Pure Reason Revolution「Eupnea」: 長い眠りから復活を果たしたプログレ界の革命児。10年ぶり最新作が強過ぎた!
by 関口竜太 · 2020-04-05
こんにちは、ギタリストの関口です。
本日はリリースされたばかり、注目のエレクトロプログレ最新作をご紹介します!
Eupnea / Pure Reason Revolution
Pure Reason Revolution(ピュア・リーズン・レヴォリューション)はイギリスのプログレッシブ・ロックバンド。
来歴
2002年ごろから活動を開始したプログレバンドThe Sunset Soundが前身。
こちらのメンバーはギタリストJon CourtneyとドラムAndrew Courtneyのコートニー兄弟、そして90年代半ばにアンチSpice Girlsを掲げたガールズバンドPeriod PainsのベースボーカルであったChloë Alperと、マルチプレイヤーであるJim Dobsonをキーボードに迎えた4人組でした。
バンド名は途中The WowやPendulum Dawnと言った風に変わっていきますが、2003年にPure Reason Revolution(PRR)に改名すると翌2004年にはインディーレーベルPoptonesから一度きりの契約という条件でCD制作の話を持ちかけられます。
そうしてリリースされたのがデビューシングル『Apprentice of the Universe』。このシングルが国内チャートで74位にランクインしたことを受けて世間からPRRへの関心が高まることになります。
2005年にジョンがバンドを一時離脱しますが、当時はイギリス国内の音楽フェスへの出演やMew、Hope of the States、Secret Machinesらとの共演を経てバンドのパフォーマンスは独自性を増していました。My Spaceなどインターネットを通じた音楽的交流も見受けられる背景から徐々にリスナーの期待も高まり、2006年に1stアルバム『The Dark Third』をリリースすることになります。
『The Dark Third』のプロデューサーにはRush、Porcupine Tree、Gentle Giant、Dream Theaterで知られるベテランPaul Northfieldが担当しましたが、鳴り物入りのリリースとは裏腹にセールスは予想を大幅に下回ることとなります。
Sony/BMGから除名され、アンドリュー、ドブソンと相次いでオリジナルメンバーが脱退する中、バンドは国外へのリリースに向けてなんとかInside Outでのライセンスを獲得。ヨーロッパを中心にこの1stアルバムを展開します。
ちなみにギターボーカルのジョンの後任となったのはJamie Willcox、ドラムのアンドリューの後にはPaul Gloverが加入。キーボードだったドブソンの穴を埋めることはありませんでしたが、それが後々のスタイルに繋がってきます。
メンバーの相次ぐ脱退でグラついたPRRでしたが、ライブではジェイミー、クロエの二人がそれぞれギターとベースを兼任しながらキーボードも演奏。さらにアカペラを歌ったショウなどを行いそれが個性となり定着していきます。
2009年の2ndアルバム『Amor Vincit Omnia』ではそのスタイルが反映され、ブリブリのシンセベースや打ち込みを用いたダンサブルな楽曲と男女のツインボーカルを構える仕様に。しかしコンセプトを設けたアルバムの構築によりプログレッシブさも失わないバンドとしてPRRはプログレッシブ・エレクトロ・ロックという新境地の開拓に成功します。なお、この頃にはジョンがバンドの復帰を果たしています。
『Amor Vincit Omnia』で提示したエレクトロサウンドこそ『The Dark Third』の脱却でありその念願がついに叶うのですが、その後2010年には3rdアルバム『Hammer And Anvil』をリリースし翌年にPRRは解散をすることとなります。
長らく消えていたバンドでしたが、この名前が再浮上したのは2018年。オランダで開催されるプログレフェス「Openluchtheater 2019」のヘッドライナーにPRRが抜擢されたというニュースが飛び込みます。この再結成に踏み込んだメンバーはジョンとクロエの二人だけでしたが、本作『Eupnea』を持って完全復活、その革命的スタイルに再び期待が集まります。
アルバム参加メンバー
- Jon Courtney – Vocal, Guitar, Keyboard
- Chloë Alper – Vocal, Bass, Keyboard
楽曲紹介
- New Obsession
- Silent Genesis
- Maelstrom
- Ghost & Typhoons
- Beyond Our Bodies
- Eupnea
スタイルを確立した2nd、3rdよりもデビュー当時のサイケプログレを伺わせる2020年最新作。
先行配信されていた#1「New Obsession」は厳かなシンセストリングスからパワーのあるドラムとギターのアルペジオで導入していくオープニング曲。男女ツインボーカルとなったRob Thomasという印象で、シンセとギターによるロックなリフやバッキングでの刻みから徐々に緊張感を増していく構成となっています。
#1のエンドから繋がる#2「Silent Genesis」。こちらはPink Floyd的アンビエントのイントロでたっぷりと幻想に浸れる10分の長尺曲。それでいてバンドインした時のエネルギーはハードでえげつないものがありますが、ジョンとクロエのボーカルは繊細で美しいハーモニーを奏でています。7分過ぎからはメタル要素も垣間見れ、荒れ狂う展開からのヘヴィなリフに押しつぶされそうになります。
#3「Maelstrom」は打ち込みのドラムがパワフルに響く中でピアノとクロエの調和も素晴らしいバラード曲。R&Bの雰囲気やエレクトロポップの風情もありつつ、後半ではエレキによる16分の刻みもあるためロック好きも最後まで聴き入れる良曲です。
9分近い大作となった#4「Ghost & Typhoons」。怪しげなピアノのベースとクリーンのアルペジオに対しクリアな二人のボーカルとの対比がストレートに沁みます。2:30〜はシンセサイザーとドラムを全面に出しカタルシスであるロックパートへ。この辺はThe Mars VoltaやKatatonia、IQといったゴシックさも持ち合わせていますね。ダークな演奏にサビでの美しいコーラスも聴きどころです。
#5「Beyond Our Bodies」も冒頭は静寂ながら後半に向かうに連れアグレッシブに変貌していく作風となっていますが、そんな冒頭では少ない音数の上でユニゾンボーカルが聴けます。これは解散前にPRRが辿り着いたアカペラスタイルに近い形で、60年代のトラッドフォークの面影があり、バンドが持つサイケな雰囲気との親和性も良いです。
ラストとなる#6「Eupnea」は13分超えの大作。イントロではシンセと混じったようなデュエットに壮大さを感じ全盛期Pink Floydの雰囲気もたっぷり。David Guilmourのようなギターに導かれゆっくりと高揚していった後は、70年代王道のシンセリードにギターソロも加わってエモーショナルに盛り上げ、またストンと落とす。7:25〜はシンセとワウギターが絡んだディミニッシュ系リフと歪んだボーカルとのダーティなパートも健在で、終始幻想的でサイケデリックな音の空間に透明感の高いボーカルを堪能できる新感覚のサイケプログレ作です!
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タグ: エレクトロサイケデリック・ロック英プログレPink FloydPure Reason Revolution女性ボーカル
関口竜太
東京都出身。ギタリスト、音楽ライター。 14歳でギターを始め、高校卒業と同時にプロ・ギタリスト山口和也氏に師事。 ブログ「イメージは燃える朝焼け」、YouTube「せっちんミュージック」、プログレッシヴ・ロック・プロジェクト「Mind Over Matter」を展開中。2021年から『EURO-ROCK PRESS』にてライター業、書籍『PROG MUSIC Disc Guide』にも執筆にて参加。
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関口竜太
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