Thematic「Skyrunner」: 今知っておけばドヤれる!?まだまだ無名のモダンプログレメタル、2020年の最新作がかっこよすぎた!
by 関口竜太 · 2020-02-17
おはようございます、ギタリストの関口です。
本日は2020年モダンプログレの最新作をご紹介していきます!
Skyrunner / Thematic
Thematic(テーマティック)はアメリカのプログレッシブ・ロック/メタルバンド。
壮大なテーマを体現するモダンプログレグループ
アメリカのインディアナ州で2011年に結成されたのがこちらのThematic。結成当初のメンバーはギターKevin Samuel、ベース&キーボードNate Buesching、ドラムJohn Walther、ボーカルMax Monzonの4人。
4人はシカゴとフォートウェインを拠点としながら2013年の夏にはフルアルバムの制作に着手します。 メジャーレーベルとの契約がないという課題はありましたが2014年にインディーレーベルから1stアルバム『The Endless Light』をリリース。
ダウンチューニングを活かしたエクストリームなギターサウンドとタイトなリズムセクション、ダイナミクスのある曲の構築とオルタナティブ的メロディセンスを武器に壮大なテーマを繰り広げています。
その後ボーカルはマックスからAdam Cesarzへ、ドラムはジョンからRyan Schmidtへと変更。本作『Skyrunner』はそんな彼らの2ndアルバム。2年の歳月を費やし練り込まれたとされる新作には前作以上の進化を遂げます。
アルバム参加メンバー
- Kevin Samuel – Guitar
- Nate Buesching – Bass, Keyboard, Vocal
- Ryan Schmidt – Drums
- Adam Cesarz – Vocal
楽曲紹介
- Incarnate
- Skyrunner
- The Open Arms of Grace
- Dirt and Chains
- The Last Boundary
- Silence in Thought
- Abyss
- Malice
- Carry The Fire
- Solitude
- Universe Bloom
- With Empty Hands
- Falling Star
- This Golden Day
本作のテーマはズバリ「ヒーロー」。アメリカでヒーローと言うとスパイダーマンとかキャプテンアメリカのような筋肉質で特殊能力を持つ一方。表社会で不当な扱いを受ける表裏のあるヒーロー像を思い浮かべますね。
ヒーローというのは往々にして弱者を助ける存在ですが、もっと具体的に言えば「弱者との約束を守る」という部分に行き着きます。約束を守るということは我々からしたらごく日常の小さい積み重ねのようですが、彼らからしたらそれは職業病とも言えるほど精神的に追求していくテーマとなります。
本作で語られるのはそんな「ヒーローと約束」に関する見えない苦悩。勝利と栄光の影に渦巻く戦いと悲劇、そして自らも犠牲しにしていく勇気こそがThematicが2020年に打ち出したテーマなのです。
#1「Incarnate」はこの壮大なストーリーのイントロと言うべき小曲。シタールや尺八など民族的な楽器と、タムやパーカッションによる荘厳な空気は戦いのウォードラムです。
近年のプログレフュージョンを思わす繊細なアルペジオから始まるリードナンバー#2「Skyrunner」。技術だけではなくインテリジェンスなフレーズにも独特のセンスを感じられます。
#3「The Open Arms of Grace」は超攻撃的なモダンメタルとして機能。Djentやメタルコアと言った近代的なメタルの形をThematicは得意としていて、その裏でなるシンセのシーケンスや、インターバルで聴ける変拍子リフなど従来のプログレメタルとして外せないファクターもしっかりこなしていく視野の広さが魅力的です。
この曲や#12「With Empty Hands」ではデスボイスも披露していて多めの曲がダレずマンネリを起こさないカンフル剤としても機能。一方でサビなどコーラスパートは非常にメロディアスで、ボーカルのアダムはDream TheaterのJames LaBrieやフランスのSpheric Universe Experienceを彷彿とさせます。
ダイナミックなベースと共にパワーでごり押してくる#4「Dirt and Chains」。HIMなどのオルタナゴシックさがありながらギタリストのケヴィンによるテクニカルなソロなど聴きごたえ十分。
ベース絡みではベーシストのネイトはキーボーディストも兼任しているのですが、彼の打ち出す鍵盤サウンドがバンドに限界を設けず広がりを与えています。感想でエスニックなプログレパートを持つ#5「The Last Boundary」やバラード曲#6「Silence in Thought」、#10「Solitude」。曲の冒頭でデジタルな雰囲気を作り出している#9「Carry The Fire」などアルバムの至る所でその存在感を得ることができます。
基本的にはコンパクトにまとまったプログレメタルですが、ラストナンバー#14「This Golden Day」では彼らにとって初めて10分を超える大作に仕上がっています。この曲では道中に登場した煌びやかなクリーンアルペジオやシンセサイザー、デスボイス、往年のプログレッシブバンドらしくテクニカルな展開の数々を一挙に引き受ける全乗せセットな一曲です。
メジャーシーンではないため知名度はまだまだ高くありませんが非常にハイクオリティのメタルバンドの誕生として今年は躍進に期待できます!
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関口竜太
東京都出身。ギタリスト、音楽ライター。 14歳でギターを始め、高校卒業と同時にプロ・ギタリスト山口和也氏に師事。 ブログ「イメージは燃える朝焼け」、YouTube「せっちんミュージック」、プログレッシヴ・ロック・プロジェクト「Mind Over Matter」を展開中。2021年から『EURO-ROCK PRESS』にてライター業、書籍『PROG MUSIC Disc Guide』にも執筆にて参加。
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