IZZ「Don’t Panic」: UKテイストとアメリカらしいポップさを兼ね備えた爽やかプログレの決定盤!
こんにちは、ギタリストの関口です。
本日はアメリカのバンドIZZの2019年作をご紹介します!
Don’t Panic / IZZ
IZZはアメリカのプログレッシブ・ロックバンド。
来歴
IZZは1996年、キーボーディストTom GalganoとベーシストJohn Galganoの兄弟により結成されます。メンバーの招集に際して音楽大学の出身であったドラマーGreg DiMiceliと知り合うと、そこからさらにドラマーBrian Coralian、ギタリストPaul Bremnerと連鎖的にメンバーが合流。当初は別バンドに所属していたポールのサポートとしてベーシストのPhil Gaitaも在籍していました。
この時点でツインドラムというKing Crimsonを匂わす編成なのですが、1stアルバムに向けそこからさらにAnmarie ByrnesとLaura Meadeという二人の女性ボーカルをスカウト。計7人(8人)編成による巨大プログレバンドが誕生します。
バンドは1998年にアルバム『Sliver of a Sun』でデビューをすると以降2〜3年周期のコンスタントなリリースを続けていくこととなります。
記しておくべきは2002年の『I Move』。こちらでは半サポートであったフィルがその任期を終え脱退、ポールが正式メンバーに加わることとなります。
2009年『The Darkened Room』、2012年『Crush of Night』、2015年『Everlasting Instant』はそれぞれ三部作の構成とする一大プロジェクトも敢行しておりツインボーカルにツインドラムとは思えないクリアな音楽性と多彩なコーラスワーク、そしてポリリズムなど実験にも富んだ内容となりました。
UK五大プログレバンドや Renaissance、The Beatlesから影響を受けたガルガノ兄弟により、非常に理路整然とした作曲スタイルで生み出される曲たちは、同国のSpock’s Beardに近い構築力とポップなメロディを持っています。またバンドが兄弟から始まっているという点もよく似ていますね。
本作『Don’t Panic』は2019年にリリースされた現状最新作。The Beatlesを元祖とするフックの効いたポップセンスに、シンフォニック・ロックのエッセンスを織り交ぜたアメリカン・メロハードの王道をいくバンドとして注目です!
アルバム参加メンバー
- Tom Galgano – Keyboard, Vocal
- John Galgano – Bass, Guitar, Vocal, Keyboard
- Paul Bremner – Guitar
- Greg DiMiceli – Drums, Percussion
- Brian Coralian – Drums, Percussion
- Anmarie Byrnes – Vocal
- Laura Meade – Vocal
楽曲紹介
- Don’t Panic
- 42
- Six String Theory
- Moment of Inertia
- Age of Stars
タイトルナンバーである#1「Don’t Panic」は最もIZZをイメージするシティポップなリードトラック。女性ボーカル二人と共に歌唱にも参加するジョンはそのベースラインも相まってChris Squireを彷彿とさせます。
本作の長尺枠#2「42」。18分を超えるこちらの楽曲はYesやGlass Hammerがベースにある大作シンフォニック・ロックです。オルガンやメロトロンはもちろん、ツインドラムによる手数を増やしたドラミングから盛り上げて一気に落とすセッション的プレイイングまで、細部まで行き届いた繊細な音使いとモダンなアレンジが特徴。
そこへ加わるツインボーカルのハーモニーはMagentaをより贅沢に、District97をよりソフトにさせ、長尺ならではのアンニュイな雰囲気を溶かした爽やかな時間を与えてくれます。
長尺曲が終わると#3「Six Strings Theory」。タイトル通りアコギインストで、『Fragile』期のSteve Howeのような美しい仕上がりとなっています。
#4「Moment of Inertia」は初めピアノとオーケストレーションから始まるこれまた美しいシンフォサウンドですが、バンドインをすると一変。King Crimsonのような攻撃的なギターと変拍子、そして全編でインプロヴィゼーションの強い強烈なインストナンバーとなります。特に5分すぎのEmerson, Lake & Palmerを意識したモーグシンセや、ワーミーペダルを使用しトリッキーなソロを披露するギターとの掛け合いなど「常にプログレッシブであれ!」ということを音により切々と語ってきます。
#5「Age of Stars」でラスト。ジョンの印象的なベースリフとボーカルでソフトに展開していく9分のナンバー。メロハードな演奏とトリプルボーカルによる重厚なコーラスワークで最後まで飽きさせません。中盤の展開においてもYesやThe Beatlesなどから受け継ぐフックの効いたメロラインや、ファンタジックなシンセサイザーによる壮大な全体像が収録時間以上の満足感を生み出しています。最後はデジタルなシンセと切ないリードギターがフェードしていき終幕となります。