが特徴的なピアノバラードで、後半はストリングスの厚みに圧倒されます。ドラムはCraig Blundell。
#4「The Same Asylum As Before」は#2の流れを汲シンプルなアコースティック・ポップとロックサウンドの二面性を持った一曲。中盤からはPorcupine Treeのような激情型のリフも繰り出されます。
ロックバラードとなる#5「Refuge」。パーカッシズムで丁寧に作りこまれた展開が非常に美しいです。スティーブンが聴かせるファルセットの他、イギリスのハーモニカ奏者Mark Felthamが参加した曲で、まるでギターソロのように響くエモーショナルなソロはベテランの風格を感じさせます。またギターソロもOasisなどの作品参加もあるイギリスのギタリストPaul Stacey。
哀愁たっぷりのバラードから、#6「Permanating」は軽快なピアノとクリシェ進行が特徴的なニューウェーブ系ポップソング。どこかProcol Harumのような雰囲気と旨味の強いスティーブンのソロがおススメです。
再びニネットをゲストに迎えたバラード#7「Blank Tapes」があり、#8「People Who Eat Darkness」はLed Zeppelinを彷彿とさせるブリティッシュロック。ロータリーサウンドのギターとプログレッシブなキメとブレイクもファンにはたまらないシーンの一つ。Pete Eckfordのパーカッションもご機嫌で心地いいです。
スイスのシンガーSophie Hungerを迎えた#9「Song Of I」。怪しげな雰囲気で展開していく難解ポストロックですが、この曲からラストまで担当しているThe London Session Orchestraの生シンフォサウンドは必聴です。
9分超えの大作となった#10「Detonation」。Porcupine Treeや前作のアルバムにも見られた終盤のハイライトソング。聞く話によるとスティーブンはメタルをあまり聴かないという話なのですが、この曲からは存分にメタルのエッセンスを感じ取れます。パーカッションに続くファンクなベースや徐々に加熱していくクロージングなどSteven Wisonワールドに浸れる贅沢な9分です。
ラストは#11「Song Of Unborn」。これまでの流れや意図をしっかりと汲んだバラードでオーケストラ以外はシンプルなバンド構成。ナチュラルなスティーブンの歌声と幻想的なクアイアで穏やかに締めるラストとなっています。
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タグ: 英プログレNo-ManPorcupine TreeSteven WilsonTim Bowness
関口竜太
東京都出身。ギタリスト、音楽ライター。 14歳でギターを始め、高校卒業と同時にプロ・ギタリスト山口和也氏に師事。 ブログ「イメージは燃える朝焼け」、YouTube「せっちんミュージック」、プログレッシヴ・ロック・プロジェクト「Mind Over Matter」を展開中。2021年から『EURO-ROCK PRESS』にてライター業、書籍『PROG MUSIC Disc Guide』にも執筆にて参加。
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