メロハードと呼ばれて〜プログレがこの先生き残るには

こんにちは、ギタリストの関口です。

暖冬の2019年度。2月も半ばをすぎてようやく朝の冬らしい寒さが堪えるようになりました。今年は花粉もちょっとだけ早いので目が痒くて起きるのが辛いですね。

その影響もあって最近は朝一でのブログ更新というルーティンを見直し昼の12〜14時か夕方18時の投稿にシフトしています。特にプログレアルバムの紹介というメインの記事については18時以降更新するように変えてみました。

そんなアルバム紹介ですが、昨日もMagic Pie「King for a Day」: サーモンと大作曲ならお任せあれ!北欧メロハードプログレ2015年の4th作品!という記事で書いた「メロハード」というジャンルについて今日はお話ししようかと思います。

プログレの衰退と商業ロック


70年代初期にイギリスで産声を上げたプログレッシブ・ロックが、70年代半ばから80年代にかけて渡米した際、そこで本来あるべき複雑でややこしい灰汁の部分は取り除かれ、明るいメロディやシンセサイザーなど煌びやかな箇所だけをフィーチャーしたアメリカン・プログレ・ハードへと姿を変えます。

アメリカン・プログレ・ハードと呼ばれたバンドで有名なのはKansas、Journey、Boston、Styx、Totoなどその名の通りアメリカのバンドが挙げられますが、その中でまともにプログレを継承してきたのはKansasくらいのもので、その多くは大衆への反応に根ざした音楽性でした(人間的にはBostonのTom Scholzなどプログレッシブな人もいましたが…)。


Kansas Original Album Classics

他にも80年代にはニューウェーブがブームに取り替えられたこともあってそちらへシフトしたGenesisやスーパーグループとして名高いAsiaなど、皮肉を込めそれらは「商業ロック」と呼ばれるようになります。そうして80年代にはプログレはすっかり身をひそめることとなります。

アメリカン・プログレ・ハードは死語


ジャンルはその後さらなるポップ化の一途を辿り、現在ではコマーシャルソングやニュース番組でお馴染みとなるような商業路線へ流れていきます。

そしてこの「アメリカン・プログレ・ハード」という言葉、どうやら今では死語らしく「今はなんて言われてるんですか?」と話の流れで人に訊いたところ「今はメロハードですかね」というお答えが返ってきました。

メロハードと聴くと、僕個人の中ではカナダのHarem Scaremのようなポップでメロディアスなハードロックが思い浮かび、そこにプログレが内在できないイメージがあったのですが、どうやら草分け的にジャンルが細分化していく一方で、昔でいうアメリカン・プログレ・ハードをこちらに合併したようなところがあるみたいです。

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80〜90年代、ネオプログレ、プログレメタルの勃興


話を戻すと、80年代には古くからのプログレが廃れる一方、イギリスで再びネオプログレッシブ・ロックが姿を現します。

「やっぱり70年代プログレはよかったよね」という定義の下、Marillion、IQ、It Bitesなどの新興バンドが続々誕生。古参なプログレファンに「これはポンプ・ロック(華やか、虚栄の意)だ」と出る杭は打たれる程度に揶揄もされながらも、1985年にはMarillionの3rdアルバム『Misplaced Childhood』がイギリスで1位を獲得した他ドイツやアメリカでもヒットし現在まで生き残る糧となっていきます。


過ち色の記憶(紙ジャケット仕様)

90年代に入るとDream Theaterが2ndアルバム『Images And Words』にてプログレッシブ・メタルというジャンルを確立。それまでもQueensrÿcheFates Warningといったプログレとメタルの融合バンドはいましたが後に超絶技巧の代名詞となるその演奏力万人に馴染みやすいメロディ、そしてYes、Genesis、Rushなど伝統的なスタイルの継承が受け入れられ、若い世代を中心にプログレッシブ・ロックのカルト的人気を再燃させます。


Dream Theater: Studio Albums 1992-2011

クロスオーヴァーを繰り返せば音楽は無限に進化できる


このように、プログレは全盛期に比べればセールスが数%まで落ち込むことはあっても決してゼロにはなりませんでした。

2000年をすぎるとネオプログレッシブ・ロックとプログレッシブ・メタルを今度は再び逆輸入、「王道のプログレを聴きたいけど古臭いのは嫌」という贅沢な悩みを解決する理想のジャンルを追求していきます。アメリカのSpock’s Beardなどがそれに当たります。

そうしてキャッチーな歌メロや日進月歩であるテクニックとも融合させたハイブリッド体として人気を博すのが、現代のプログレッシブ・ロックでありメロハードと呼ばれる存在だと考えられます。

最後に〜北欧とメロハード


そうして見ると40年前くらいで進化が止まっていると思われてたプログレもまだまだ伸び代があって面白いなぁなんて個人的に思ったりするのですが、現在それがもっとも息づく地域がイギリスでもアメリカでもまして日本でもなく北欧に向いているのだからより一興。

前にも少しお話ししましたが、例えばスウェーデンでは高い税率の分社会保障が充実しているのはよく知られていますよね。それは教育や医療だけでなく国を発展させるに等しい文化的な支援にも当てられています。

それはめぐりめぐれば絵や音楽といった芸術文化の発展にも繋がり、これが北欧でバンドが盛んな理由です。またこのような税収がきっちりした国と地域の特徴ゆえか音楽性も入念に作曲された形のものが多く、そこに今日のメロハードが居場所を確保できたのです。

現在、北欧で主なメロハードバンドはMoon Safari、A.C.T、Magic Pie、Hasse Fröberg & Musical Companion、Karmakanic、Brighteye Brisonなどなど。

彼らの音楽文化とジグザグに進化を続ける現代プログレッシブ・ロックの歩みは止まるところを知りません。


どうしてプログレを好きになってしまったんだろう

関口竜太

東京都出身。ギタリスト、音楽ライター。 ​14歳でギターを始め、高校卒業と同時にプロ・ギタリスト山口和也氏に師事。 ブログ「イメージは燃える朝焼け」、YouTube「せっちんミュージック」、プログレッシヴ・ロック・プロジェクト「Mind Over Matter」を展開中。2021年から『EURO-ROCK PRESS』にてライター業、書籍『PROG MUSIC Disc Guide』にも執筆にて参加。

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