No-Man「Love You To Bits」: 英カリスマユニットによる11年ぶりの2019年作。表と裏が延々と繰り返されるカラフルなアシッド・ポップ!
by 関口竜太 · 2020-04-09
こんにちは、ギタリストの関口です。
本日は久々のリリースとなるNo-Manの最新作をご紹介します。
Love You To Bits / No-Man
No-Man(ノーマン)はイギリスのアート・ロック、ドリーム・ポップユニット。
来歴
今ではソロアーティストとして国内外で人気を博すシンガーTim Bownessと、ギタリスト・音楽プロデューサーのSteven Wilsonによるアート・ロックユニット。No-Manの歴史は長く、結成は1987年。
1986年にSteven WilsonによるソロプロジェクトのバンドNo Man Is An Islandがその原型とされ、これはプログレッシブ・ロックとシンセポップをブレンドした独自の音楽性を有していました。バンドは「From a Toyshop Window」というインスト曲を作るまでは至りましたが、ボーカリストが欲しいという希望により、当時リバプールを拠点に動くアート・ポップバンドPlentyのボーカルTim Bownessと合流することとなります。
No Man Is An IslandはPlastic Head Recordsよりリリースの「The Girl From Missouri」にてめでたくデビューを果たしますが売れ行きは閑散たるものでバンドは今後の選択を早くも迫られます。
1990年、バンド名をNo-Manへと縮め、ヴァイオリニストBen Colemanとのトリオで活動を再開。自主制作された60年代のDonovanの楽曲をトリップ・ホップアレンジしたシングル「Colours」は国内の音楽誌で注目を浴び、これがきっかけでリリースされたミニアルバム『Loveblows & Lovecries – A Confession』にてイングランドのツアーも敢行。この時のツアードラマーにはChris Maitlandが参加しており、後にPorcupine Treeでも功績を残すこととなります。
1994年に2ndアルバム『Flowermouth』をリリースした段階でヴァイオリニストのベンがバンドを脱退。No-Man自体もその年でライブ活動を一時打ち止め、不定期のアルバムリリースを行う他は、ティムとスティーブンのそれぞれがソロ活動へ専念していきます。
2019年にリリースされた本作『Love You To Bits』はそんな彼らにとって実に11年ぶりとなるニューアルバムです。
アルバム参加メンバー
- Tim Bowness – Vocal, Synthesizer、Lyrics
- Steven Wilson – Instruments、Chorus
その他参加ミュージシャン
- Adam Holzman – Keyboard
- David Kollar – Guitar
- Ash Soan – Drums
- Pete Morgan – Bass
- Dave Desmond Brass Quintet – Orchestration
楽曲紹介
- Love You To Bits (Bits 1-5)
- Love You To Pieces (Pieces 1-5)
#1「Love You To Bits」は5パート17分に渡る組曲。長尺ではありますがトラックもきっちり5パートに分かれておりシーンにより曲のタイプが若干異なっていきます。ポップ、ロック、エレクトロニカやファンタジックなアンビエントを含んだカラフルなミラーボールは10年というブランクを感じさせず、二人の持つカリスマ性と研ぎ澄まされたセンスが存分にかけ合わさっています。
個人的に特筆したいのは「Bit4」。ここではファンキッシュなギターリフからエレクトロビートにティムのボーカルが乗っていくアシッド系のシーン。2:50〜はトリッキーでアヴァンギャルドなギターソロが2分以上に渡って展開されておりこの17分におけるハイライトとも取れそうです。
#2「Love You To Pieces」は、こちらも19分に迫ろうという長尺曲で、#1とは表裏一体のテーマとなっている曲。ロックな#1と違い全編でエレクトリカル・ポップが展開されています。「Pieces2」ではスティーブンのソロ作「To the Bone」にも参加しているAdam Holzmanのキーボードソロが登場。ここでは若干歪ませたオルガン系のサウンドを披露していますが、単にテクニカルで古臭いプログレにはなっておらずダンサブルなバックビートとうまく絡んだミックスが素晴らしいです。
なお、ギターで参加しているDavid Kollarも「To the Bone」に参加している他、同作品が本来陰鬱なスティーブンのソロ作とは異質のポップな仕上がりになっていることで、このアルバムとの関連性も考察されます。
トラック数でいえば10曲ですが、総再生時間は実際は36分とコンパクトな内容になっていますので、プログレッシブかつシティ感溢れるサウンドスケープ体感するならうってつけの一枚です!
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タグ: ポスト・ロック英プログレNo-ManSteven WilsonTim Bowness
関口竜太
東京都出身。ギタリスト、音楽ライター。 14歳でギターを始め、高校卒業と同時にプロ・ギタリスト山口和也氏に師事。 ブログ「イメージは燃える朝焼け」、YouTube「せっちんミュージック」、プログレッシヴ・ロック・プロジェクト「Mind Over Matter」を展開中。2021年から『EURO-ROCK PRESS』にてライター業、書籍『PROG MUSIC Disc Guide』にも執筆にて参加。
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