Karmakanic 「Entering the Spectra」: スウェーデン産シンフォ系プログレ!ファミリーの枠から飛び出し実験に富んだえげつなさが魅力の記念すべき1st。

こんにちは、ギタリストの関口です。

本日は僕の好きなバンドKarmakanicのデビュー作を掘り下げていこうと思います!

Entering the Spectra / Karmakanic


Entering the Spectra

Karmakanic(カーマカニック)はスウェーデンのプログレッシブ・ロックバンド。

来歴


北欧のネオプログレッシブ・ロックの重鎮The Flower KingsのベーシストJonas Reingoldが中心となり結成されたプログレロックバンド。

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元々セッションミュージシャンとしていくつものライブやレコーディングをこなす実力派のヨナスは2000年にThe Flower Kingsに加入。リーダーのRoine Stoltと共に北欧プログレのファミリー・ツリーの重要人物としてOpus AtlanticaTime Requiem、そしてKaipaなど様々なプロジェクトに参加していきます。

2002年にAndy Tillison率いるジャズ系プログレロックバンドThe Tangentと本バンドKarmakanicを結成。

結成当初のメンバーにはThe Flower KingsやこのThe Tangentにより繋がった人脈を活かしRoine Stolt、Jaime Salazar、Zoltan Csörz、Johan Glössner、Göran Edman、Robert Engstrand、Tomas Bodinらを招集していますが、現在はヨランとゾルタンを残しクインテットとして活動中。

ヨナスの持ち味である作曲センスを活かしメロディックな構成とラテン〜プログレッシブ・メタルなど多ジャンルを巻き込んだプログレッシブ・ロックを展開していきます。本作『Entering the Spectra』はそんなKarmakanicのデビュー作となります。

アルバム参加メンバー


  • Göran Edman – Vocal
  • Jonas Reingold – Bass
  • Tomas Bodin – Keyboard
  • ZoltanCsörsz – Drums
  • Jaime Salazar – Drums, Percussion
  • Roine Stolt – Guitar, Fx, Vocal
  • Johan Glössner – Guitar
  • Robert Engstrand – Keyboard

楽曲紹介


  1. The Little Man
  2. Entering the Spectra
    I. Yellow
    II. Blue
    III. Red
    IV. Purple
    V. Indigo
    VI. Green
    VII. White (The Innocent)
  3. The Spirit Remains the Same
  4. Cyberdust from Mars
  5. Space Race No: 3
  6. The Man In Thee Monn Cries
  7. One Whole Half
  8. Is This the End?
    I. The End
    II. The Light
    III. The Question
  9. Cello Suite No: 1 In G Major
  10. Welcome to Paradise

2002年当時にプログレ界で何があったかというと、スウェーデンから遠く離れたアメリカの地でSpock’s BeardのNeal Morseがバンドを脱退するという事態が起こります。一見何も影響はなさそうなのですが、ニールはロイネも参加していたスーパーグループTransatlanticの活動も休止してしまいアルバム制作が中断します。

ちょうどその時期と重なるKarmakanicのデビュー作はそんな手すきになったロイネが参加したこともありインプロビゼーションの強い自由な作風になっているのが本作の特徴です。

女性の語りで入る#1「The Little Man」から繋がる形でいきなりの大曲#2「Entering the Spectra」へ。こちらは12分ながら6パートに分けられ、テクニカルなインストパートやGenesisやYesの様な王道プログレのインターバル、70年代の香りを残しながらメロディックに仕上げたボーカルパート、King Crimsonばりのカオスなドラムソロからジャズ〜エスニックな雰囲気のパートまでバンドのポテンシャルを示すタイトル通りカラフルな一曲。

Transatlanticから引き継いだと言える曲で彼らがカバーしたProcol Harumの「In Held (‘Twas) In I」を彷彿とさせますね。

#3「The Spirit Remains the Same」は怪しくダークなリフながらメロディックな歌メロとスライドギターによるブルージィな雰囲気をミックスした曲。Pink Floydのような幻想的なアンビエントにヨナスのベースソロやメタリックでフリーな展開を有しています。

#4「Cyberdust from Mars」はロイネのアカペラと歯切れのいいギターで乗せていくナンバー。ダウナーな曲調に当時のギタリストJohan Glössnerの繊細なギターソロと疾走感のあるキーボードソロが混じります。

リヴァースするバックに合わせヨランのささやく様なボーカルで始まる#5「Space Race No: 3」。メタル寄りな楽曲は変わらず、エレピやシンセサイザーをフィーチャーした楽曲はMarillionとKansasの中間をいく雰囲気。

#6「The Man In Thee Monn Cries」はブリティッシュなゴシック感ととアメリカンなリヴァーブが特徴のミディアムナンバー。上空を漂うオルガンにシンプルなドラムとベースの上を這うボーカルで淡々と進行していく楽曲です。

続けてテクニカルなプログレメタルとなる#7「One Whole Half」。Spock’s BeardやDream Theater系統のテクニカルさにJeff Beckのようなフュージョン的実験も見られるインスト曲。中盤のベースソロはジャズセッションぽさもあり同時期に進行していたThe Tangentを思い起こさせる一曲です。

3部構成7分となる#8「Is This the End?」。Neal Morse風の聴かせるピアノを基調としたバラードで、歌メロはThe Flower Kingsに近いです。分厚い多重コーラスもこのバンドの聴きどころでこの曲に限っては4:40〜から。

#9「Cello Suite No: 1 In G Major」。バッハの無伴奏チェロ組曲をヨナスがベースでカバーした小曲。The Flower Kingsに入るまでスタジオミュージシャンとして裏方に徹してきたヨナスですが、バンド活動では実に生き生きとしたベースを演奏しており自重しないテクニックもこの曲にて披露しています。

ラストとなる#10「Welcome to Paradise」。9分の大作となる#9の続きを思わせるベースソロやQueen風のFXが流れメジャー系のハードロックリフへ。#2同様Karmakanicの実力を余すところなく引き出した楽曲で、ヘヴィなバッキングにキーボードソロがあったかと思うと思い出したかのようにスピードアップ、メタルへ変形したりと少々まとまりには欠けます。しかしながら、現在のラインナップとは違うメンバーとThe Flower Kingsの流用なイメージから少しでも脱したいと願うヨナスの実験が垣間見れる意欲作です。多少強引な展開があっても高い演奏力で乗り切ってくれるので終始安心して聴くことができます。

関口竜太

東京都出身。ギタリスト、音楽ライター。 ​14歳でギターを始め、高校卒業と同時にプロ・ギタリスト山口和也氏に師事。 ブログ「イメージは燃える朝焼け」、YouTube「せっちんミュージック」、プログレッシヴ・ロック・プロジェクト「Mind Over Matter」を展開中。2021年から『EURO-ROCK PRESS』にてライター業、書籍『PROG MUSIC Disc Guide』にも執筆にて参加。

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