Novena「Eleventh Hour」: 本格再始動を果たしたHaken – Ross Jennings在籍の準SG。待望の1stアルバムがハイクオリティすぎる!
by 関口竜太 · 2020-03-23
こんにちは、ギタリストの関口です。
今日は今年大注目の実力派プログレメタルバンドをご紹介します!
Eleventh Hour / Novena
Novena(ノヴェナ)はイギリスのプログレッシブ・メタルバンド。
来歴
2016年にイギリスを中心として結成されたプログレメタルの準スーパーグループ。バンドの顔となるのは今や世界的に多くのファンを獲得したHakenのボーカリストRoss Jenningsです。結成された2016年はちょうど『Affinity』の時期にも当たりますね。
このNovenaと言うバンド、ロスの他にデスプログレバンドSlice the Cakeの元ボーカルGareth Masonを招いたツインボーカル編成で、メロディアスなロスの対となり攻撃的なパフォーマンスを担当しています。
バックバンドは、イギリスのデスコアプログレバンドNo Sin Evades His Gazeに在籍するギタリストDan Thornton(レフティーで新興ギターブランドCarillion Guitarsを使用)とベーシストMoat Lowe。さらにイギリスのメタルコアバンドRavenfaceのドラマーCameron Spence、そしてソロミュージシャンとして活動していたHarrison Whiteもギターとキーボードを兼任。骨太なベテラン6人が揃っています。
バンドは結成した2016年にEP『Secondary Genesis』をリリース。ガレスのデスヴォイスとロスのクリーンを対比としたプログレメタルとして注目を浴びますが3曲入りのこのEPから久しく新情報が現れませんでした。
期待はしてたけど一発出して終わるのはスーパーグループの宿命かと諦めも半分でしたが、流れが変わったのは2019年。『Disconnected』というシングルが配信されMVも解禁となりました。
ここでは3年前に見せたような重々しいデスメタルは取り払われ真っ白な背景にロスの透き通るボーカルが冴え渡るタイトなポストロック系プログレメタルに進化しています。ガレスもテレキャスターを持ちロスをサポートするコーラスに回っていますね。
そして本作『Eleventh Hour』はそんな経緯から今度こそファンの期待に応えるべく投下された待望の1stアルバムとなります。
アルバム参加メンバー
- Ross Jennings – Vocal
- Gareth Mason – Vocal, Guitar
- Harrison White – Guitar, Keyboard
- Dan Thornton – Guitar
- Moat Lowe – Bass
- Cameron Spence – Drums
楽曲紹介
- 22:58
- 22:59
- Sun Dance
- Disconnected
- Sail Away
- Lucidity
- Corazón
- Indestructible
- The Tyrant
- Prison Walls
SEで成るオープニング#1「22:58」から繋がる#2「22:59」はもっともHaken的なプログレ曲。チャーチ感のある豊かなハーモニー、メロディアスなリードギターと変拍子を絡めたDjentyなギター、さらにロスとガレスのボーカルがスイッチ的に切り替わり曲を単調にさせません。
続く先行シングル曲#3「Sun Dance」はアコギの倍音と歯切れのいいリフが特徴的なメロディアスナンバー。イントロはプログレらしからぬシンプルさがこのバンドの特徴でこの曲では演奏のリバースを数秒流して歌に入っています。
#4「Disconnected」は上記でご紹介した通り、先行配信された爽やかなポストロック的ナンバー。#1を再度思わせるボーカルとクアイアのオープニングや印象的なスキッピングフレーズなどストレートの中にも柔軟性を持ち合わせたポップなリードソングです。続く#5「Sail Away」は4分ほどのピアノバラードとなっています。
大作志向になっていく折り返し地点#6「Lucidity」。タイトルの「Lucidity」とは「明快さ」の意ですが、静寂なピアノのイントロから7弦のボドムが一撃を与える10分のヘヴィプログレです。途中、ジャジーなギターソロにも注目。
スペイン語で心を意味する#7「Corazón」。ラテン音楽やスパニッシュ音楽の情熱的な印象を与えるフラメンコ系のギターとリズミカルなパターンが特徴。Angraのブラジリアンな雰囲気やNeal Morseっぽさもある本作のハイライトの一つです。
続いて#8「Indestructible」。MVも制作されたこの曲は、叫びの煽りもあるストレートロックナンバー。2:21からはガレスのデスヴォイスと共にボドムを効かせたドゥームメタルにも早変わりするモダンなアレンジが印象に残ります。
#9「The Tyrant」。プログレメタル〜Djent然とした7拍子のタイトなタイトなキメから展開していく10分半の長尺曲。デスボイスパートをフィーチャーしており初期Opethのような怪しげな雰囲気を纏ったメタルナンバーです。
ラストナンバー#10「Prison Walls」はこれまた15分の長尺曲。もったいぶらせずシャッフルビートから入っていく潔さが心地よく、サビは分厚いコーラスでメロハードの流れも汲んでいます。3:20〜はウッドベースの似合うジャジーな展開を経て徐々に形を変化させていく変幻自在な一面も。時にシンセとクリーンのアルペジオでPink Floydライクに、時にノイジーに盛り上げていく様はKing Crimsonも感じさせます。
ロスが本流とするHakenと言えばプログレッシブ・メタルでありながら70年代のジェントルなプログレ文化も引き継ぐため度々ポストDream Theaterの一角にも挙げられますが、Novenaはそこからさらにブラックメタル、ドゥームメタル色を強めた気配を感じ取れ、優等生なテクニカルさより攻撃性を求めるリスナーに是非オススメしたいです!
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タグ: スーパーグループプログレッシブ・メタル英プログレHakenRoss Jennings
関口竜太
東京都出身。ギタリスト、音楽ライター。 14歳でギターを始め、高校卒業と同時にプロ・ギタリスト山口和也氏に師事。 ブログ「イメージは燃える朝焼け」、YouTube「せっちんミュージック」、プログレッシヴ・ロック・プロジェクト「Mind Over Matter」を展開中。2021年から『EURO-ROCK PRESS』にてライター業、書籍『PROG MUSIC Disc Guide』にも執筆にて参加。
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