Altesia「Paragon Circus」: 今大注目の仏産DT系プログレメタル!デビュー作から大胆なオマージュたっぷりで玄人ほどニヤケる!
by 関口竜太 · 2020-03-20
こんにちは、ギタリストの関口です。
今日は日本でもまだ情報が少ないフランスプログレメタルのニューカマーをご紹介していきます!
Paragon Circus / Altesia
Altesia(アルテシア)はフランスのプログレッシブ・メタルバンド。
来歴
近年、PeripheryやAnimals As LeadersなどのジェントやPolyphia、CHONなどプログレッシブ・メタル・フュージョンと言うような、テクニカルかつ隙のない音楽性でありながらマニアックな支持層に止まらないバンドがメタルフリークの心を捉えて離しません。
一方で、ポストDream Theaterとでも言うべき往年のプログレメタルのスタイルに独自のスパイスを加え成長してきたバンドも依然として人気で、Arch / MatheosやLeprous、Thank You Scientist、Haken、Teramazeなど…挙げればキリがないですが、本日ご紹介するAltesiaもガッツリとこの部類に含まれていきます。
フランス、ボルドー出身のAltesiaは2017年に結成されたばかりの新生プログレメタルバンド。
リードギタリストのAlexis Casanovaとボーカル/ギターのClément Darrieuが中心となったこのバンドはドラムにYann Ménage、キーボードにHenri Bordillon、そしてベースにHugo Bernartという5人で構成され、うちドラムのミナージはギタリストとしても凄腕のプレイヤーなのでこれからマルチな活動も期待できる人物です。
バンドが影響を受けたアーティストは、Haken、Dream Theater、Steven Wilson、Leprous、Opeth、Between The Buried And Me、Porcupine Treeなどすでに多くのプログレファンたちが慣れ親しんだバンドばかり。2019年にリリースされた記念すべき1stアルバム『Paragon Circus』もこれらの影響を強く受けた強烈なデビュー作となりました。
アルバム参加メンバー
- Yann Ménage – Drums
- Alexis Casanova – Lead Guitar, Vocal
- Henri Bordillon – Keyboard
- Hugo Bernart – Bass
- Clément Darrieu – Vocals, Guitar
楽曲紹介
- Pandora
- Reminiscence
- Amidst the Smoke
- The Prison Child
- Hex Reverse
- Cassandra’s Prophecy
先述のバンドたちからの影響を一身に受けたゴシックサウンドプログレメタルの決定版!
シンセサイザーの静かなアンビエントと繊細なテンション感を持つ小曲#1「Pandora」からアルバムはスタート。第一印象はDream Theaterの「Misunderstood」とOpethの「Harvest」を融合させた感じですが、丁寧に重ねられたコーラスの脇でオブリ的に弾かれるクリーンのギターが単調になるのを防いでいます。
#2「Reminiscence」は本作のハイライトとも呼べる一曲。イントロはこれまたゴシックでテンションの強いピアノから始まり重たいメタルアンサンブルへ。変拍子を交えたウォーキングリフの上でソロが取られたり、オルガンのクラシカルな音色が採用されたりと新旧の融合が実に気持ちいい。11分のうち半分がインストパートに費やされる中で、ダリューの歌い上げるメロディも玄人仕立てで彼らがメロディ感を大事にしていることが認識できると思います。7:05〜からはシンセが先導を切るソロパート。カッティングギターや突如登場するブラスのクールジャズな雰囲気はメタリックに身構えていた耳をいい意味で裏切ってくれます。
#3「Amidst the Smoke」はヘヴィな演奏面と70年代を思わせるコーラスパートやサウンドメイクが特徴的な一曲。タイム感のいい2:08〜のギターソロは歪みを抑えカサノバの潜在的な巧さを伺わせます。3:36〜のインストパートではクリーンギターの脱力系リックと攻撃的なブレイクとのコントラストを楽しめるほか、そこへ絡んでくるハモンドオルガンもEmerson, Lake & PalmerやDeep Purpleを強く意識させます。
#4「The Prison Child」はブラックメタルのビートとクリーンボーカル、そしてプログレッシブな展開を併せ持つありそうでなかった新形態。ダリューの声はどことなくMikael Åkerfeldtを彷彿とさせるものですが、Steven Wilson期のOpethとHakenやDream Theaterが融合されたような叙情性に溢れる楽曲は、それを持ってAltesiaのオリジナリティと言える見事な立ち振る舞い。
バラードとエクストリームなメタルが同居した#5「Hex Reverse」。ボーカルの繊細さには先述のミカエル他、LeprosのボーカルEinal Solbergの影響も見受けられますが、前半と後半で声の印象がガラッと変わるのでそこはダリューの強みなのだと思います。
ラストとなる#6「Cassandra’s Prophecy」。17分を超える本作一の大作曲は、Metallicaを想起させるギターのアルペジオから幕を開けます。バンドインした後でのディミニッシュのキメや静を感じさせるAメロのヴァースではやはり「Blackwater Park」~「Damnation」辺りまでのOpethを強く呼び起こします。6:30〜のパートではテクニカルに混じりQueenのようなシアトリカルさがプッシュ。ストリングスとギターによるクラシックなユニゾンスケールアップも格式の高さを演出するのに一躍買ってます。8:45〜はプログレメタルなインストパート。不穏なコード進行に変拍子やポリリズムなどリズム遊び、アグレッシブな演奏もオルガンによりヘヴィ過ぎないようコントロールされていて、そうした細部へ渡る気遣いがこのアルバムの完成度を一つ上へ引き上げていると思います。
2019年の終わりにその年の自己プログレベスト的なまとめ動画を作ったのですが、このアルバムを知れたのがもし年内だったら間違いなくTOP10に入れていたことでしょう。まだまだオマージュ感の強い本作ですがこれからの動向にはチェックです!
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関口竜太
東京都出身。ギタリスト、音楽ライター。 14歳でギターを始め、高校卒業と同時にプロ・ギタリスト山口和也氏に師事。 ブログ「イメージは燃える朝焼け」、YouTube「せっちんミュージック」、プログレッシヴ・ロック・プロジェクト「Mind Over Matter」を展開中。2021年から『EURO-ROCK PRESS』にてライター業、書籍『PROG MUSIC Disc Guide』にも執筆にて参加。
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